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47話 暗躍する人間王国と“聖域の鍵”


「“制裁案”……というのは、具体的に?」


アークの声が議場に響く。その低く抑えた声は、静かなる怒りを含んでいた。


人間王国の宰相オルトランが、仮面のような微笑を浮かべて応じた。


「単なる保険です。“万が一”魔族の力が暴走したとき、他国が一致して抑えるという連携の証明として」


「そういった“前提”を設定すること自体、敵意の表明と取られても仕方ありませんな」


エルフの賢者ラシェリルが冷ややかに言った。


「私たちは、この会議を“信頼”の場とするために来たのですよ」


「信頼? は。魔王がそれを口にする日が来るとはな」


勇者カインがぼそりと呟く。


その夜、ミカは魔王陣営の宿舎で資料の整理をしていた。

そこに、黒いフードを被ったエルフの使者が忍び込むように現れた。


「あなたが……秘書のミカか」


「……はい? ど、どうして私の名前を?」


「時間がない。これを」


そう言って手渡されたのは、一枚の羊皮紙。そこにはこう記されていた。


“聖域の鍵”を狙っている者がいる。狙いは、魔王の失墜と“封印の再稼働”。

仕掛け人は人間王国、そして勇者カインの背後にいる黒幕。


「まさか……カインが関係している!?」


ミカの目が見開かれる。


「真相を知りたければ、“旧世界図書館”の禁書室へ行け。今夜中にな」


夜のセリオン。

アークとミカは、静かに旧世界図書館へと忍び込んだ。


館内の奥深く、結界を解除してたどり着いた禁書室。

そこにあったのは――一冊の、古ぼけた魔導書。


「“大崩壊の記録”……?」


ミカが手に取り、ページをめくる。


そこには、過去に封印された強大な魔族たちと、それを封じた“聖域の鍵”の情報が記されていた。


「この封印が解かれれば、世界は再び戦火に包まれる……まさか、会議を利用してこれを?」


「狙いは、“魔王アークによる暴走”を演出し、封印を解放する口実を作ることか……!」


アークの顔に怒りが浮かぶ。


図書館を出ようとしたそのとき、ミカたちの前に立ちはだかったのは――


「……やっぱり来てたか」


勇者カインだった。


「あなた……まさか、“知ってた”の?」


「……全部、じゃない」


カインがゆっくりと剣を鞘から抜いた。


「オルトランは“魔王を陥れる策”を進めていた。俺は、それを止めるためにあえて側についた」


「だったら、なぜ黙ってたの!」


「動けばすぐ潰される。俺は……俺の正義のために、泳がされてたんだよ」


「カイン……」


ミカの目に、揺れる感情が浮かぶ。


「今、俺は迷ってる。あんたらが本当に“共存”を望んでるのか。それとも、また裏切るのか……」


アークは静かに剣を抜かずに言った。


「君の剣を抜かせたのは我々か? それとも、世界の“恐怖”と“常識”か?」


「……くそっ、答えなんて簡単には出せねぇよ!」


カインはそう叫んで踵を返し、夜の街へと姿を消した。


アークとミカは、再び宿舎へと戻った。

窓の外、セリオンの星々が瞬いている。


「ミカ。決戦の時が近い」

「はい。……でも、逃げません。私たちは、真実を握っています」


「そして、誰よりも“覚悟”を持っている」


二人は静かに頷き合った。


――“聖域の鍵”の秘密。

――人間王国の黒幕。

――そして、魔族と人間の未来。


それらすべてを賭けて、最終決戦へと歩みを進めるのだった。

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