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66話 記憶の封印と巫女の目覚め

夜の帳が降りた王都に、聖なる鐘の音が響く。

それは封印された古の神殿――“鏡の間”が目覚めた合図だった。


「この音……!」

ミカは立ち上がり、アークと目を合わせる。


「ついに、“巫女”が目覚めるというのか……」

アークの声に、どこか緊張が滲む。


魔王軍、エルフ、ドワーフ、獣人の代表、そしてミカと勇者カイ。

選ばれた者たちが集い、“鏡の間”の封印を見届けることとなった。


淡い光に包まれた神殿の中央には、水鏡のような大理石の床。

そこに立つ少女――眠りの中で封印されていた“真実の巫女”――その名は〈リュミエル〉。


「……目覚めの刻、来たりし者たちよ……」

光が舞い、少女のまつげがふるえた。


「私は……リュミエル……。この世界の“最初の契約”を見届けし者……」


「契約……?」

ミカが反応する。


「千年前、“黒翼”が生まれる前……世界は一つの調和で繋がっていた。だが裏切りがあった。人も、魔も、天も……互いを恐れ、争いに至った」


「それが、黒翼伝説の……起源なのか」

勇者カイが低く呟く。


リュミエルの目がゆっくりと開く。


「……封印が解かれた今、“真実”は二つに分かれる。見たい未来と、見たくない過去。あなた方は、それに耐えられますか?」


鏡が淡く光ると、映し出されるのは過去の幻影。


天に昇るはずだった“黒き翼”の少年。

神と魔に同時に見捨てられた“異端”の存在――それが、アークの前世。


「……あれは……まさか……」

ミカの目が見開かれる。


アークは黙ったまま立ち尽くす。


「アーク様……あの黒翼は、あなた……?」


「……記憶の片隅に、ずっとあった。だが、これで確信した。私はかつて、“神を裏切った魔”として、世界から断罪された存在だったのだ」


「それでも……あなたは、今こうして……」

ミカは唇を噛む。


リュミエルが告げる。


「“黒翼”が堕ちた日、真なる契約は消えた。そして、世界は争いへと向かった。だが――まだ遅くはない。契約を結び直すことは、可能です」


【新たな契約へ】

「その契約とは?」

カイが真剣な眼差しで問う。


「“力”ではなく“意思”による同盟。かつて失われた“七つの契約印”を取り戻し、それぞれの民族が再び対等に結び合うこと」


「だが、それは……」

エルフ代表が眉をひそめる。


「一度破られた誓いを再び結ぶなど、血を流してきた者たちにとっては――」


「それでも……」

ミカが前へ進む。


「私はやります。過去がどれだけ重くても、今、ここから世界を繋ぎ直す。あなたが“黒翼”の過去を背負っているなら、私は“未来”を背負います」


その言葉に、アークがわずかに笑った。


「……ならば、我も共に進もう。“再契約”の旅路へ」


鏡が強く輝き、契約の紋章が空に浮かぶ。

世界が、動き出した。

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