第43章:西の大陸縦断ハイウェイと、街道の「交通整理」
第43章:西の大陸縦断ハイウェイと、街道の「交通整理」
「……おい、使者さんよ。この『メインストリート』とやらは、いつから『泥の溜池』に名称変更したんだ?」
王宮での工事を終えた盆山茂は、教国の主要都市を結ぶ「聖なる街道」の入り口で、長靴を泥に埋めながら深く溜息をついた。
隣に立つ特使カイルは、申し訳なさそうに肩をすくめる。
「盆山殿、これでも我が国で最も整備された道なのです。雨が降れば馬車が立ち往生するのは、神が与えた試練だと……」
「試練なわけあるか。ただの排水計画のミスだ。路盤が軟弱すぎるし、傾斜の付け方もデタラメだ。これじゃあ物資が届く前に鮮度が落ちるし、馬の足も壊れるぞ」
盆山は懐から一束の『工程表』を取り出した。そこには既に、西の大陸を縦断する片側三車線の高規格道路――通称『盆山ハイウェイ・西の大陸線』の図面が引かれていた。
「よし、やるぞ。レルちゃん、測量開始だ。ポチは先行して障害物の撤去。タマは路盤の加熱・乾燥を担当しろ」
「了解ですぅ! 『神域のレーザー墨出し機』、照射しまーす!」
レルちゃんがパチンと指を鳴らすと、空から数本の虹色のレーザーが降り注ぎ、地平線の彼方まで真っ直ぐな「中心線」を描き出した。
その光は山を貫き、森を割り、最短距離のルートを冷酷なまでに提示する。
「グオォォォン!」
「ギャウ!」
巨大なポチがダンプカー顔負けの速度で走り抜け、航路上の巨石や倒木を「産廃」として次々と路外へ放り投げていく。続いてタマが低空飛行しながら、湿った地面に超高温のブレスを吹き付け、一瞬でカチカチの乾燥路盤を作り上げていった。
「さあ、仕上げだ。レルちゃん、特製の『神域アスファルト(排水性・防音仕様)』を敷くぞ」
「はーい! 『神様の滑らかロード・ミックス』、投入です!」
レルちゃんが空間から呼び出したのは、もはや魔法の絨毯ならぬ「魔法のアスファルトフィニッシャー(神格重機)」。
盆山がそのレバーを握り、ゆっくりと進み始めると、泥にまみれていた街道は、見る間に黒光りする完璧な舗装路へと塗り替えられていった。
作業が進む中、街道を「縄張り」にしていた盗賊団やモンスターたちが、騒ぎを聞きつけて現れた。
「おいおい、俺たちのシマで勝手に何を作りやがる……」
「なんだあの巨大な犬は! ひ、ひいっ!」
凄む盗賊たちに対し、盆山は作業の手を止めず、首から下げたホイッスルを激しく吹き鳴らした。
「こら! 作業半径内に入るな! 立ち入り禁止の看板が見えんのか! ヘルメットも被らずに現場をうろつくのは『不安全行動』だ!」
盆山の怒鳴り声と共に、背後のポチがガルルと喉を鳴らす。
その威圧感に、伝説の魔物すら震え上がる。
「命が惜しければ、そこにある『交通整理の旗』を持て! 現場の安全を確保するなら、特別にバイト代を出してやる!」
数時間後。
かつて恐れられた盗賊団やオーガたちは、ピンクの反射ベストを着用し、「右よし! 左よし!」と真剣な顔で旗を振る『優秀な交通誘導員』へと再教育されていた。
夕暮れ時。
教国の主要都市を結ぶ、一直線の「黒い大河」が完成した。
路面には神域の魔導塗料で整然と白線が引かれ、等間隔でレルちゃんお手製の「ソーラー式街灯」が優しく光り始める。
「な、なんということだ……。歩くだけで足が弾むようだ。これなら王宮から国境まで、一晩で物資が届く……!」
カイルたちは、その異次元の「物流速度」を前に、文明のパラダイムシフトを感じていた。
「まだ終わりじゃないぞ。街道の要所には『サービスエリア』を設置する。トイレと自販機がなきゃ、長距離輸送は務まらんからな」
盆山は腰のハンマーを叩き、満足げに新しい道路を見つめた。
西の大陸は今、物理的な「道」によって、初めて一つに繋がろうとしていた。
【閑話:交通誘導員(元・盗賊)の独り言】
「……なあ。俺たち、昨日まで『血の爪の牙団』とか名乗って、馬車を襲ってたよな?」
「ああ。でもよ……あの監督(盆ちゃん)から貰ったメンチカツ、めちゃくちゃ美味かっただろ? それにこの旗振りの仕事、村の人に『ありがとう』って言われるんだぜ。悪事働いて追われるより、ずっと健康的だわ」
彼らの手には、盆山から渡された『安全第一・交通安全マニュアル』。
西の大大陸の治安は、騎士団の掃討作戦ではなく、盆ちゃんの「適切な雇用創出」と「現場管理」によって劇的に改善されることになるのであった。
インフラ整備の三本柱(エネルギー・拠点・物流)のうち、最後の「物流」に焦点を当てました。盆ちゃんが敵(盗賊)を倒すのではなく「現場作業員(誘導員)として雇用する」という流れは、彼のキャラクター性をより深めています。(AI談




