外伝小話 -舞踏会編-
舞踏会半ばまで読み進めてから、読んで下さい。
遠くの会場から歓声が聞こえる。勝敗が決まったのだろう。次は自分の番だ。一段と身体が強張るのが分かる。心臓が壊れているのではないかと思うほどに鼓動が早い。腕の震えは受付した時から止まらないし、手は汗でじっとりしている。大丈夫、普段通りに動けば負けるはずは無いんだ。この日のために出来ることは全てやった。負けるなんてあり得ない───。自分に言い聞かせるものの、緊張は全く解れない。そんな自分を嘲笑うかのように、目の前の対戦相手は微笑んでいる。壊れそうな程華奢で───何より美しい見た目をしていた。黒い髪が煌めいている。こんな場所には不釣り合いで、間違いでは無いかと思う程だが───相手の様子を見て分かる通り自身があるのだろう。大体この武闘会に弱者がいるはずないのだ。いや、弱気ではダメだ。私は勝たねばならない。優勝し大金を得て、妹に薬を買わなければならないのだから。絶対に負けられない───。
試合開始の鐘が鳴り響く。私は素早くチャックを下げる。途端、呼応するようにtinが飛び出す。相手を見ると───何故か全裸であった。いつの間に服を脱いだのだ、という疑問はすぐに消し飛んだ。なんと美しいtinなのだろう。太さも太すぎず、長さも体格に合っている。反りも文句のつけようが無い。身体とtinの比率が完璧だ。太陽の下で全身がまばゆく輝き神々しささえある。見た目では勝てない。
「クッ」
地面を蹴りあげ相手へ攻撃を仕掛ける。極限まで極めた私の突きは音速を超えており、見破れたものはいない。
相手のtinにもう少しで触れる───その時であった、今まで感じたことのない違和感。咄嗟に相手と距離を取る。恐る恐る下を見ると、ソコには輝きを失ったtinがいた。こんな姿見たことが無い。
「ど、どうしたんだ!一体何故!」
「そんなの決まってるじゃない」
「貴方のtinがボクのtinに負けた」
「それだけだよ」
「嘘だ!これから戦いが───」
「まだ分からないの?」
「元々見た目の優劣がほとんど無い場合のみ、戦いによって勝敗を決める───こんな初歩的な事知らない訳じゃないよね」
「キミは負けたんだよ」
「そっそんなはずは…!」
「…まあ口で何を言おうとtinは正直だよね」
「クソッ、勃てっ勃てよっ…!」
無情にも、試合終了の声が会場に響き渡った───。