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42話 伝説と神話、そして失われた記憶

「……“鍵”が示す場所、それは神代の神殿だ」


アークの言葉に導かれ、ミカたちは東の果てにある《星読みの谷》を目指していた。


そこは、かつて神々と人々が交流していたとされる聖地――

だが、今では荒れ果て、禁足地とされていた。


「緊張してる?」


ミカにそう尋ねたのは、アークではなく――護衛として同行していた参謀ベルフェ。


「神の巫女は、未来を見る力を持つ。お前の“記憶”を見通すかもな」


「……記憶?」


ミカはその言葉に、心の奥底でざわめく“違和感”を感じていた。


谷に佇む白亜の神殿に到着すると、すでに彼女が待っていた。


「来ましたね。魔王アーク、そして秘書ミカ」


そこに立っていたのは、透き通るような銀髪をなびかせた少女――

神の巫女、ユシリカ。


「あなたには、まだ“思い出していない記憶”がある」


「えっ……?」


ユシリカはミカを見つめ、静かに言葉を紡いだ。


「あなたは、“この世界に来る前”……

いや、“この世界で生まれる前”に、選ばれていた存在なのです」


神殿奥の祭壇にて、ユシリカは神話の巻物を開いた。


『世界が創られる前、神は三つの“心”を造った。

一つは秩序、一つは混沌、そして最後は“調停”の心――』


「……その“調停の心”が転生を繰り返し、時代ごとに世界を調える者となった。

あなたはその系譜、“ミカリスの魂”を持つ者です」


「……ミカリス?」


その響きに、ミカの胸がどくんと高鳴った。


「それって、まさか――」


「はい。あなたは何度も、この世界に来ては“中立者”として世界の争いを止めてきた。

……そして今、再びその“時”が巡ってきたのです」


ミカは言葉を失っていた。


自分はただの転生者ではなかった。

世界の均衡を保つ“鍵”――運命を左右する魂の継承者だったのだ。


「……ねえ、アーク。もし私が、“調停者”としてこの世界の在り方を選ばなきゃならないとしたら……

あなたを“止める”可能性もあるの?」


その言葉に、アークはわずかに目を伏せ――微笑んだ。


「それでもいい。お前が選ぶなら、それが俺の“望んだ未来”だ」


「……アーク」


二人の間に沈黙が落ちる。だがその沈黙は、重苦しいものではなく――

お互いの“本気”を知った者同士の、確かな信頼の静けさだった。


その瞬間――神殿が揺れた。


「魔力の乱れ!? 誰かが結界を破っている!」


ベルフェが叫ぶ。外では魔力の嵐が巻き起こり、黒い影が迫っていた。


「来ましたか……“破滅の従者”たちが」


ユシリカが静かに言い放つ。


「急いで、ミカ。この“神の鍵”を、あなたに――!」


手渡されたのは、蒼く光る結晶。


「これは……?」


「記憶と意志を繋ぐもの。あなたの魂と共鳴し、世界の運命を開く鍵となる」


ミカはそれを受け取ると、胸に抱きしめた。


「わかった……この世界の未来を、わたしが見届ける」

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