第50章:響け「神域の旋律」、パイプオルガンのオーバーホール
第49章でボイラー室の「不完全燃焼」を解決し、教皇の信頼(と畏怖)を勝ち取った盆ちゃん。約束通り、次は大聖堂の象徴である「パイプオルガン」の修理に取り掛かります。
物語の節目となる第50章を執筆します。(AI談
第50章:響け「神域の旋律」、パイプオルガンのオーバーホール
「……ひでえな。これじゃあ『神の歌声』どころか、風邪を引いた大型犬のいびきだぞ」
大聖堂の最上階、高さ20メートルを超える巨大なパイプオルガンの前で、盆山茂(盆ちゃん)は耳を塞ぎながら眉をひそめた。
教国の至宝とされるその楽器は、今や鍵盤を押すたびに「プキィーッ!」という間の抜けた音と、大量の埃を撒き散らしていた。
「盆山殿、これは我が国の始祖が神から賜った聖なる楽器……。近年は音が掠れ、選ばれし奏者でも『神の御心』を響かせられぬと嘆いておったのです」
教皇が悲しげに語るが、盆ちゃんはすでに作業用のヘッドライトを装着し、巨大なパイプの隙間に潜り込んでいた。
「教皇さん、始祖がどうとか言う前に、最後にこれ掃除したのいつだ? 送風機の革はボロボロ、リードは錆びだらけ。おまけに……おい、レルちゃん。この『神域の粘着シート』持ってきてくれ。奥の方に**『魔導ネズミ』**が巣を作ってやがる」
「了解です、親方! 『一度入ったら二度と次元から戻れない・強力ペッタン』用意しましたっ!」
レルちゃんが差し出したシートを奥に設置すると、チュウチュウという悲鳴と共に、空間を喰らう魔導害獣たちが一網打尽にされていく。
「よし、害獣駆除完了。次は配管(管体)の清掃だ。アルフレッド、高圧空気を準備しろ。一気に吹き飛ばすぞ。……野次馬(信者たち)には耳栓を配っておけ。かなりデカい音が出る」
「わかりました! 全員、防音イヤーマフ装着! 清掃開始の合図だ!」
アルフレッドが魔導コンプレッサーを起動する。盆ちゃんは巨大なパイプ一本一本に、レルちゃん特製の**『神域洗浄エアー・フローラル』**を流し込んでいった。
パァァァァァァーン!!
大聖堂内に、物理的な衝撃波を伴う清浄な風が吹き抜ける。数千年分の煤と埃、そして「信者の悩み」という名の精神的残留物が、虹色の霧となってステンドグラスから排出されていった。
「仕上げだ。レルちゃん、例の『神の調律』を」
「はいです! 茂さんの叩くハンマーに合わせて、私が音を固定しますね!」
盆ちゃんが小さな金槌を取り出し、巨大な金属パイプを「コン、コン」と小気味よいリズムで叩き始める。
それは単なる修理ではない。盆ちゃんの『概念模倣』とレルちゃんの『神の加護』が合わさり、劣化した金属が分子レベルで再構成され、**『概念上の正解の音』**へと作り替えられていく作業だった。
数時間の作業を終え、盆ちゃんは額の汗を拭いながら鍵盤の前に座った。
かつて建設現場の朝礼で流れていた「ラジオ体操の歌」を思い出しながら、指一本で鍵盤を叩く。
ドォォォォォォン……!
その瞬間、大聖堂の空気が震えた。
単なる楽器の音ではない。その響きは教国全土を優しく包み込み、街を行く人々の疲労を消し去り、病に伏せる者の心を癒やす「絶対的な調和」の旋律。
「……おお、おお……! これだ、これこそが古文書に記された『天上の共鳴』……! 盆山殿、あなたは、まさか音楽の神の化身……!?」
教皇たちが感動のあまり涙を流して崩れ落ちる中、盆ちゃんは不満げに鍵盤をパタパタと叩いた。
「……鍵盤の戻りがまだ少し渋いな。今度、シリコンスプレー吹いといてやるよ。あとな教皇さん。このオルガン、実は地下のボイラー室と熱源で連動してただろ? 排気効率を上げたおかげで、低音の鳴りが良くなったんだ。セットでメンテナンスしといて正解だったな」
「は、配管の連動……? 神の摂理ではなく、設備の相乗効果だったのですか……?」
「当たり前だ。全部繋がってるんだよ、『現場』ってのはな」
盆ちゃんは道具箱を閉じると、いつものように現場の進捗管理表に大きく「完」と書き込んだ。
「さて。これで聖都の『三大不具合』はだいたい片付いたな。……レルちゃん、次はどこの現場だ?」
「親方! 聖都の入り口にある『開かずの城門』……実は巨大な魔導扉のヒンジが錆びついてて、千年間半開きだっていうクレームが来てます!」
「……門の油差し(グリスアップ)か。よし、行くぞ。安全帯よし、グリスガンよし! 出発だ!」
「「「ご安全に!!」」」
盆山工務店の咆哮が、清浄になった大聖堂に力強く響き渡った。




