第2章:始まり
死は虚無ではなかった。それは砕けた鏡だった。
カズヒコ・シンジは破壊された自宅の血まみれの床板の上に横たわり、本来なら二つに分かれているはずの体に、綻びた糸で意識がかろうじてしがみついていた。背骨を、臓器を、希望を断ち切った剣の通過の幻の苦痛、冷たく不可能な鋭さが、論理が断ち切られたと主張する神経経路に沿って今もなお叫んでいた。それでも、彼の肺は引きつり、叔母と妹の血の銅のような臭い、埃と暴力のオゾン臭が混ざった濃密な空気を吸い込んだ。彼の視界は泳ぎ、悪夢の輪郭をぼやけさせた。ひっくり返った家具、砕けた家族写真、畳の上にわいせつな花のように広がる暗く濡れた染み。
そして彼を見下ろして聳え立つ、この破滅の設計者。コクト。
剣怒の覇王はただ背が高いだけではなかった。彼は影と暴力から彫り出された不動の記念碑だった。短く鮮烈な白髪は、漂白された骨のよう。薄い黒いジャケットが、抑制された致死的な力を放つ体格にまとわりついていた。しかしシンジの薄れゆく焦点を引っ掛けたのはスカーフだった。動脈の紅の閃光が、虐殺に対して不気味なほど清潔で、まるで物理法則に逆らうかのように、あるいは単に目撃した残虐行為に触れられていないかのように、完全に静止して垂れ下がっていた。
籠手をはめた彼の手は、命を終わらせ、そして不可能にもシンジの命を終わらせなかった剣の柄に軽く置かれていた。武器そのものは厳しい機能性の研究であり、装飾がなく、わずかに湾曲し、その刃は破壊された壁から漏れる分断された光の下で今もなお濡れて輝いていた。
「これで終わりか」とシンジは思った、言葉は彼の心の中でタールのように濃く鈍重だった。家...母さんの墓にはついさっき行ったばかり...キヨミ...叔母さん...消えた。全て消えた。この...化け物のせいで。畜生...畜生め... 彼は闇を、解放を待った。それは頑なに彼を拒んだ。
代わりに、恐るべき不協和音が根を下ろした。彼は死の氷のような近接、破局的に侵害された体の深遠な間違いを感じた。それでも、恐るべき生命力が破滅の下で脈打っていた。彼の核から放射される痛みは、両断のきれいな衝撃ではなかった。それは深い細胞レベルの解体、消滅に対する狂乱した異質な反逆だった。それは...飢えているように感じられた。なぜ? その問いが衝撃の霞を貫いた。刃を見た...それが切るのを感じた...骨を、全てを!なぜ俺は...無傷なんだ?
絶望的で苦痛に満ちた混乱の急増に駆られ、シンジは力の残滓を集めた。顎に血を飛び散らせる喉の奥からの喘ぎと共に、彼は瞼を無理やり開けた。ぼやけた視界が泳ぎ、記念碑的な努力で下方へ、破れたシャツの向こうへ、不可能な痛みの震源地へと焦点を合わせた。
破れた布地。血、おびただしい血が、木に染み込んでいた。露出した筋肉、深く恐ろしい裂傷から覗く青白い骨が真紅を流していた。死の一歩手前の内臓のタペストリー。しかし...繋がっている。彼の胴体は、傷だらけではあったが、頑固に、恐ろしいことに一つの塊のままだった。彼は蹲り、内臓を引き裂かれ、死にかけていた...しかし分断されてはいなかった。
「な...なぜ...?」その言葉は濡れた、ぼろぼろのささやきとして逃れ、彼の家が屠殺場になった鳴り響く沈黙の上ではほとんど聞こえなかった。血が唇に泡立った。「切られて...ない...?」
コクトは一つも動かなかった。彼の視線は、シンジの顔ではなく、恐ろしく傷ついているが無傷の肉体に固定されているようだった。低く共鳴する唸りが覇王の胸当てから振動し、聞くというより感じる音で、地殻プレートの研磨のようだった。それはシンジの砕けた骨に、彼の傷の生の肉に共鳴した。そして、砂利のような声が、勝利を欠き、冷ややかな一種の臨床的観察を帯びて響いた:「そうか」コクトは呟き、その言葉が血の香りの漂う空気に重く垂れ下がった、「既に覚醒したか。アマドの予測より早い。」
覚醒?アマド? その名前は何も意味しなかったが、全てを意味した。それらは悪夢への鍵だった。シンジが含意を掴めるより前に、もう一度苦痛に満ちた息を引くことさえできる前に、世界が終わった。
最初は音ではなく、圧力だった。目に見えない拳がシンジを粘つく床板に叩きつけ、破壊された肺から空気を無音の悲鳴で追い出した。家そのものが身をすくめたようで、材木が抗議して軋んだ。それから音が来た。骨髄で感じられるほどの耳を聾する、超低周波のドンという音で、聞くというより感じられ、即座に内破する物質の黙示録的なドガーンという音が続いた。
コクトは避けなかった。動かなかった。彼は単にその位置に存在することをやめた。一瞬、厳しい記念碑がシンジを見下ろしていた。次の瞬間、彼は純粋な運動的消滅の発射体に変貌していた。抗えない力が彼に正面から衝突し、カズヒコ家の残りの壁を通して彼を後方へ吹き飛ばした。しかしそこで止まらなかった。木材、石膏、レンガ――それは彼の前で蒸発した。その力は純粋な破壊のトンネル、完璧な円筒形の空隙を彫り、隣の家を貫通し、その次を、その次を、東京の通りを一直線に延びて、遠方へと消えた。ガラスがブロック単位で同期した波のように外側に爆発した。家具、コンクリート、壁の全セクションが飛ぶ破片へと崩壊した。衝撃波がシンジを物理的な打撃のように叩き、彼を血まみれの中へ深く押し込み、彼の鼓膜を破裂させて他の全てを溺れさせる高音の耳鳴りにした。
沈黙。鳴り響く、埃っぽい沈黙が、シンジの家の前面があった場所、そして近隣の半分に突然開いた大きな口を満たした。
この破壊への新しい入口に額縁のように立ち、月光の中で踊る渦巻く塵の粒子の真ん中に、その源がいた。
彼は背が高かった、コクトのように、しかし根本的に異なっていた。覇王が影と鋭い角であったところ、この存在は深遠で不穏な静寂のオーラを放射していた。短く鮮烈な白髪は、ほとんど発光し、青白い光を捉えた。彼の肌は不可能な、深い群青色で、氷河の心臓か異星の海の上の黄昏の空のようで、滑らかで、冷たく、完全に人間離れしていた。彼は光を飲み込み柔らかく放射し返すように見える、シームレスな真珠光沢の素材のぴったりとしたスーツを着ており、真珠層のように色相を変化させていた。それは装甲のように嵩張っていなかった。それは固化した星雲から織られた第二の皮膚だった。彼の顔は角張り、年齢不詳で、皺はないが絶対零度の色をした目に計り知れない時間の深みを保持していた、淡く氷河のような青で、現在はコクトが不本意に彫った破壊の道に冷たい強度で固定されていた。彼は完全に動かずに立っていたが、彼の周りの空気は塵を震わせる抑制された力で振動していた。
「なるほど」青い肌の存在が語った。彼の声は大きくなかったが、シンジの耳の耳鳴りを切り裂く明瞭さで共鳴し、古代と恐ろしいほど現在の両方の音色だった。それは怒りを保持せず、ただ冷ややかな評価だけだった。「サガンボは本当に俺を覇王の刃に値する脅威と見なしているのか。そして単なる...獲物のために。」彼の氷河のような視線が、ほとんど知覚できないほどわずかに、床のシンジの壊れた姿へと向けられた。
サガンボ。その名前は宇宙の玉座の間の断片化した記憶から響いた、この覚醒した地獄の一生前に。獲物?俺が?
破壊トンネルの終わりの遠い闇から、深紅の光の点が燃え上がった。それは火ではなかった。それは抑制されたエネルギーで、怒りと反抗的だった。それは急速に成長し、追い出された道に沿って突進して戻ってきた。コクトは外の割れた通りに地を揺るがすドスンという音で着地し、装甲のブーツの下のアスファルトにクレーターを作った。塵が彼の周りに立ち上った。彼の黒いジャケットは肩で破れ、彼の清潔な赤いスカーフは今や汚れで汚れ、乱れた空気でたなびいていた。髪の毛のような亀裂が彼の胸当ての暗い材料を損なっていた。彼は新参者を睨みつけ、金属が軋むまで剣の柄への握りを強めた。その刃の血はより暗く、より不吉に見えた。
「やっと俺たちに貴様の存在を賜るのに十分な時間がかかったな」コクトは唸り、彼の声は破壊を容易に横切って運ばれる低い轟音だった。砂利のような音色は恐怖を保持せず、戦士の集中した怒りだけだった。「創造の神、らしいな。メルス様。」
メルスは怯まず、姿勢を変えなかった。彼の氷のような目は覇王に固定されたままだった。「そして貴様は」メルスは述べ、彼の声は抑揚を欠いているが口に出さない非難で重かった、「ついに超越者に対して動いたか。性急か、それとも単に厳しい効率で命令に従っているだけか?」
超越者? シンジの心は揺らぎ、その言葉が彼の理解があった場所の空洞な空間に響いた。それは...俺?それは一体どういう意味だ? 彼の腹の痛みが燃え上がり、彼の上で展開する宇宙的不条理への吐き気を催す対位法だった。
コクトは石が石を擦るように掻く、厳しく、ユーモアのない笑いの吠え声を放った。「アマドの時間測定予測はナノ秒まで正確だった、メルス。奴の力の再生の第一幕は、この地球の時間的窓の中で覚醒する予定だった。」彼は血まみれの剣でシンジに向かって無造作に身振りをし、その有用性を超えて取るに足りないと見なされた命の冷ややかなほど何気ない指示だった。「俺は単に...観察した。パラメータが顕現することを確実にした。雌どもの殺害は...ストレス反応を引き起こすために必要だった。」彼の声はその時何かのきらめきを保持した。嫌悪感?義務の層の下に埋もれた後悔?「奴らの死は覚醒に貢献した。」
再生?アマド?第一幕? シンジの思考は彼の腹の灼熱の痛みと血管を氾濫させる氷のような恐怖への狂乱した、支離滅裂な対位法だった。俺の家族が...殺された...俺の中の何かを引き起こすために? その恐ろしい含意は彼に残されたわずかな息を奪った。サガンボ...その名前は宇宙自体によってささやかれた呪いのように感じられた。
「決意はサガンボの執着に対する蒼白い言葉だ」メルスは答え、彼の氷河のような目がほとんど知覚できないほど細められた。彼の周りの空気がより冷たくなったように見えた。「覇王を送るのは、単に羽根の生えた力を収穫するためだけではなく、俺を餌にするために...俺を盤から切除しようとするために...」かすかなきらめきが、氷の上の陽炎のように、メルスの真珠光沢のスーツを横切って波打った。「奴は身の程知らずだ。そして過小評価している。」
コクトの姿勢が変わり、巨大な力の微妙な渦巻きだった。それは単に物理的ではなかった。破壊された部屋の影が彼の周りで深まり、彼の存在に引き寄せられたようだった。「俺を誤解するな」彼はしゃがれ声を上げ、怒り以外の何かの暗示が一瞬表面化した。鮮烈で、冷ややかな実利主義。「神に対抗すること...ましてや神殺しを達成すること...は俺の任務を遥かに超えている。あるいは俺の欲望を。」彼はゆっくりと、故意に剣を上げた。刃が唸り始め、シンジの歯に、彼の傷の生の縁に振動する低く危険な周波数だった。暗いエネルギーが、目に見える静電気のように、その長さに沿ってパチパチと音を立てた。「俺の任務は優雅にシンプルだ。貴様をそれから引き離すことだ。」剣の先端が確実に、非難するように、シンジを指した。「悪魔の種子は隔離されなければならない。その新生の力は封じ込められる。あるいは切除される。貴様の近接性は...収穫を複雑にする。」
神?悪魔の種子?収穫? シンジの息が止まり、突然の沈黙の中で絞められたような音だった。世界はさらに狂気へと傾いた。これは現実じゃない。現実であるはずがない。まるで...まるで悪夢の漫画だ!こいつらは一体何なんだ?!俺は何なんだ?! 彼は自分を押し上げようとし、走ろうとし、叫ぼうとしたが、彼の体は苦痛と衝撃の牢獄であり、反応しなかった。
コクトが動いた。
ぼかしはなく、劇的な準備動作もなかった。彼は単にもう通りに立っていなかった。彼は破壊された居間に、メルスの真正面に再出現し、彼の剣は既に思考より速く空気を切り裂く凝縮された闇の眩しい筋で、創造の神の喉に致命的な精度で狙われていた。空気自体が悲鳴を上げ、純粋な不可能な速度によって引き裂かれた。
メルスは避けなかった。彼は打撃が着地した空間を占有することをやめた。彼の体は段階的に、一時的に無形になったように見え、致命的な刃は悪意あるヒューという音で空虚な空気を通過した。同時に、メルスの右腕が動いた。速度ではなく、崩壊する星の恐るべき必然性で。彼の拳は、光に包まれているのではなく、純粋で局所的な重力歪曲の光輪に包まれ、打ち出された。それは移動しなかった。それはコクトのひび割れた胸当てに対して顕現した。
衝撃は音を超えていた。それは物理学の根本的な違反だった。
ドガアアアアン!
爆発は封じ込められなかった。コクトは再び消えたが、今回は後方ではなく、下方と外側だった。彼は床を砕いて粉砕し、基礎を粉砕し、それから通りの向こうの6階建てオフィスビルの強化コンクリートの脇腹を横方向に突き破って噴出した。構造は単に崩壊しただけではなかった。それは崩壊した。全フロアが粉砕されたコンクリート、原子化されたガラス、気化した鋼の大災害の開花の中で蒸発した。衝撃波が、純粋な力の波打つ壁として可視化され、外側に放射された。
それはブロック単位で残りの全ての窓を砕き、車をおもちゃのように持ち上げ、シンジに叩きつけ、彼をぼろ雑巾のように破壊された自宅の遠い壁に投げつけた。世界は塵、瓦礫、黙示録的な騒音の轟く、盲目的な大渦巻きに溶解した。既に鳴り響いていたサイレンは完全に溺れた。地面が死にゆく動物のように跳ね上がり隆起した。水道本管が間もなく泥に変わる間欠泉で噴出した。電気変圧器が青白い青い火花のカスケードで爆発し、地獄の風景にストロボライトの閃光を加えた。
シンジは窒息し、石膏と割れた木材のカスケードの下に埋もれ、傷から白熱した苦痛が燃え上がった。彼は濃い窒息する塵の雲を通して戦闘員を見ることができなかった。彼は早送りされたハルマゲドンの映画のように展開する黙示録的な余波だけを目撃できた。ブロック単位で建物が軋み倒れた。かつて彼の家だった場所の前の通りが座屈し、アスファルトがギザギザの裂け目に割れ開いた。空気は粉末化された死で濃密だった。
見えない...奴らが見えない! シンジは必死に思い、塵と血を吐き出した。彼の耳は鳴り、世界を破壊する大音響をくぐもらせた。まるで...山が戦うのを見る蟻のようだ!奴らは街を引き裂いている!動かなきゃ...逃げなきゃ...その前に...
彼はその思考を決して終えなかった。
衝撃波が、今回は異なる――鈍い力ではなく、灼熱の高周波スライスが、通りを引き裂いた。それは狙われていなかった。それは破滅的な副産物だった。シンジは塵の一時的な裂け目を通して、コクトの刃がメルスの凝固した創造エネルギーの球体を反らすのを垣間見た。反らされたエネルギーは消散しなかった。それは純粋な空間歪曲の三日月として剪断され、空気を悲鳴を上げて通過した。
それはシンジが半分埋もれていた瓦礫の山を、霧を通るレーザーの無関心さで通過した。
そしてシンジを通過した。
今回は痛みはなかった。ただ深遠な、氷のような分離の感覚だけだった。彼は塵に窒息した空が狂ったように傾くのを見た。彼は数秒前に彼の下半身があったコンクリートのギザギザの端を見た。二つの視点。一つの心。彼の視界は急速にトンネル化し、轟く混沌がくぐもった、綿のような沈黙へと消えていった。意識の最後の破片が、濁りを通って彼に向かって槍のように突き進む輝く青い光の筋と、現実の崩壊する基礎を振動させるように見える怒りで生々しい声が、喧騒を切り裂くのを記録した:
「畜生!」
それから、慈悲深くも、意識の鏡は完全に絶対的で、沈黙した闇へと砕け散った。
闇は空虚ではなかった。それは引き裂かれる鋼の反響、分離の幻の感覚、そして解体されつつある街の消えゆく轟音で満たされていた。カズヒコ・シンジは漂わなかった。彼は砕け散り、意識は「自己」の概念が前と後の氷の破片に溶解する虚空を横切って断片化された。
それから、光。暖かく歓迎する光ではなく、塵の濃い空気を通して屈折する遠い火の厳しく、ちらつくオレンジ色の輝きだった。感覚が戻った。最初は痛みではなく、深遠な、骨の深い寒さで、まるで彼の血液そのものが液体窒素に置き換えられたかのようだった。それから重さの感覚、硬く不均一な何かの上に横たわっている感覚が来た。瓦礫。彼は瓦礫の上に横たわっていた。
記憶がコクトの剣の力で叩き返された。血。死体。覇王。神。彼の避難所を、彼を切り裂いた不可能な刃。彼自身の両断された現実の瞬間的な視界。メルスの怒りの叫び。
死んだ。俺は死んでいるはずだ。
しかし寒さは現実だった。頬に食い込む砂利は現実だった。煙、粉砕されたコンクリート、そして何か漠然と電気的なものの鼻を突く臭い...オゾンが焼けた肉と混ざった...は恐ろしいほど現実だった。
彼は喘ぎ、喉を掻く生々しい、不随意の音だった。苦痛が呼吸に続いた。新鮮な傷の鋭い苦痛ではなく、深く広範な痛み、世界から暖かさを吸い取るように見える細胞の疲労だった。それは彼の核から放射され、煙で燃える空洞な炉だった。彼は...枯渇したと感じた。空になった。
激しく震えながら、シンジは肘まで自分を押し上げた。動きが吐き気とめまいの波を彼の上に押し寄せさせた。彼は下を見て、恐ろしい分離、内臓の流出を見ることを期待した。
彼の手が彼の胃に飛び、狂ったように叩いた。破れた、血に染まった布地が彼の触れるところに会った。彼は彼のシャツの破れた残骸を引き裂いた。
下には皮膚があった。生々しく、怒ったように赤く、ひどく治癒した火傷のように筋肉の上に張り詰めていた。触れると過敏で、深い痛みを放射していた。しかし無傷だった。壊れていなかった。彼の脚は破れたズボンの下に無傷でそこにあった。彼は擦り切れた靴の中で足の指を動かした。それらは動いた。
どうやって? その問いは彼の心の中の沈黙の悲鳴だった。二度だ!二度も真っ二つに切られた! 両断の幻の感覚――冷たく、きれいな切断――が無傷の触覚的現実と激しく争った。彼の胃が反転し、胆汁以外の何も排出しないと脅した。彼は瓦礫が動く音が彼を凍りつかせた。彼は見上げた。心臓が閉じ込められた鳥のように肋骨を打ちつける。
かつて東京の通りだった荒涼とした広がり――今やギザギザの峡谷の砕けたアスファルト、捻じれた鉄筋、そして建物の骨格のような残骸――を横切って、メルス様が着地した。彼は軽く、ほとんど優雅に、砕けたコンクリートの山の頂点に降り立った。彼の真珠光沢のスーツは数か所で焦げて破れ、下の発光する青い肌の垣間見を明らかにし、深い裂傷が縦横に交差していた。
彼の表情は厳しく、千年紀の深さに見える疲労が刻まれていた。彼の氷河のような目は、黙示録的な景色を走査してから、重くシンジに落ち着いた。
シンジは本能的に後退りした。彼の生々しい肌が粗い破片に対して抗議の悲鳴を上げた。恐怖、原始的な、圧倒的な恐怖が彼を窒息させた。この存在、この「神」は悪夢の一部だった。彼が覇王を連れてきた。彼が破壊をもたらした。彼は繋がっている。
より重い衝撃が近くで地面を揺らした。コクトが着地し、よろめいた。数分前にはそこになかった巨大なクレーターの割れた縁に。剣怒の覇王は無残な姿だった。彼の暗い装甲は引き裂かれ、座屈し、深い裂傷が血を流していた。彼の赤いスカーフはボロボロになり、かろうじて肩にしがみついていた。彼の呼吸は荒く、湿って、苦しそうだった。片腕が脇に力なく垂れ下がっていた。彼の剣は、奇跡的に折れていなかったが、欠けて鈍り、その暗いエネルギーが不規則にちらついていた。彼はそれに重く寄りかかり、松葉杖として使い、一瞬頭を下げた後、無理やり体を起こした。
彼は破壊を横切ってメルスと目を合わせた。コクトの視線には憎しみはなかった、シンジは遠くで気づいた。ただ骨の深い疲労と、戦士の厳しい評価だけだった。メルスはその視線に応え、彼自身の氷のような目が街の燃える輝きを反射していた。
「フン」コクトは唸った。その音は痛みと、何か…敬意に似たもので濃厚だった。彼は口いっぱいの血を瓦礫に吐き出した。「今回は…お前をそれから遠ざけることはできん。」彼は体重を移動させ、明らかに顔をしかめた。「計画は…修正が必要だ。」彼は傷が許す限り体を起こし、無残な姿にもかかわらず、姿勢に反抗の炎が燃え上がった。彼は傷ついた剣をわずかに上げた。脅威としてではなく、最後の厳しい敬礼として。「だがこれを心に刻め、メルス…」彼の声は緊張していたが、絶対的な確信を運んでいた。「我々は戻ってくる。超越者は…捕らえられる。」
もう一言も言わずに、コクトはうずくまり、彼の巨大な力の残滓を集めた。彼の足の下の地面が割れ、ガラスに圧縮された。最後の、地を揺るがす跳躍で廃墟に衝撃波を送り、彼は煙に窒息した空へと身を投げた。地獄の輝きに対して闇の縮小していく筋となり、見えない地平線へと向かった。
メルスは彼が去るのを見守り、彼がため息をつくと、緊張がゆっくりと肩から流れ出た。彼の傷のきらめくエネルギーがかすかに脈打ち、それから安定した。彼は振り返り、彼の視線が地獄の景色を掃いた。燃える家とオフィスの残骸、ひび割れた大地、窒息する空。最終的にシンジに完全に落ち着く前に。彼はそれから動いた。以前の不可能な速度ではなく、故意の、ほとんど疲れた目的で。彼は裂け目と瓦礫の山を不自然で静かな優雅さで踏み越え、距離を縮めた。
シンジはメルスが近づくとひるみ、砕けた壁の塊に身を押しつけた。創造の神は数歩離れたところで止まり、それからゆっくりとひざまずいた。その動きは脅威的ではなかったが、シンジはたじろぎを抑えられなかった。メルスは反応を無視し、彼の古代の、氷のような目が不気味な強度でシンジを研究した。柔らかく、冷たい青い光がメルスの手から発し、シンジの胸のすぐ上で浮かんでいた。それは暖かくなかった。液体の氷でスキャンされているように感じられた。
「お前の肉体的な傷は治った、カズヒコ・シンジ」メルスは述べた。彼の声は落ち着いて、響き渡り、しかし山の重さを運んでいた。彼はおおまかに身振りをした。砕けた都市景観、シンジの家がかつて立っていたくすぶる廃墟を包み込んで。「ここで与えられた損害…喪失…」彼の氷河のような目がシンジの恐怖に満ちた視線を捉えた。「…は、はるかに深い紛争の表面的な傷跡に過ぎない。」
シンジは見つめた。彼の心は揺れ動いた。治った?治った? 彼の体は無傷かもしれないが、叔母と妹の映像、剣の感触、引き裂かれる分離…それらの傷は骨よりも深く感じられた。言葉がころげ出た。生々しく、断片化して:「な…なに…?だれが…?わたしの…わたしの家族は…?あの怪物…コクトは?わたしは…切られた…?二度も!どうやって…?なぜ?」彼の声は最後の言葉で割れ、ついに涙が溢れ、顔の汚れに筋を切った。彼は膝をより強く抱きしめ、近くの火から放射される熱にもかかわらず激しく震えた。
メルスは長い間彼を見つめ、彼の手からの青い光が消えた。死にかけている街の音が重い沈黙を満たした。
「答えは負っている」メルスはついに言った。彼の声は低かった。「現実を横断する複雑さ。お前が知っていた世界を砕く真実。」彼は一時止まった。彼の古代の視線がシンジを通して、彼の存在の構造そのものを見るようだった。「どうやら、私には説明すべきことが多いようだ。」
シンジはただ見返すことしかできなかった。彼の目は衝撃と原始的な恐怖の広い池で、彼の破壊された世界の火を反射していた。純粋な、圧倒的な恐怖と完全な、麻痺させる混乱に縮小され、彼が何とか絞り出せたのは震える、壊れたささやきだけだった:
「ああ…ああ、そうだな。」
第2章「始まり」をお読みいただき、ありがとうございました!
今回から、シンジを巡る本格的な戦いと謎が動き出しました。圧倒的な敵・コクト、その目的、そしてシンジの中に眠る「何か」。謎は深まるばかりですね…。
「家族を目の前で殺されたのに、なぜ自分だけ死なないのか」
このもどかしさと絶望感、そして怒りを、シンジを通してこれから深く掘り下げていきます。彼の旅は、地獄の底からのスタートです。
次章「邂逅」では、ついにシンジとメルスによる本格的な対話が始まります。メルスが語る「真実」、そしてシンジが自分の運命を受け入れるのか、拒絶するのか――。運命の歯車が、もう止められない速度で回り始めます。
この物語は、絶望の中で「生き残ってしまった者」の葛藤と成長を描く、ダークでハードな物語です。これからもどうかお付き合いください。
〜読者の皆様へ〜
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「シンジかわいそう…」「コクト強すぎ!」「メルスは味方なの?」など、どんなささいな感想でも大歓迎です。皆さんの声が、次の章を書くエネルギーになります。
それでは、次章でまたお会いしましょう!




