第15章:神域の拒絶と不可視の雷鳴
第15章:神域の拒絶と不可視の雷鳴
【潜入:沈黙を破る地響き】
帝国軍の誇る隠密部隊『影の衣』は、ついに神域への侵入を果たした。
「魔力反応なし。物理トラップも感知できない。……拍子抜けだな」
隊長が冷笑し、一歩踏み出したその時だった。
「ジャリィイッ! ガリガリリリッ!!」
静寂を切り裂く、耳を刺すような高音が鳴り響いた。
「なっ、なんだこの『地響きの咆哮』は!?」
ただの砂利ではない。踏むたびに特定の周波数を増幅させ、侵入者の精神を直接揺さぶる特殊音響兵器――彼らにはそう見えた。
焦る彼らを、さらに「それ」が襲う。
突如、頭上から太陽のごとき純白の閃光が降り注いだ。
「ギ、ギャアアッ! 聖光魔法だと!?」
人感センサーライト(広角LED仕様)。
熱源を感知し、闇に潜む「不浄(隠密魔法)」を焼き払うその光は、彼らにとって死の宣告に等しかった。
「撤退! 撤退だ! ここは神の目が休むことなく監視している!」
【強襲:深淵の暗殺者】
翌夜。帝国は最後の手段として、単独での暗殺を得意とする『死神の鎌』を送り込んだ。
彼は防犯砂利を魔力浮遊で回避し、センサーライトの感知範囲を死角から抜け、ついに盆ちゃんの寝室へと辿り着く。
(……ターゲット、確認。無防備に眠っているな、盆ちゃん)
暗殺者が毒塗りの短剣を振り下ろそうとした、その瞬間。
「……んぅ、蚊がうるさいなぁ……」
盆ちゃんが寝ぼけ眼で、枕元にあった**『電撃殺虫ラケット』**を無造作に振り回した。
「――バチィィィィィン!!!」
青白い火花が暗殺者の眉間を直撃する。
「ガ、ハッ……!? ぐ、あああああああ!!!」
全身を駆け巡る高電圧。それは魔法障壁を容易く貫通し、神経系を直接焼き切る絶大なる衝撃。暗殺者は断末魔の叫びを上げる余裕すらなく、床に崩れ落ちた。
【分析:絶望の報告書】
数日後。帝国軍魔導研究所。
回収された暗殺者の死装束と、偵察隊の記録を前に、大魔導師たちは震えていた。
「信じがたい。現場には魔法陣の痕跡が一切なかった……」
「つまり、あの男は『無詠唱』、あるいは『思考』のみで、極大雷系魔法を放ったということか?」
「暗殺者の額に残された焦げ跡を見ろ。これほどの高密度な雷力を、ピンポイントで収束させる制御能力……。しかも、男はそれを『寝ながら』行ったという」
所長が重々しく口を開いた。
「結論は一つだ。盆ちゃんという男は、常に我々の数手先を読んでいる。あの不自然な音が出る砂利も、あの眩すぎる光も、すべては我々の慢心を誘うための罠。そして最後には、呼吸をするように雷を下す……。彼は、人ではない。歩く神罰そのものだ」
帝国軍に、かつてない戦慄が走った。




