表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/233

57話 裏切りと血の条約 ―“神の使徒”の介入―

爆発音と悲鳴が静まり、会議場に重苦しい沈黙が戻る。

倒れていたのは――人間連合代表のグランセル。だが即死は免れ、治療により一命を取り留めた。


「この場に、裏切り者がいる……」


ミカの声に、全員が息をのむ。


「我々魔族の仕業ではない! 私の魔力を感じた者はいるか? それが“証明”だ!」


アークの声が響く。


「だが、誰かがこの会議の破綻を望んでいる。全ての国の“未来”を壊すために」


そこへ、一陣の風が吹き抜けた。

天井のステンドグラスが砕け、黒いローブに身を包んだ者が舞い降りる。


「貴様は……!」


エルリナが驚愕の目を向けた。


「“ヴァルト教団”の――神の使徒!?」


ローブの男は顔を隠したまま、円卓の中央に立つ。


「争え。滅びよ。そして“神”の意志に従え。平和など偽り。力こそが世界の理である」


「戯言を……!」


アークが剣を抜こうとするが、その瞬間――ローブの男が手をかざすと、床から神聖文字が浮かび上がった。


《神託封印陣》――古の封術だ。


「動けば、会場ごと“終わる”ぞ。お前たちは、もう選べない。いや、選ばせないのだ」


重苦しい空気の中で、ミカはただ一つの可能性に賭ける。


「なら――私が“場”を変える」


彼女は懐から、かつて賢者エルリナに託された“封書”を取り出す。


「この中にあるのは、世界各国の闇に通じる証拠。誰が裏切ったのか、誰が“神”と手を結んだのか……すべてここにある!」


「な……!?」


使徒がわずかに動揺する。その隙に――


「アーク、今!」


「了解!」


魔王アークは結界の弱点を見抜き、魔力を集中させる。

ミカはその一撃のタイミングで、封書を空中に放り投げた。


「これが――“真実”よッ!」


爆風とともに、偽りの結界が砕け散る。


結界が消えると同時に、映像魔法が作動し、封書の中身が空中に投影される。


「っ……これは……!」


「我が国の宰相が!?」


驚愕の声が続く。


裏切りの黒幕――それは人間連合の一部指導層と、かつて魔族を迫害した旧王族派だった。


「これは……神の名のもとに、再び支配を目論む者たちの陰謀だ」


ミカは毅然と言い放つ。


静まり返った会場で、レオネーラ(獣人女王)が立ち上がる。


「我々獣人族は、未来を“恐怖”ではなく“対話”で紡ぎたい」


続いて、ドワーフのドゥラッグも声を上げる。


「技術も、鉱山も、力も――奪い合えば枯れる。だが、分かち合えば繁栄する!」


最後に、魔王アークが告げた。


「……ならば、この場に“新たな条約”を。戦争の終結と、各種族の自治権、交易の自由。そして――」


「“魔族”も、この世界の一員として認めることを」


会場に、誰もが見たことのない“未来”が差し込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ