56話 集結する諸国と緊迫の開幕
魔族・人間・獣人・エルフ・ドワーフ――五大勢力が一堂に会する世界会議。
その会場は、空に浮かぶ都市国家「オルディナ」。空中に浮かぶ巨大な石造都市だ。
ミカとアークが降り立つと、眼下には雲海。
周囲には各国の使節団と兵士たちの姿。重厚な緊張感が空気を震わせていた。
「……息が詰まりそう」
ミカが呟くと、隣でアークが静かに言う。
「これは、戦争よりも“危険”な戦場だ。油断すれば、言葉一つで国が崩れる」
会議場の大理石の円卓には、各国を代表する者たちが着座していく。
人間連合代表:王国評議会の宰相・グランセル=ヴォルフ
獣人族代表:グランフォル王国の女王・レオネーラ
エルフ代表:森の賢者・エルリナ
ドワーフ代表:技術長老・ドゥラッグ
魔族代表:魔王アークとその秘書・ミカ
司会を務めるのは、中立国オルディナの元首・カーディナル卿。
「――本日、我々は世界の未来を定める議を始める。全代表、準備はよろしいか?」
沈黙の中、それぞれが頷いた。
会議が始まるや否や、激しい言葉の応酬が飛び交った。
「魔族に与えられた土地の拡張は、明らかな脅威だ!」
人間側の代表グランセルが声を荒げる。
「我々は攻め入ったのではなく、奪われた土地を取り戻しただけだ」
アークが冷静に反論する。
その一方で、獣人族やドワーフは中立の立場を保ちつつ、資源や技術の分配に焦点を当てていた。
「我らとしては、戦争回避と交易の再開が最優先だ。双方歩み寄る余地を探るべきだ」
「……だが、背後に“神の影”があるなら話は別だ」
エルフの賢者エルリナが、重く静かに告げた。
会議が進む中、ミカは違和感を覚え始める。
(何かが……変だ)
――誰かが、この会議の結果を“仕組んでいる”。
密かに持ち込まれた爆破物。偽情報の拡散。
そして、特定の代表を狙った暗殺未遂。
影で動いているのは、神の名を騙る秘密結社『ヴァルト教団』――
ミカとアークが探っていた“真の敵”の姿が、ゆっくりと輪郭を帯びていく。
会議は大詰めを迎え、各国が同盟条約案に署名を始める。
だが、その時――
ドンッ!
爆発音が響き、会議場に悲鳴が広がる。
「な、何が起きた!?」
「代表の一人が……刺された!?」
騒然とする中、ミカは叫んだ。
「誰も動かないで! これは“仕組まれた陰謀”よ!」
混乱の中、ミカはついにその手に「鍵剣」を構える。
「正義を語るなら、まずこの場を守ってみせて! それができなければ、世界を変えるなんて“おこがましい”!」




