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53話 “神の使い”と禁忌の戦い

― 対話か、闘争か――

― 世界のルールを覆す覚悟が問われる


夜空を赤黒く染めて、禍々しい光の柱が魔王城上空に現れた。


「報告します! 空間から“神の使い”を名乗る存在が……!」


伝令の魔族兵の声が震えている。ミカはアークを見た。


「来ましたね。“真実に触れし者への裁き”――言葉どおりに現れました」


「ああ……だが予想よりも早かった。やはり、奴らは常に世界の動向を監視していたらしい」


アークは立ち上がり、黒い外套を翻して玉座を離れる。


「行くぞ。俺たちは対話を望んだが、奴らがそれを否定するなら――応えるまでだ」


城門の上、空を見上げると、そこには神々しさと不気味さを合わせ持つ異形が浮かんでいた。

人型のシルエットに六枚の光の翼。顔は仮面に覆われ、声だけが響いてくる。


『契約は破られた。魔族よ、再びその力を封印せねばならぬ。』


「封印? 契約? そもそもその契約が、種族を縛り、対話を拒んだ元凶だ!」


ミカが叫ぶ。


『真実は混乱を生む。“均衡”こそが神の恩寵。』


「“均衡”の名のもとに、憎しみを育ててきたのはお前たちだろう!」

アークが冷たく言い放つ。


『ならば選べ。“対話”か“裁き”か』


一瞬の沈黙の後、アークは言った。


「選ぶのは我らだ。ならば俺は――“対話のために戦う”!」


その言葉とともに、アークの周囲に漆黒の魔力が立ち上る。

ミカも覚悟を決め、印章の杖を手に取った。


「私はあなたの秘書。そして、あなたとこの世界の意思を信じる者です――行きましょう!」


神の使いの翼が広がる。

その光の剣が振り下ろされるよりも早く、アークの影の槍が天空を穿った。


激しい魔法の衝突の中、ミカが叫ぶ。


「聞いてください! 私たちは神々を否定するのではない! ただ――対話の“場”を奪わないでほしい!」


光が揺れる。神の使いの動きが、一瞬止まる。


『……意志、か。』


その仮面の奥で、何かが揺れたように思えた。


『ならば試練を越えて示せ。“対話の価値”を――』


そして、神の使いは一度引いた。


戦いは小休止に終わった。


ミカは、傷ついたアークの腕に包帯を巻きながら、静かに尋ねた。


「アーク様……あなたは“神”とどう向き合うつもりですか?」


「恐れない。だが敵と決めつけもしない。“神”もまた、どこかで誤ったのだ」


「その過ちを正すには――」


「俺たちが、証明するしかない。“異種族の対話”と“共存の可能性”をな」


ミカはその言葉に深く頷いた。


こうして――世界の根底にある“神の秩序”に、最初の風穴が開いた。

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