将来住職になる予定の俺が『線香の勇者』と呼ばれるまで
俺の名前は、源 守。
将来は家の寺を継ぎ、住職になる予定の高校生だ。
「守、父ちゃん今から仕事に行ってくるから寺のこと頼むぞ」
「見学しちゃいけないのか?」
「お前にはまだ早い」
「………」
まだ早いといわれ続けて16年、今だに父ちゃんが何をしているのか知らない。この寺での仕事は一切なし。それなのになぜ寺を持っているのか聞いたら、「固定資産税がかからない!」と言っていた。……バチでも当たれ。
––––それから2日後、黒スーツに眼鏡をかけた真面目そうな男が寺に来た。
「君の父さんは死んだ。そのため、今日から君を国指定の退魔師とする」
あ、本当にバチ当たっちゃったよ。というか「たいまし」ってなんだ?
……もしかして、違法なブツを使った人ってことか?俺は内心ひどく慌てた。
「え?俺、違法の薬なんか使ってないです。誤解です。何ならここで検査してもいいですよ。それくらいの覚悟はできてます。どんとこい!」
「違う、そうじゃない。悪霊を倒すほうの退魔師だ」
「……何をするんですか、それ?」
「すべてはここに書いてある。それでは私はこれで失礼する。」
そう言って男は「いしょだよーw」と書かれた不気味な紙を残して去った。
俺は即座にその紙を開いた。
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「いしょだよーw」
守がこれを見てるってことは、父ちゃん死んだってことだなww
長年隠してきたが父ちゃん、実は退魔師なんだww
悪霊の払い方だが、塩と線香さえあればどうにかなる。
後は頼んだぞー
PS
何かあった時のためにお札を用意してたんだが、酒で汚れて使えなくなっちゃったwごめんww
守の親愛なる父より
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俺はひどく感心した。
こんなクソみたいな(実際クソ)遺書を残せる人、そうそういない。クソ遺書コンテストがあったら最終選考まで残るやつだ。
そんなバカなことを思っていると、スマホにメールが届いた。
『大至急!全国の退魔師はすぐに渋谷に集まれ!もし来なければ寺を潰す‼だからと言って急ぎすぎて装備を忘れてくるなよ!絶対だぞ! by国』
何この物騒なメール。寺潰されるの困るし……行くか。
俺はそこにあった線香の束を持って渋谷に向かった。塩は忘れた。
◇
渋谷のスクランブル交差点に着くと、何十人もの変なやつらが集まっていた。
とある人はサングラスを3重に掛け、周りの人にぶつかっている。
とある人は10センチは優に超えるだろう厚底シューズを履き、転んでいる。
退魔師って変わり者しかいないのか?
俺が常識人を探していると、さっき家に来た男が変人集団の前にやってきた。
「今からここに、『大魔王:強すぎだよー』がやってくるそうだ。こいつは先日、退魔師の家系で有名な源家の当主、通称『守のとーちゃん』を秒殺した悪霊だ。諸君、気を引き締めてくれ!」
あいつ、通り名までふざけやがって……俺からしたらどっちも悪なんだよな。いや待てよ、『大魔王:強すぎだよー』は悪を倒した。それに、父ちゃんはその仕事行く前に酒をがぶ飲みしてた。悪いのはすべて父ちゃんなのでは?
その考えに達した瞬間、大きな地響きとともに人型の影が現れた。
その影は圧倒的な存在感を放ち、周囲を威嚇していた。
周りの退魔師たちが一斉にその影に飛び掛かるも、影が腕を一振りするだけでその退魔師たちは数メートル吹き飛ばされた。
目の前で起こった非現実的な光景に、俺は恐怖を感じた。
影は俺に気づくと一目散に寄って来る。一振りで人をぶっ飛ばせる化け物が自分に近づいてくる……立ったまま失神するには十分な理由だった。
◆
なんか走馬灯見えてきた。
「守には線香を扱う才能がある」
線香を振り回す5歳の俺を見て、じいちゃんはそう言った。
普通なら怒鳴られていただろう。でも俺の家族は普通じゃなかった。
「じゃあ毎日線香を振らせるか?」
父ちゃんがノリノリでじいちゃんに提案した。やめてくれ、息子に変なことさせようとするな。
「いや、小さいころから修業をすると悪霊に攫われやすくなる。もう少し大きくなってからやらせよう」
じいちゃんもふざけんな。大きくなって線香ぶん回す孫を想像してみろ。
ん?でも俺、線香ぶん回し修行なんてしてないぞ。もしかして父ちゃん、俺が成人してからやらせようとしてたんじゃ……
おっとっと、忘れてた危ない。これ走馬灯だった。ツッコんでる場合じゃないな。そういえば、少年漫画ならよく走馬灯って打開のカギになるよな。
……よし、線香ぶん回すか。
◆
俺は変な走馬灯から目覚め、即座にポケットに差していた線香の束を取り出した。改めて持ってみると、不思議と馴染む気がした。
俺は目の前に迫ってくる影に向かって、力いっぱい線香を振りかざした。
すると、影と線香がぶつかる鈍い音と影のうめき声が周囲に響いた。
「貴様、なんていうもん隠してんだ……ん? ただの線香? 馬鹿な! そんな物で我にダメージを与えたというのか? ふざけるな!」
影は自分で自分の疑問を解決し、俺にキレ散らかしてきた。
俺は即座に線香を前に構えた。その所作は洗練されていた。俺は中学時代、剣道の全国大会に出場していたのだ。(初戦の開始1秒で負けた)
他者から見れば、『無駄に洗練された無駄のない無駄な動き』の典型例であろうこの仕草。でもこの状況では、世界の命運を変えるほどの価値があった。
怒りに身を任せ、突進してくる影。それを見た俺は線香を上へ振り上げる。
間合いに影が入る刹那を全神経を集中させて見極める。
–––いつ振るの?今でしょ!
全国大会で放つことすらできなかった渾身の一振りは、影の頭にクリーンヒットした。
「ウギャーーー!我が負けるとは……」
こうして、『大魔王:強すぎだよー』はあっけなく消えた。
––––『大魔王:強すぎだよー』が消滅してから1日後、この戦いは全国に放送されることとなり、SNS上では #『線香の勇者』 #線香を真剣に振る厨二病男子高校生 などがトレンド入りした。そんな中1位だったのは、#『守のとーちゃん』 だった。
こうして俺は、『守のとーちゃんの息子:守』と『線香の勇者』の二つの異名を手に入れたのだった。
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「あとがきだよーw」
読者様がこれを見てるってことは、こんなふざけた文読んでくれたってことだなww
作者が言ってたけどこの物語、実は連載ものにしようか一瞬迷ったらしいww
作者の喜ばし方だが、☆とコメント、ブクマさえあればどうにかなる。
応援頼んだぞー
PS
評価してくれた時のために何かお礼を用意してたんだが、俺死んだから無理だw
ごめんww
読者様の親愛なる『守のとーちゃん』より
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