第44章:貧民街の「黒い霧」と、神域スーパー銭湯の潤い
第44章:貧民街の「黒い霧」と、神域スーパー銭湯の潤い
「……おい、使者さん。この街の『下風』が酷すぎるぞ。芳香剤(レルちゃんの消臭ミスト)で誤魔化せるレベルじゃない。これは完全に『排水計画の破綻』だ」
西の大陸・聖ルミナス教国の王都。
新設された「盆山ハイウェイ」の終点、かつて「聖域への入り口」と呼ばれた城門付近で、盆山茂(盆ちゃん)はタオルで鼻を覆いながら顔をしかめていた。
隣に立つ特使カイルは、申し訳なさそうに視線を逸らす。
「盆山殿……ここは古くからの居住区、いわゆる貧民街です。住民たちが病に伏せるのは『魂の浄化が足りないせいだ』と教会の司祭様は仰っておりますが……」
「魂の前に、ドブの掃除が先だ!」
盆ちゃんは足元の石畳をバールでこじ開けた。そこから溢れ出したのは、数百年分堆積した泥と、正体不明の「黒い瘴気」だった。
「いいか、これは『神秘の呪い』なんかじゃない。ただの『配管の詰まり』と『トラップの封水切れ』だ。こんな環境で生活させるのは、現場の安全衛生管理基準に著しく抵触しているぞ!」
「あわわ、茂さん! ここの地下、配管が迷路みたいに絡まってて、まるで『スパゲッティ術式』の物理版ですよぉ!」
ピンクのヘルメットを被ったレルちゃんが、神格の透視能力で地下を覗き込み、目を回している。
「よし、全域の『一斉清掃』と『インフラ再編』を敢行する。レルちゃん、異世界商店から『神域仕様・高圧洗浄トラック』と『超硬質塩ビ配管一式』を発注だ!」
「了解です! ついでに『除菌・消臭・全自動浄化機能付き』の特注品にしておきましたぁ!」
盆ちゃんの号令と共に、現場が動き出す。
神獣ポチがその鋭い爪で「配管用の溝」を神速で掘り進め、古代竜のタマが「配管の継ぎ目」を鼻息で熱溶着していく。
スラムの住人たちは、自分たちの家の下から噴き出す清浄な水と、一瞬で消え去る悪臭に腰を抜かした。
しかし、盆ちゃんの「改善」はそれだけでは終わらなかった。
「……インフラを整えただけじゃ足りん。汚れた身体をリセットする場所が必要だ。レルちゃん、あそこの空き地に『福利厚生施設』を建てるぞ」
数日後。
かつて「死の街」と呼ばれた場所に、不釣り合いなほどピカピカの木造建築が現れた。
入り口には大きな紺色の暖簾。そこには力強い筆文字で**『盆山工務店直営・神域の湯』**と書かれていた。
「茂さん、これは……?」
カイルが恐る恐る足を踏み入れると、そこには西の大陸の人間が一度も見たことのない、蒸気と木の香りが満ちる「極楽」が広がっていた。
「ただの銭湯だ。いいか、現場の基本は『整理、整頓、清掃、清潔』。身体を洗うことは、自分という現場をメンテナンスすることと同じだ」
中では、レルちゃんがこっそり加護を盛った「美肌と万病治癒の湯」が溢れ、ジャグジー(ポチの遠吠えによる超音波振動)や、サウナ(タマの熱源による遠赤外線効果)が完備されている。
スラムの住人たちは最初、恐る恐る入浴していたが、一度その「快感」を知るや否や、表情から影が消えていった。
「……おい、俺の長年の関節痛が消えたぞ?」
「この『コーヒー牛乳』とかいう聖水はなんだ! 魂が震える美味さだ!」
風呂上がりの腰に手を当て、瓶入りの牛乳を飲み干す住人たち。そこにはもはや、絶望に沈む貧民の姿はなかった。
「ふふん、茂さん! 『清潔』になった人たちから、すっごく綺麗な信仰心(感謝のエネルギー)が集まってますよぉ!」
「信仰なんて知らん。ただ、これでこの街の『不安全状態』は一つ解消されたな」
盆ちゃんは満足げに、クリップボードの「公衆衛生改善」の項目にチェックを入れた。
だが、その様子を遠くから忌々しげに睨む影があった。
「……我らが『救済』という名の支配を、あのような『入浴』という俗な儀式で上書きするとは。あの現場監督、教会の敵として排除せねばなるまい」
西の大陸の影に潜む「保守派司祭」たちが動き出そうとしていたが、盆ちゃんはそんなことよりも、脱衣所に「扇風機」が足りないことの方が重大な問題だと考えていた。
第45章:予告
「神域スーパー銭湯」の快適さに屈した聖ルミナス教国。
しかし、その人気を「悪魔の誘惑」と断じる教会本部から、最強の「聖騎士団(不安全行動の塊)」が現場に乗り込んでくる!
「おい、そこの銀ピカ共。鎧の角が鋭利すぎて危険だ。あと、そのマントは回転体に巻き込まれるぞ! 全員脱げ、安全帯を付けるんだ!」
盆ちゃんの「安全指導(説教)」が、大陸最強の騎士たちを全裸の「現場作業員」へと変貌させる――。
(AI談




