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子供のままの婚約者が子供を作ったようです  作者: 夏見颯一


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18.【利用する取引、利用される取引】

 次に何をするにしても、まずは父でしょうか。

 思考を巡らせながら私が朝食の席に着くと、私も見た事のない程に上機嫌な父がおりました。


「昨日の夜会はどうだった? 私はとても楽しいお話を聞いたよ」

「お父様も? 私もかなり面白いお話を聞かせて頂きましたわ」


 母は朝方は調子が優れない事が多く、朝食の席に着かない事も多いので、私と父で朝食を食べ始めます。


「それで? お父様は何と引き換えになさったの?」

「あいつが私に言ってきたのは自分への恒常的な支持だな。引き換えは弟の行方の手がかりだったよ。はっ。折角きちんとした答えを待ってやったのに、私に自身の弟を探せというのが片腹痛い」


 エリックの事があり、私と父が不仲だと思っている方はかなりおられます。

 その方が都合が良い事もありそのままにしているのですが、少し調べれば噂程は父が私を冷遇している訳でもなく、エリックさえいなければ貴族としては普通の部類の父親でしょう。


 私に父へ止めてくれるように頼んだバルドルは、父にも私と類似の取引を持ちかけていた時点で私と父が話し合わない、不仲だと思い込んでいる事が分かります。


 その上で私が父に頼み事をした場合、父がどう出るか見極めたかったのでしょうね。

 自分の駒にする者の動きを確認したかった思惑など、真実、駒に出来る前にやっては裏目に出るものです。


「あいつとは次に挨拶出来るだろうかな? 昨日の内にメイヴェナ公爵家に手紙を書いたのだろう?」

「返事は来ておりませんので、どう出るかは分かりません」

「そんな事はなかろう。死亡こそなかったとしても、病気や怪我で出てこれなくなるかもな」


 あまりにはっきり言ってしまう父に私は鼻白みました。

 以前から父はバルドルを嫌っていても、警戒して口にはしませんでした。


「お父様、聞かれても宜しいのですか?」

「王太子でありながら王家の影さえ掌握出来なかった王子など、国王も見切りをつけている」


 それはなかなかに致命的な事ではないでしょうか。

 我が国はそれなりに大きな国ですので、残念ながらどうしても細部には目が行き届かず不正が横行しやすい面があります。

 そして、現国王が蒔いた貴族からの王家への不信。


「ならば……」

「適任に変えれば良いだけだ。間抜けな王子も、行方の掴めない王子も王家にはいらない」


 前に父が私にあの方の話をした時は単なる感情論でした。

 ですが、今回は違います。


「お前は好きにしなさい。ただし、ディアーモ公爵家としては動く事がないのは決定している。その上で、自分が誰と添いたいのか考えなさい。フリードには相談しても良いだろう」


 私に常にのしかかっているのは次期公爵という軛。

 ただ、今回は私の希望は父も考慮してくれるつもりがあるようで、少しだけ気が楽です。


「……エリックの時には私の自由はなかったのに」

「死ぬと決まっていた子供だからと甘やかした事には私だって後悔している」


 その呟き以降は父は沈黙を続けました。


 結局、父は私にどの程度情報が集まっているか知っているので、これ以上は自分で考えろと言う事です。

 エリックの事に関しては考えたくないので、父からすれば出るような結論も私には出て来ないのですけどね!

 娘に対しての父の発想の貧困さは、高位貴族の多くが支配者である為に、人間の心の機微に疎いのが原因でしょう。

 分かっていても腹が立ちます。




 当面ディアーモ公爵家の手の者が動かしづらい事は理解しました。

 差し当たって、私はニナリアの証言と託してくれた日記を参考に、ホーウェン子爵家がどのような過程で騙されたのかまとめてみました。


「……酷いものね」


 隙があるだけで簡単に搾取される側に回ると分かっていても、ホーウェン子爵の話は気分の悪いものでした。


 あくまで全てがニナリアの視点ですが、最初は家庭教師から逃げ続けていた妹が何処かで知り合った子息達と仲良くなり、何度も連れ出されるようになったそうです。

 両親はもしかすると縁談に繋がるのではないかと期待して放置した結果、徐々に子息達は妹にあらぬ事をさせるようになっていき、気が付いた時には男を誘う女として色々な場所に連れ出されていた、とあります。


 その時点でも色々私としてはホーウェン子爵夫妻に思う事がありますが、妹が妊娠したと気が付いた後の話が問題です。

 親切な顔をして近付いてくる大勢の貴族とその子弟から、「君の娘が王族の子を宿したんだ」、「王家の外戚になったのだろう」、「君の家が王家と繋がりを持ったなら我が家が援助しよう」、「王族の子供を持ったなら相応しい形にしないと」……等々。

 何度も持ち上げられたり助言される間に、ホーウェン子爵達が道を逸れていったのでしょう。


 私はいつ誰が何を言ったのか、書き記した紙をしっかり確認した後、この後どうするか考えました。


 憎らしい事に出てくる貴族やその令息の名前は実在するものでした。

 ただし、一部の名前、私も存じ上げる方々がこのような発言はなさいません。

 単に勝手に使われたとしても、これが表沙汰になればかなりの問題です。


 故に、証人になるホーウェン子爵家は徹底的に潰された。


 ニナリアを保護した後でホーウェン子爵令嬢を探す者がいたと私は報告を受けております。

 その者は明らかに素人で、親戚とは疎遠で交友関係も極端に狭いホーウェン子爵の関係者ではない事も。


 さて、向こうには知恵者がいるようですけど。

 こちらには、私の手足となる者はいません。


 しばらく逡巡した後、私は立ち上がりました。


「リーノ伯爵家に向かいます」


 父にフリードは当主になったばかりで仕事が回せないとの名目で、リーノ伯爵家の大半の仕事を取られた今は暇をしているでしょう。

 最初から仕事の事がフェイクだったなんて、本当に父は質が悪い事。

 乗っ取りの準備が着々と進んでいるようです。


 それでも、父はわざわざ相談者としてフリードの名前を出しました。

 使えるものは使います。


 ただ、分かっておりましたが、向こうもただでは動きません。


「その代わり、私と取引をしようか」




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