表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/231

67話 黒翼の誕生、千年前の裏切り

「……時をさかのぼりましょう」

巫女リュミエルの声が、静かに“鏡の間”に響いた。


神殿の中央に浮かぶ大鏡が、淡く光り始める。

そこに映し出されたのは、かつて栄えた“七種族統合時代”――千年前の世界だった。


議場には、人間、魔族、天族、獣人、ドワーフ、エルフ、そして竜族の代表が一堂に会していた。

その中心に、黒髪の少年――翼を持たぬアークの姿。


「私は……この七種族が手を取り合い、争いのない未来を築くべきだと思う」

少年アークは訴えていた。


「力ではなく、言葉と心で――」


「愚か者め! 魔の者が人間に説教など!」

天族の長が怒声を上げる。


「この者は、どちらの側にも属さぬ“異端”だ。血も出自も不明……神の恩恵を受けぬ者を、我々の中心に据えるなど――!」


「……アークを“契約の鍵”にするべきではなかった」

竜族の代表が低くつぶやく。


少年アークの表情が曇る。


「僕は……皆を信じていたのに……!」


ミカが拳を握りしめる。


「アーク様は、ずっと皆のために動いてたじゃない……!」


巫女リュミエルが静かに続ける。


「だが、その理想は拒絶された。七種族は恐れたのです。“力を持たぬ者”が新たな調和を導くことを。そして……」


鏡が赤く染まる。


「ついに、“裁き”が下された日。アークは……裏切られ、封印されたのです」


「異端者アークよ、そなたは“神なき者”と認定された」

天族の審判が告げる。


「我々はそなたに、封印の翼を――“黒き契約”を与える」


「……それは……っ!」


少年アークの背に、苦痛とともに漆黒の翼が現れる。

その瞬間、天が裂け、大地が震えた。


「これが……“黒翼”の、誕生……?」

勇者カイが息をのむ。


「アーク様……! そんな過去を……ずっと……!」

ミカの目に涙が浮かぶ。


「……私は、ただ皆と共に未来を築きたかった。それだけだった」

アークがようやく口を開いた。


「でも世界は……それを許さなかった。“翼を持たぬ者”が未来を導くなど、都合が悪かったのだ」


「だったら……今こそ、その呪いを解きましょう」

ミカが前に進む。


「あなたは“黒翼”じゃない。アーク様は、私たちの“導く者”です。私はそれを信じます!」


巫女リュミエルが静かに頷く。


「では、次の試練に備えましょう。“黒き翼”が誕生したその日……その裏で、“真なる裏切り者”がいたのです」


アークとミカが同時に問う。


「裏切り者……?」


「そう。“あなたの封印を仕組んだ真の存在”。それは……この世界の“創造者”そのものかもしれません――」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ