62話 魔導核と神々の遺産 ―封印の真実―
世界会議二日目――円卓に再び各国代表が集う中、ミカは立ち上がった。
「皆さま、本日は“魔導核”に関する新たな事実をご共有いたします」
資料が円卓を巡る。そこには、古代神殿の遺構、解読された碑文、そして――結社が追い求めている“神々の遺産”についての記録。
「これらは、我が魔王軍が調査した結果、魔導核の正体が“神々の封印装置”である可能性を示しています」
「神々の……封印?」
エルフの賢者レイルが、静かに眉を上げた。
「それが解かれれば何が起こると?」
「“混沌の原初”、神々すら恐れた存在が解放されると記されています」
「おい待て、それはただの伝説の類では……」
ドワーフ王が低く唸る。
「ではなぜ、結社がこれを狙うのか。なぜ“世界中の魔導核”が狙われているのかを説明できますか?」
ミカの言葉に、会議の空気がぴりりと緊張した。
すると、人間王子レオンが口を開く。
「なるほど……それで貴様ら魔族は“封印”を守ろうと?」
「もちろん。これが解かれれば、魔族も人間も存在ごと消え去る危険がある」
「信用できると思うか?」
レオンは冷たく言った。
ミカは一歩、前に進んだ。
「ならば、共に封印の地を視察しましょう。情報を開示し合い、真実を目で見るのです」
「……提案としては悪くない。だが、裏切りがあれば――」
「その時は、私の命で償います」
その言葉に、会場がざわつく。
「……!」
アークが立ち上がり、ミカの肩に手を置いた。
「それは私が許さん。命を懸けるのは私の役目だ、ミカ」
「でも、私が橋になるって決めたんです。魔王様」
しばしの沈黙ののち、エルフの賢者が言った。
「……共に行こう。もしそれが真実ならば、この世界の未来を左右する」
会議の場は、古代遺跡の視察と共同調査に向けて動き始めた。
「この世界に残された“神の声”は、我らが争うためではなく、守るためのものだったのだな……」
レオンが小さく呟いたのを、ミカは確かに聞いた。
「まだ……間に合いますよ。私たちは敵ではなく、“責任を持つ者同士”になれるはずです」
「その言葉、信じていいのか?」
「私は、信じて進む覚悟があります」
ミカの瞳は揺るがず、まっすぐレオンを見つめ返した。
しかしその裏で――
「……我らが“封印”に気づいたか。ならば、次の一手を打つしかないな」
漆黒のローブをまとう人物が、誰かに命じた。
「“黒翼の巫女”を向かわせろ。世界会議の均衡を、崩すのだ」




