駆け引きはもう始まっている
もう、ポテチ食べてる状況じゃなくなった。
あれから何度も跳んだら跳ねたりして飛んでみたのだが、マジで飛べた。だが、体力すぐ減るし、あんまりコスパいい物じゃなさそう。
とりあえず部屋に戻ったら連絡して…あ、そういえば相談できる相手なんていなかった。
「こういうとき、乙女ゲームなら相談役みたいなキャラいるんだけど。」
って何言ってるんだ。乙女ゲームというフィクションをリアルに持ち込んではいけない。現実はそう上手くできてない。それは自分が一番わかっていること。
「何かお困りごとですか?」
「…は?」
今まで誰もいなかったのに。目の前に端正な顔立ちの青年がいた。どこかの貴族風な格好に青いストレートの髪。そう、モノクロに出てくる《アリス》のようで。
「って、アリスそのままじゃん!」
「おや、私のことを知っていて?」
「…え、これは現実…?やっぱり夢??」
「現実ですよ」
「夢みたいなやつにそんなこと言われて信じれるわけない。」
「あら、そうですか?」
《アリス》。モノクロの序盤で出てくる主人公の相談役。これが重要なキーになる。
もしも、もしもだよ!?このゲームがリアルになってるなら私の死亡フラグは立ちまくりだ。
あ、そもそもまだモノクロってどんなゲームか言ってなかったか。
…この乙女ゲーム、
《恋愛》×《異能》×《デスゲーム》
なのだ。
いや、要素詰め込みすぎ。デスゲームって言ってる時点で死ぬわ。
「戸惑っているところ悪いのですが、実は貴方には私達のゲームに…」
「スキップ。」
「はい?」
「アリスと一緒に他の契約者に勝利して能力奪うのが目的でしょ。で、アリスが…あ、いや、ネタバレはダメか。」
私、こういうのはちゃんとしているタイプである。
「…!なぜ…。ええ、大体あっています。しかしどうしてお分かりに?私のことも知っていたようですし。」
「さー何でだろーねー。」
「私のマスターは何とも面白い方ですね。改めまして、私はアリスと申します。マスターのお名前をお伺いしても?」
「…」
このゲーム、キャラ的には本当に退屈だったが、戦略、駆け引きという部分だけは本当によくできていた。何せこの私が"24回"も選択肢に失敗したのだから。
__そして、もうこの時からゲームは始まっている。
最初の攻略者は、お前だ。《アリス》。
『"日比谷 棗".だよ、よろしくアリス。』
私はモノクロでいうデフォルトの名前を使った。