第17章:重圧の漬物石と、王座を捨てた土下座 【朝の朝礼:腰痛改善の極意】
帝国の精鋭を「インターホン」一つで追い払った後の、平和(?)な日常と勘違いの加速を描きます。
第17章:重圧の漬物石と、王座を捨てた土下座
【朝の朝礼:腰痛改善の極意】
「いいかお前ら、腰が浮いてるぞ! 重いもんを持つ時は、膝をしっかり使えって言っただろ!」
聖域ドーム「オキナワ・エデン」の裏庭に、盆ちゃんの怒号が響く。
そこには、額に血管を浮かせ、全身から湯気のような魔力を放ちながら、巨大な「石」を抱え上げようとするアルフレッドたちの姿があった。
彼らが抱えているのは、昨日帝国が捨てていった**『国宝級・聖魔石』。
本来なら、一国の結界を数百年維持できるほどの膨大な魔力源だが、今は盆ちゃんによって「持ち手用の荒縄」を巻き付けられただけの「トレーニング用ダンベル」**に成り下がっている。
「し、師匠……これ、ただの石じゃありません……。近づくだけで魔力回路が焼き切れそうな、高密度の重力圧が……!」
「何を甘えたことを。それはただの『重い石』だ。ほら、エレノアも! 魔導テスター(魔法の杖)を杖代わりにするな。体幹で支えろ!」
アルフレッド(第一王子)は、この石を持ち上げるたびに、自分のレベルが「人」の限界を超えていくのを感じていた。盆ちゃんの「正しい腰の使い方(神域の身体操作)」を意識するだけで、魔石から漏れ出る神罰級の圧力が、筋肉と魔力核を強制的に再構築していく。
彼らにとって、これは修行などという生易しいものではない。**「神による強制進化」**であった。
【国王降臨:震える謁見】
その時、オキナワ・エデンの外壁門(防犯カメラ付きインターホン完備)の前に、一台の豪華な馬車が止まった。
降りてきたのは、この国の頂点に立つ男――国王・エドワード。
「帝国軍の精鋭を『一音』で退け、死神と称される暗殺者を『火花』一つで廃人にしたという……。我が息子アルフレッドも囚われている(と勘違いしている)というが、一体どんな魔王が住んでいるのだ……」
国王は、昨日カトリーヌたちが逃げ帰る際に見た「あの瞳」と対峙し、恐怖で胃を抑えた。
「……あ、あの……王国を治めるエドワードと申します。我が息子の不始末をお詫びに、そして……どうか、国を滅ぼさないでいただきたく、参上いたしました!」
国王は、震える手でインターホンのボタンを押した。
【勘違いの交差点:町内会長と現場監督】
「ピンポーン♪」
モニターを確認した盆ちゃんは、首を傾げた。
「ん? 今度はなんだ。えらく立派なヒゲのおじさんだな。……あぁ、アルフレッドの親父さんか。アルバイトの面接の時に連絡先を聞いてたっけな。さては、『息子が現場で怪我してないか』心配で見にきたんだな」
盆ちゃんは、ポチ(フェンリル)を引き連れて、門まで出迎えた。
門が開いた瞬間、国王が見たのは、巨大な神獣を従え、神のオーラを纏った(と見える)作業着姿の男だった。
「ひっ、ひいいいっ! 神よ、どうかご慈悲を!」
国王は、王冠が地面に転がるのも構わず、全力で土下座を敢行した。いわゆる「ジャンピング土下座」である。
「おっと、危ない! お父さん、そんなに頭を下げなくていいですよ。アルフレッド君なら、今裏で頑張って『重いもん』を運んでますから。教育、しっかりやってますんで!」
盆ちゃんは、国王の肩をガシッと掴んで強引に引き起こした。
国王は、その掌から伝わる圧倒的な力(ただの職人の握力だが、国王には世界を握りつぶす力に見えた)に失禁寸前となる。
「あ、アルフレッドを……『教育』……!? 奴は、生きていたのか……!」
「生きてるどころか、最近はメキメキと筋肉(魔力)がついてきてますよ。さあ、せっかくだから上がってください。ちょうど『いい石』が見つかって、美味い漬物が浸かったところなんです」
【至高の接待:神のぬか漬け】
盆ちゃんに連れられ、盆山庵のテラスに座らされた国王。
目の前には、あの「聖魔石」を重しにして漬けられた、神域産のきゅうりとナスのぬか漬けが出された。
「さ、どうぞ。現場の休憩にはこれが一番ですよ」
「こ、これは……!? 一口食べただけで、長年の持病の腰痛が消え、失われたはずの魔力が全回復していく……。これ、野菜じゃない。**『超高濃度霊薬の結晶』**だ!」
国王は涙を流しながら、きゅうりを貪った。
その後ろでは、アルフレッドが聖魔石を抱えて「ふんぬっ!」と声を上げている。
「父上……見ていてください! 盆山師匠の指導があれば、私は……私はこの国を、物理的に守れる男になってみせます!」
「息子よ……お前、いつの間に『賢者』の階梯を超えたのだ……」
国王は確信した。
この男、盆ちゃんを怒らせてはいけない。同時に、彼を「現場監督」として王国に留めておけるなら、この国は大陸最強の聖域になるのだと。
「盆山殿……いや、聖下。どうか……どうか今後とも、我が息子とこの国を、よろしくお願いいたします!!」
「ははは、お父さん大げさだな。まあ、安全第一でしっかり働いてもらいますから、安心してください!」
こうして、国王公認の「ブラック(神)な現場修行」は、さらに加速していくのであった。




