14 火曜日と帰り道
おさらい。精神病院に通院した俺は、薬などをもらってから、学校に登校した。そして、帰る前に4人と合流した。そして、人生最大のピンチが訪れたのだった。
「あれー?こんなとこに逃げた野郎がー女子と話しながらーww」
「きっもww」
「かっわいそーww」
「っ...」
建物の横から突然現れたいじめっ子に、俺は両手や口が震え始める。それと同時に、自分の胃から何かが上がってきてくるのを感じる。逃げたい。逃げたい。でも...この問題を解決できるのは...俺だけだ。やるしか...ない。
「なんだよ!!」
「おっ...喋ったー」
「逃げただけじゃなくて女の子を連れてるなんてさーw」
「...」
逃げ出したい。足が震える。俺は鞄に手を入れて手の感覚でスマホを探し始める。
「たっくんこの人たちって...」
「たっつ...」
俺は、脳裏に起こされるフラッシュバックに襲われ始める。
「主人公気取りがww」
「独りぼっちーww」
「頭冷やせよww」
「水かけられてやんのーww」
「なんで...だよ...」
俺は頭を押さえ始める。そして今度は食道付近に何かが上がってくる。異変に気付いた4人は俺に駆け寄ってくるが、いじめっ子はお構いなしに言い続ける。
「あんた大丈夫!?」
「たつー無理しないで!」
「だ、大丈夫だ...先に帰ってくれ...」
「そんなことしたらダメ!!」
「演技か!演技だなww」
俺は歯を食いしばりながら、必死に目を開ける。その瞬間に、時間がいつもより、ゆっくりと進んでいる感覚に陥った。俺はいじめっ子のうちの1人が、バケツを持っていることに気づいた。
「深呼吸して!」
「わ、わかって...る」
俺の目はバケツに釘付けになっている。おそらく、あれは水入りバケツ、俺に向かって水をかける気だ。でも...このままだと他の4人にも水がかかってしまうことが確実だ。そしてその4人は、バケツを持っていることに気づいていない。俺が取る行動は...
「おらっ!喰らえっ!!」
「っ...!!」
時間がゆっくりと進み、いじめっ子のバケツから水が放たれる。俺は鞄を地面に捨て、4人の間をかき分けて通る。そして両手を広げて、俺は全身に水を浴びる。
「...たっつ?」
「ちょっと...!」
本当は分かっていた。俺はこの学校に転校してから、フラッシュバックが起こることが減った。精神も安定してきて、体のダルさもなくなっていっていた。でも、こんな日常が許されることではない。俺は逃げていたんだ。問題を先送りにして、自分の生きたいように生活しておいて...こんなのが許されるわけじゃないって。
立場が決まった者は、その立場が変わることはない。たとえ、それがいじめっ子、いじめられっ子だとしても。時間が経って、大人になったとしても。
「ぷはは!!自分からかかってきてるww」
「うわー水まみれーww」
「ちょっと謝りなさいよ!!」
「あんたたち最低だわ!」
「ひどい...!」
「人の心あるの!?」
結希や、詩織がいじめっ子に言い始める。そして、心寧や綾香も加勢して、その場はヒートアップしていく。そして、俺の髪から水が、地面に向かって滴り始める。俺はこの状況を見ることしかできなかった。何も言い返せず、俯いてるだけだった。俺は...何もできないんだ。俺は心の中で自覚した。
いや...本当にそうなんだろうか。何もできずに終わるなんて、そんなことはまっぴらごめんだ。
「うるせぇな女ども!!」
「俺たちはこれで満足なんだよ!」
「本当にひどいわね!」
「ヘラヘラ笑いやがって!!」
女ども...?その言葉にカチンときた。俺の友達も貶しやがって...そんなのはおかしいだろ。俺は、俯いていた顔を上げて、いじめっ子を睨んで一言放つ。
「テメェら...ふざけんなよ...」
主な登場人物
住田竜司:主人公。紫陽花高校1年1組。
福留結希:紫陽花高校1年2組。
水月心寧:紫陽花高校1年2組。
一ノ瀬綾香:紫陽花高校1年2組。
桃瀬詩織:紫陽花高校1年2組。




