表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

4 晴れグラウンドを駆け巡り

前回のおさらい...。『いじめで紫陽花高校に来た』と話した俺は、平静を装いながらも弁当をしっかり食べきり、体育の準備をするために屋上から降りて教室に向かった。そして体育着に着替えた俺は何とか授業に間に合った。

「今日の授業はソフトボールします」

「ソフトボール...」


ソフトボールか...中学生ぶりだな...。確かキャッチボールして、バッティングの練習をして紅白試合をして...って俺は誰とキャッチボールをすればいいんだ?自分の額から地面に向かって一粒の水が落ちる。俺は落ちる瞬間の汗を見ながら考える。俺は不安が嫌い。後先が分からないし、心臓がバクバク震える。


「ボールとバットは柔らかいタイプなので、体に当たっても大丈夫です。ではキャッチボールをしま…」

「中学生の頃と同じやつだ」

「住田くんキャッチボールしよー」

「いや私がするの!!」

「いや私!!」

「わーたーし!」

「え?」


受け入れてくれてる…?俺が?本当に?前の高校ではあんなこと言われたのに?心にポッカリ空いた空間に一つのピースが埋まったような気がした。それと同時に視界がじんわりにじみ始める。涙がこぼれないように一瞬上を見上げて前を向いて言う。


「じゃんけんしてくれ!」




「あれ打てるのすご…」


そして現在紅白戦に至る。両チームにも運動神経の良い人が沢山おり、プロの試合じゃないかってぐらい白熱している。一塁打...二塁打...一塁打...ホームインが続いている。そして何より...みんなバッティングのフォームが良すぎる。出来るけど一応お手本にしとこ...。


「次住田くんだよー!」

「あ、はい!」


俺は柔らかいバットを持ちながらゆっくりとバッターボックスに歩みを寄せる。ソフトボールのためにバッターボックスとかラインを引いてもらってる先生に感謝しないと。俺の得意なスポーツでもあるから。


「ふー...」


息を吐いて緊張をほぐす。中学ぶりにするからドキドキもあるけど、アウトになった時に責められないかで怖い。そういえば他のクラスも体育だったっけ...?一瞬だけ周りを見渡す。やっぱり...2組っぽい...。ってあいつらいるし...!いや集中しないと...。俺は右打席に立ち、バットを構える。現在5-5、1アウト2塁。とりあえず、一球様子を見よう。


スパァンッ!!


速い...。合わせられるかこれ?バットを持つ手が震えている。がんばれ俺...!




「あ、あれたつーじゃん?」

「ホントだ!あれたっくんじゃん!?バットってことはソフトボールかな!?」

「あんたたち集中しなさーい!!」

「詩織ちゃんうるさいよー!いいでしょ別にー!」




見られてることに俺は気づかずに...。一人で打席に集中する。女子から見られているとプレッシャーがすごい。まじでやばい...。


「っ!!」


結果は空振り。まずい、追い込まれた。投球上手すぎる...!ていうかこの学校の生徒が全体的に運動が上手い。いや次は皆の期待に応えられるようにしないと...!


シュッ!!


「ここだっ!!」


振りかぶったバットはボールを捉える。そしてボールは弧を描きながら高々と舞い上がり、野球場で言うレフトの後方に落ちる。その間に俺は1塁を蹴り、2塁に向かう。そして2塁に居た女子が帰塁。


「すっごーい!!」

「3塁行けるよー!!」


ボールは中継に受け渡そうとされている。その間に俺は2塁を蹴って、3塁に向かう。右打席でも3塁に行けた人は、プロ野球でもあまり見たことがないけど、期待に応えられるなら...。俺は...俺は好きな居場所が出来たんだ!だったら俺が出来ることはこれしかない...!!


「えっ!?ホームベース狙ってる!?」

「本当に!?」


女子が驚きながら俺を見ている。でも関係ない。3塁を蹴った俺はホームベースを狙う。心が叫んでる。全力で楽しむんだ!!って。あんな虚無な人生より楽しんだもん勝ちだって。


「やった!!」


不意を突かれた中継は送球時にボールが少し浮き上がりその間に俺は帰塁。右打席のランニングホームランなんて珍しすぎる。そして7-5となり、俺はゆっくりと打席の順番の待つ場所に行く。


「住田くんすごっ!!」

「運動得意なの!?」

「あ...うん...」


チラッと2組を見ると、偶然綾香と目が合ってしまう。おそらく2組はサッカーか...?綾香は一瞬だけ俺に手を振り、またサッカーに集中する。なんだあいつ...?何がしたかったんだ?ま、いいか...。


「楽しかったー!」

「ねー!!」

「住田くんすごかったね!」

「まぁ、うん」


結果は7-6。あの後に1点入れられてしまったけど、勝利した。ちなみにまだランニングホームランをした自覚は無い。変な爪痕残してしまった。時々ハイテンションになるから...。その後はチャイムが鳴って授業は終わった。


「着替えるか...」


っと危ない。そのまま教室に行くつもりだった。そしたら...『変態!!』って言われてたかもしれない...。俺本当に馴染めるのか...?


「トイレで着替えるのもめんどくさいし...」


校舎を歩きながらふと周りを見ると空き教室がある。そうだ、ここで着替えよう。俺はドアに手を置き開く。そして俺は...それが人生の危機に迫るなんて思ってもいなかった。


「えっ...」

「たつー!?」

「ちょっと...!」

「あんた今私たちが着替えてるところでしょうがぁぁ!!」

主な登場人物

住田竜司(すみだたつじ):主人公。紫陽花高校1年1組。誕生日は7月3日。16歳。

福留結希(ふくどめゆき):紫陽花高校1年2組。誕生日は11月18日。15歳。

水月心寧(みずきここね):紫陽花高校1年2組。誕生日は5月13日。16歳。

一ノ瀬綾香(いちのせあやか):紫陽花高校1年2組。誕生日は6月2日。16歳。

桃瀬詩織(ももせしおり):紫陽花高校1年2組。誕生日は8月21日。15歳。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ