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49話  封印起動と迫り来る戦争 ―魔族と人間の未来は―

聖域、起動夜。月が黒雲に覆われ、世界は不吉な沈黙に包まれていた。


「……起動した、な」


人間王国の禁術研究所。結界の奥で、巨大な魔法陣が紫に輝く。


「“封印の核”が目覚めた。あとは魔王の魔力を直接ぶつけるだけで、自壊を始める……」


「そうなれば、魔族の力は暴走し、制御不能となる。――あの“秘書”とやらの策も、無意味になるだろう」


老術師たちが不気味に笑った。


魔王城・作戦司令室。


「“聖域の鍵”が起動したとの報が……!」


緊急報告を受け、アークは静かに拳を握った。


「奴ら……ついに実行したか。目的は、俺の暴走を誘うこと。そして、世界に“魔王の脅威”を再認識させること」


「ですが……そんな中途半端な情報で、国際世論が動くのですか?」


ミカの問いに、カインが口を開いた。


「動くさ。人間側には、“恐怖”を煽る術士が山ほどいる。連中は“嘘”を真実に変えるのが得意だ」


「……なら、こちらも“真実”を武器にするしかないわね」


「実は、以前にラシェリルさんから古代文献の写しを受け取っていました」


ミカが机の上に広げたのは、かすれた羊皮紙だった。


「これは、“封印の核”がただの抑制装置ではなく、“選別装置”であることを示す文書です。強大な魔力を持つ存在に“暴走するレッテル”を貼り、自動で攻撃対象と見なすのです」


「つまり……俺がそばに近づけば、装置が反応し、俺の力を“敵”と認識する……!」


アークが驚く。


「でも、逆に言えば、その“認識”を書き換えることができれば……起動を止められる可能性がある」


「どうやって?」


「……私が行きます。“秘書”の名のもとに、情報と交渉のすべてを、現場で指揮します」


――夜明け前。旧世界図書館跡地の封印核。


「動いてるわね……やっぱり、ここにいた」


ミカはフードを深くかぶり、音もなく結界を通過した。


結界内部では、魔力の奔流が激しくうねっていた。中心にある水晶球が、まるで生き物のように脈動している。


「……あなたが、“魔族の脅威”とされた存在ね」


ミカは囁きながら、懐から羊皮紙と銀色の指輪を取り出した。


「このリングは、アーク様の魔力波形を逆転させた“識別装置”。あなたに“敵ではない”と認識させられる……!」


しかしその瞬間、背後から気配が走る。


「そこまでだ、秘書殿」


「……オルトラン!」


「君をここで止めるよう命じられている。君の手が成功すれば、人間王国は“魔王に騙された”と見なされるからな」


「じゃあ、本当にあなたたちは“戦争”を選ぶのね?」


ミカが睨むと、オルトランはため息をついた。


「私個人は、君に敬意を持っている。だが……国家の命令に背けば、私の一族が粛清される」


「あなたは、自分の正義よりも“恐怖”を選んだのね。――それなら、私は“希望”で戦う」


ミカは指輪を水晶球へと押し当てた。


次の瞬間――


眩い閃光とともに、水晶球の脈動が止まった。


――封印装置、沈黙。


「馬鹿な……止まった……?」


「“対話”を拒否する装置は、“人”の手で無効にできる。だって、それを作ったのも、人なんだから」


ミカの言葉に、オルトランは剣を下ろし、ただ静かに立ち尽くした。

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