表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/231

68話 世界を創った者、そして最初の裏切り

神殿の大鏡が再び脈動し、まるで意思を持つかのように淡い光を放つ。


巫女リュミエルが、ゆっくりと口を開いた。


「……この世界には“創造神”が存在したと伝わっています。全ての種族を形づくり、世界に法を与えた存在……」


アークが険しい表情で問う。


「だが……私はその神を見た記憶がない。七種族が語る“神の名”すら、互いに異なっていた」


リュミエルは頷く。


「それこそが、“最初の欺瞞”なのです。真にこの世界を創った者の名は、すべての記録から意図的に“消された”。」


勇者カイが口を挟む。


「じゃあ……俺たちが“正義”として信じていた神すら、虚構の存在だったってことか?」


「信じるために造られた偶像アイドルに過ぎなかったのかもしれません」

ミカが苦々しく呟いた。


鏡が映し出したのは、さらに太古の時代。


天の果て、創造の源たる“白き虚空”――


そこには、ひとりの存在が佇んでいた。

その背には、天も覆う光と闇の双翼。


「――“ノゥア”。」

リュミエルがその名を口にした。


「世界の創造主にして、すべての秩序を設計した存在。だがその“ノゥア”こそが、世界の分断を生み出した“最初の裏切り者”だったのです」


アークが目を見開く。


「創造主が……この世界を“壊す側”だったのか……」


リュミエルは静かに語り続けた。


「彼はこう言いました。『争いこそが進化を促す』と。そして七種族に“均衡の崩壊”を与えた。知恵、力、欲望――それらは全て“試練”として仕組まれたものだったのです」


「それじゃあ……俺たち勇者が信じてきた“神の使命”って……」

カイの拳が震える。


「誰かの“実験”だったってことになるな……!」


アークが一歩、鏡に近づいた。


「だとすれば……僕は、今度こそ抗う。僕を異端とし、争いのために世界を操った創造者に対して――」


ミカが静かに言った。


「私も戦います。信じてきたものが間違いだったとしても……信じたい“誰か”を、私はもう見つけたから」


彼女の視線は、まっすぐアークに向けられていた。


リュミエルが頷く。


「ならば、“最後の試練”へと向かう時です。創造神ノゥアは、今もこの世界のどこかに存在している。そして……」


鏡が激しく脈動し、ひとつの場所を映し出した。


「――“創造の根”へ至る道が、開かれようとしています」


【鏡に映る場所 ― 極北の大地コル・ニヴァル

氷に閉ざされた地、吹雪の彼方に聳え立つ黒き塔。


その塔こそ、“神が眠る”とされる禁断の地――


「……行くしかないようですね」

アークが静かに呟く。


「“世界を終わらせた神”に会いに」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ