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9 暗殺依頼1とおじさん

 ドアを開けるといきなり矢が飛んできて、廊下に刺さった。


 私は頭を瞬時に逸らしたから良かったもののしなければ、脳天一発だっただろう。


「びっくりしたぁぁ!」

「ん?その声女の子か」


 そんな声が聞こえ、顔をその声の方へ向けるとそのには依頼書に書かれていたような顔の人が部屋のど真ん中に弓を構えて立っていた。

 髭、愛想、メガネ全て依頼書通りの顔なのだが、一つ違う点があった。

 それは彼の右目が赤く光っていたことだった。


「それがどうかしたの?」

「ほんとに女の子か……。君は何歳だ?」

「12歳くらいだと思う?」


 歳で言うと、一万歳は超えているのだが、そんなことを言っても理解はできないので見た目に一番近い歳を言った。

 すると、そのおじさんは弓を下ろすと、ゆっくりと私に近づいてくる。

 そして、私が何をするのかと身構えると、手を差し出してきた。


「なんで疑問系なのかはわからないが、そのような年で暗殺業とはいかがわしいものだ。どうだ?私の元で働かないか?」

「そういって奴隷にするつもり?」

「ちがうな。私は優秀な奴を他の奴の手に渡すような趣味は持ち合わせていない」


 おっさんの顔を見つめると、右目を赤く光らせながらも真剣な眼差しをこっちをみてくる。

 私は少し考えたあと、

「そうなんだ、でも残念だけど嫌かな?」

 と答えた。


「どうしてだ?」

「他にやりたいことがたくさんあるから」


 ここで働いたら、奴隷商会だから色々な種族に出会えるかもしれないと思ったが、それに頼ってしまうと面白くない。

 それなら、汚れ仕事でも冒険でもしながら仲間を探していく方が楽しいだろうし、長続きするだろう。


「それが暗殺とでもいうのかね?」

「違うよ、今は仲間探し兼お金稼ぎみたいなものかな?」


 おじさんは赤い目で睨みつけて、そう聞いてきたのに対し、私は平然とした様子でそう返した。


「そうか、ということは私を殺しにきたということかね」

「それが意外に何があると思ったの?」

「確かにそうだ!」


 フハハハハと笑い声を上げると、後ろを向いて歩き出した。


「で、私の手下たちはどうだった?」

「数だけで連携も取れていなかったし、一人一人もすごく弱かったかな?」

「どうしてそんな奴に見張させたと思う」

「強くて頭のいい冒険者ならこんないつ殺されてもおかしくないようなことに協力しないからじゃないかな?」

「確かにそれもある。でも、違う。本当の意味は私が強いからだ。ただ、見張りの奴らには私が戦う準備ができるまでの時間稼ぎになってくれたらいい」


 そういって、おじさんが振り向くとそこには立派な剣が握られていた。

 その剣はずっと使っていたのか少しボロくなっていて、最近は使っていなかったことがわかる。


「なんか人をものとして扱っているような発言だね」

「実際そうだ。盗人として生きていた奴らを雇って衣食住まで提供している。逆に感謝して欲しいくらいだと思うがね」

「それはそうだね」


 盗人として生きていたのであれば、いつ捕まっていもおかしくなかっただろう。

 さらにここは日本ではない。

 ラノベでは盗みでも酷い刑罰を受けているイメージだ。

 それを救い出して、衣食住を保障されている、さらに仲良く話せる仲間がいるのであれば、かなり待遇は良い方だろう。


「わかってくれるとは嬉しいものだ。君となら仲良くなれたと思うのだが、残念だ。今から殺さなくてはならないとは」


 そういって鞘から剣を取り出すと、鞘のボロさとは裏腹にその剣は綺麗だった。

 おじさんの目の光で剣が赤く光りそれが怪しく部屋を灯す。


「残念だけど、私はおじさんには興味がないし、今から殺されるのはおじさんだよ」

「それは戦えばすぐにわかることだ。机も椅子も君が戦っている間に片付けておいたよ。さぁ、この部屋で存分に戦おうではないか」

「いいよ」


 部屋は他の部屋より広い上に周りには机、椅子などの邪魔になるものがない。

 これは楽しい戦いができそうだ。

 おじさんは剣を私は短剣2本を手に取り構える。

 数秒間見つめあった末、「いくぞ!」という掛け声とともに最初に動いたのはおじさんの方だった。



 おじさんは剣を素早いスピードで私に向かって振り下ろした。

 それを私はバックステップで避ける。

 そして、私は右から攻撃しようと地を蹴ると、燕返しのように反転させた剣が私を斜め下から襲ってきた。


「危ない!」


 私は急いでしゃがんで攻撃を避け、剣を繰り出すとおじさんも華麗に避けた。

 私はおじさんに繰り返し攻撃しようとしたが、おじさんな肩が振りえているのがわかり、足を止めた。


「その歳でここまで才能があるのであれば、冒険者としてもかなり金を稼げたはずだ。そして、一緒に冒険する仲間を見つけるのも簡単だ。なのにどうして暗殺者なんかになった!!!」


 おじさんは最初は驚いたような顔をしたが、その顔はどんどん赤くなっていき、剣を下ろしてそう怒鳴った。

 その様子からは真剣な様子が読み取れた。


「それは私は冒険者になる時は誰かと一緒に登録するのが夢だもん。それに私は無知だから、色々教えてくれる仲間がいた方が楽しいじゃん!」

「それでも!」

「それに子供の夢を奪っているおじさんに自分の生き方をどうこう言われる筋合いはないと思うけど?」

「それはそうだな。すまなかった、もう一度仕切り直そう」


 私の言葉で頭が冷えたのか、さっきまで赤くなっていた顔は冷静な表情に戻っていた。


 もう一度、お互いに剣を構えた。


「いくよ!」

 その掛け声と共に今度は私から攻撃を仕かけた。

 しかし、私はすぐには攻撃をせずにに自分の素早さを使って、相手の周りをぐるぐると回った。


 おじさんは私の早さについてこれないためか目を細めて、必死で私の早さに追いつこうと顔を振っている。


 その様子を見て、私は右から攻撃を仕掛けたが、その短剣による攻撃はいとも容易く剣によって防がれてしまった。


 しかし、私は落ち着いてまたおじさんの周りをぐるぐると回った。

 そして、今度は左から攻撃を仕掛けると若干おじさんの反応が遅れ、ついに首に切り傷がついた。


「やったー!」


 というと、おじさんの顔は痛みからか少し歪んだ。


「おじさんってもしかしておじさんの右から攻撃するのなれてない?」

「そんなことはない、少し油断しただけだ」

「バトルには油断禁物だよ」

「そうだな」


 私は再び足を止めた。

 今ので暫定だが右からの攻撃がなれていないみたいだ。

 それなら、私の今の能力ではそこをつくしかない。


 そして、私はおじさんの右半身をひたすらと攻撃し続けた。

 おじさんもそれをうまく体を動かしながら、避けたり弾き返したりするが、確実に傷は増えて行っていた。


 時々、左半身へのフェイントも入れたしたが、それは全て塞がれてしまった。

 その戦いの中で私は一つ気になることがあった。


 しかし、それは気にしないようにして攻撃を続ける。

 だんだんおじさんの顔が焦りからか歪んでいくのがわかるが、私はこの世界で初めてのちゃんとした戦いに心を躍らせていた。


「ふふふ、楽しい!楽しいよおじさん!」

「そうか、おじさんの方はかなり疲れてきたのだが」

「まだまだこれからだよ!」


 私は少しスピードを上げたが、おじさんもなんとかこの攻撃に対応してきた。

 しかし、傷や疲れからか段々動きは鈍くなっていた。


 そして、この戦いの終わりは急に訪れた。


 おじさんもなんとか対応してきたとはいえ、私の方が優勢であった。おじさんはだんだんと窓際へと追い詰められて行った。


 それでも私は手を緩めることはない。


 ついにおじさんの背中が壁につき、それに気を取られ防御に隙ができた。


「これで終わりだよ!」

 私はそこで心臓を目掛けて短剣を差し出た。


 しかし、その短剣がおじさんに届く前におじさんはポケットに手を入れて、ナイフを私に向かって投げつけた。

 その攻撃はあまりにも自然で素早く私は咄嗟に対処できず、腕に傷を負った上にバランスを崩してしまった。


「っ!」


 相手はその隙を見逃すようなおじさんではない。

 そのまま剣を両手で持ち直し、私に向かって振り下ろした。


 それをなんとか短剣をクロスさせ受け止めたもののおじさんは私より力がある上におじさんに上を取られている状態になってしまった。

 このままでは力で押し切られてしまうと思った時だった。


 おじさんは窓の外へと目をやった。

 そして、その瞬間おじさんの力が弱くなったのだ。


 私はすぐさま短剣をずらして、おじさんのバランスが前に崩れたと同時に腹に二つの切り込みを入れた。

 切った後から綺麗な鮮血が飛び散り、おじさんは膝をついた。


「ははははは、まさか本当に負けるとは思っていなかったよ」


 傷口を押さえ、痛みで表情を歪ませながらも笑いながらそう言った。

 しかし、私はその勝利を素直に喜ぶことができなかった。


「どうした?私に勝ったのだから、君なら喜ぶと思っていたのだが?」

 私の目を見ながらいってくるおじさんに私は赤い光が消えた右目を見つめながら

「だって、おじさん右目見えてなかったでしょ」

 といったのだった。

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