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ドライな政略結婚が希望です  作者: 澄川あや


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エマ・ルノルフはキノコになりたい

初めての異世界ものです。おもしろかったと思って頂けたならば幸いです。

 私、エマ・ルノルフ15歳はモテない。


 一応、伯爵家の長女だというのに! 間違いなく存在すら知られていない。

 別に家族に冷遇されている訳ではないし、社交も頑張ろうとは思っている。ただ、お誘いがないだけで。


 まぁ、誘わないよね。魔力なしの娘は仲良くする意味ないよね。知ってた。


 農民は貴族から土地を借りて農作物を育てる。商人は品物の売買をして得た利益から土地代と納税を行う。

 貴族は、農民から土地代と税を徴収するかわりに、暮らしを守り、産業を発展させる。良くも悪くも、明確な分業なのだ。

 この分業が魔力の有無に非常に大きく関わってくる。


 貴族は魔獣を討伐したり、山を切り開いて畑を魔力で耕して農民に貸与したり、治水をしたり、貴族同士のマウントの取り合いしたり(たまに実力行使有り)、領土運営をする。

 魔力がないというのは、それだけ不良債権なのだ。

 懐に直結するからね!


 そう、だからこの状況は考えた事がなかった。



「エマ嬢、私と結婚してくれませんか?」


 金髪碧眼の美形が、箒を持ったままの私の右手を取り微笑む。美の女神様が男性になったら、こんな感じ! という超美形。

 眼福? いやいや、美形なら節度を守って微笑んでほしい。こんなキラキラした笑顔を向けられると目が焼けて再起不能になってしまう!

 そもそも、この方、どなた?

 今日、弟が先輩を連れて帰ると連絡をもらったから、玄関の掃除をしていたのだけど、お客様? であってる?

 混乱する私の耳に懐かしい弟の声が入ってきた。

「先輩、馬も話も飛ばしすぎです」

「すまない。焦ってしまった」


「……あ!」

 私は潰れかけた目と精神を復活させる。


 これが王都仕込みの社交辞令! さすがは王都。どこにいも空気と呼ばれた私を認識して、褒める所がないから流行りの劇を演じて下さったということね!

 ローメロとジュリーというスポーティーかつ官能的で、粗忽者の二人のドタバタ恋愛悲劇が王都で人気だと弟から聞いた気がする。きっとその一幕なのね!

 弟の感想も、ここで演じる意味もよくわからないけれど。

 自分の顔面と声を駆使して話題作り&隙あらばマウントを取ろうなんて上級者!

「都会は大変なのね……」

 そうなんだよ姉さん、と言いながら弟はお客様の手を払い落とした。



 ここで少し、我がルノルフ家を紹介させていただきますね。


 父、アドルフ・ルノルフ35歳。土属性。頻繁に起こる魔物の中発生(←大発生なら支援金が出るのに! と母が悔しがっていた)と、貧乏なのが悩みの種。

 荒事に向かない性質なので、先代領主夫妻が最前線で今も守っている。

 15年毎日、荒野(乾燥地帯6割、湿地帯4割)を一面の麦畑に変える夢を見て開墾に出かけている。最近は順調に開墾され、収入が増えつつある。いつも魔力と体をフル活動させているので、細マッチョでダンディなイケオジだ。髪と瞳の色は琥珀色。

 母、サーシャ・ルノルフ33歳。貧乏子爵家から嫁いできた。玉の輿と思いきや、辺境の不毛の大地に嫁入りしてしまった苦労人。

 弟が7歳で国立騎士学校に行くまでは私と弟の基礎教育を行う。弟が学校に行った5年前から体育会系の父と開墾に励む。水色の髪と瞳の儚げ美人。精神はタフだが、体は若干弱く、毎日ほぼ意識を失って帰宅する。それでも開墾に行くのは我が家のお財布事情のせいかもしれない。口癖は貧乏恐い。なんか、ごめん。

 弟、ブラッドリー・ルノルフ12歳。国営騎士学校(無料)へ通うため寮に入っている。年に二度帰省する。かなりの魔力量を持つ父似のイケメン。

 嫡男であるため、従来であれば貴族学校に通うのが慣例だが、あえて騎士学校を選ぶ。学費か? 学費で選んだのか!? 幼い弟にお金の心配をさせて、ごめん。

 建前は王家に恭順を示すためと7歳で入学。今では情報収集にちょうど良い。将来のために弱味を握るのさ! と言い放っていた。

 いつの間に可愛い弟から腹黒イケメンにクラスチェンジした?

 我が家が貧乏で、世間の荒波に揉まれまくったからか?


 貧乏、憎い…。


 それはさておき、私の自己紹介もさせて下さいませ。

 私、エマ・ルノルフ15歳は美形遺伝子をどこかに紛失し、才能なし、魔力なし、美貌なし、ついでにコネクションもなし。縁もなければ婚約者もない。お一人様の人生を領地で過ごす弟のお荷物確定である。申し訳ない。

 髪の色はうっすらと水色。多分、うっすらと水属性の魔力があるのだと思う。魔力判定機に反応しなかっただけで。

 そんなこんなで、私の生涯、ど田舎で、弟に寄生して静かに死んでいくのだと思う。

 乾燥地帯でも、せめて水場が近くにあれば生きていけるから、細々と人力で開拓して生きれるから乾燥地帯でもウエルカムだけれど!

 湿地帯だと、キノコを売ったり、食べたり出来るから、比較的明るい希望があるのと信じている。 

 引きこもり先は頑張って湿地帯をお願いしましょう!

 そういえば、湿地帯で特有の美しい馬が見つかったと報告があったわ。

 馬といえばマッシュルーム!


 ……ちょっと待って。

 マッシュルームだけじゃないわ。

 キノコの菌には、落ち葉などの有機物を分解する力を持つものがると聞くわ。それを堆肥にして、畑に役立ててもらえたら…。


 キノコ、良いのではないかしら?

 食べて良し。堆肥も良し。とっても役に立てる予感!

 不肖の姉だけど、弟の力になれることがあるなんて素敵!

 

 キノコ、良い!

 私はキノコを目指すわ!

 誰か、エマッシュルームとでも名付けてくれないかしら。



 さて現実逃避して少し落ち着いてきたので、帰郷してきた弟とお客様を館へご案内する。

 シャワーを浴びたり、少し休んだら話がしたいと弟が言うので2時間後三人でお茶をすることになった。

 

 これが弟による顔合わせだった事に気がついたのは、もっとずっと先の事だった。

暗い話を書くので、暗い人間だと思われがちですが、コメディ気質なのです。ホラーでない釈明を活動報告にさせていただいているので、よろしければそちらもお読み下さい。

よろしくお願いいたします。

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