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163話 “政”と“家”の狭間で

大理石の広間には、各国家の使節や国内重職が集っている。ミカは王妃服をまとい、公儀に臨む。


宰相カイン(静かに)

「さて、この度の交易協定案に関し、王妃殿下のご見解をお聞かせ願いたく存じます」


ミカは書類を取り上げ、目を通す。


ミカ

「この案は国家にとって経済的に利益がありますが、民衆にとって過重な税負担になる恐れがあります。特に農民層と市民層の間に倫理的な不均衡が起こりかねません」


場内に小さなざわめきが走り、宰相が頷いた。ミカは続ける。


ミカ

「そのため、交易にかかる税の一部を“文化交流基金”として積み立て、民間レベルの教育・医療インフラに還元する制度が必要です」


重職エリオット(感心して)

「王妃殿下のお言葉にはいつも深い洞察がありますな」




政務室を出ると、廊下越しに子どもたちの笑い声が響く。心地よい温もりがミカの胸を満たした。


ルシア(無邪気に)

「母上!午後に剣術の稽古、一緒にお願いします!」


アレイド(理性的に)

「母さん、今日の提案書、手伝ってほしい箇所があるんです」


アリア(全力で駆け寄って)

「母さん、風船作って!」


ミカは目尻を下げ、小さく息をつく。


ミカ

「わかりました。今日はちょっとダッシュで行かないと!」




午後は隣国王妃たちとの交流庭園。だがそこでも、議題は外交問題と文化交流に及ぶ。


ミカ(柔らかに)

「互いの文化祭を交互開催し、民間交流を深めることが貴国にとっても有意義と存じます」


他国王妃から賞賛と共感が寄せられる中、ミカは新たな案を口にする。


ミカ

「さらに子どもたちの交流プログラムを設け、“未来世代の外交官”となる土台を育みませんか?」


王妃たちは嬉しげに笑い、庭の花々以上に温かな空気が流れる。




夜、執務を終えたミカは父子部屋の前で立ち止まる。扉の隙間から聞こえる寝息が安心を呼び起こす。


アークがそっと背後から声をかける。


アーク

「お疲れさま、ミカ」


ミカはふっと振り返る。


ミカ

「今夜は政務も外交も、心配な点が多くて……。でも、子らの寝顔を見たら、全てが報われた気がします」


アーク(優しく手を重ね)

「君が“家”を守っているから、俺たちにも力が湧く。政務の重圧も、一緒なら乗り越えられる」


ミカは瞳を濡らし、小さく笑う。




深夜、書斎に戻ったミカは、重ねた書類の上に手を置く。


ミカ(静かに)

「政務と家族。どちらにも手を抜けない。でも、どちらも放棄できない」


ふと、アークの言葉を思い出す。


“君が“家”を守っているから、俺たちにも力が湧く”


ミカはゆっくりと立ち上がり、窓の外に視線を移した。


ミカ

「母として、王妃として、秘書として――私は、誰よりもしなやかに強く、人々を繋いでいく。家族と王国を守る、その模範を見せていこう」


夜風に乗せて、静かな誓いが書斎に響いた。




政務と家族の狭間を行き来しながら、ミカは確かな存在となった。

どちらかを選べば重荷となる運命でも、

“選ばず並べて背負う”――それが、彼女の揺らがぬ意志であり、

弾力ある王妃であり母である証であったのです。

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