-目覚め-
何でも許せる人向けです。内容的に一応R15にしときました。小説初めてで、こちらのサイトも初めて利用するので至らないことあると思います。3人の合作ですのでその違いも楽しんで頂けたら。ちなみに更新遅め、できたら完結したいです。よろしくお願いいたします。
いつもどおりの1日が始まる、そのはずであった。朝6時に携帯のけたたましい目覚ましで起き、寝ぼけ眼で冷蔵庫から取り出した美味くもないコーヒーを一気飲みする。そうして目が覚めたら支度をして出勤。スーツだって新入社員の時から使用しヨレている。特別変わった事など無い。
職場までは片道1時間。東京メトロからJRへ乗り換え一回で通うことができる。特別不便ではなく、かといって便利というにはあまりにも微妙な距離。電車へ乗っている間、普段は自宅から適当に持ち出した文庫を読むか、ひたすら頭の中で連想ゲームを展開するかの二択だが、その日は違った。
果たして、何処から変わったのか?違和感は、一体いつから始まっていたのか?気が付いた時には、いままで自分を取り囲んでいた《セカイ》とは─────《日常》とは、切り離されてしまっていた
✳︎✳︎✳︎
電車の中途半端に堅い椅子に座っていたはずなのに、いつの間にかじっとりと湿った苔の上に座っている。目の前には中世のヨーロッパにあるような鎧を着た180センチはあるだろうか、女性がいた。こちらに剣先を向けている。俺は咄嗟に鞄の中のスタンガンに手を伸ばし電圧を最大にした。不審者対策にいつも鞄に入れていたのが、こんなところで役立つとは。
このままこれを、相手の鎧の隙間に差し込めば、最大出力で炸裂した電撃に相手はひとたまりもないだろう。…が、女は俺に向かって威嚇で剣を突きつけているだけであり、直接的な被害がまだない状況で先に手を出せば、出るところに出た時不利になるのは俺の方か、などと考えていたのが命とりだった。
彼女は、俺がそう考えていたその隙を狙い、本気で───俺に殺意を向け、剣を振りかざしてきたのである。
(なっ…………嘘だろ!?)
俺はしがないサラリーマンだ。今までずっと、地味に生きてきた。
(戦えるわけなんかない…っ!)
すんでのところで、何とか避ける事は出来た。──が、俺を狙って振り下ろされた剣は、俺の服を────引き裂いてしまった。
「…っ、お前……………………………っ双成りか!?」
「ふ、ふたなり…?」
何を言っているのか、よくわからない。ふたなり?俺の問いに答える事なく女は話続けた。
「太さ、長さ、形。中々良い物を持っている。生半可な奴だったら勝てただろうな」
「だが、私には程遠い」
そう言うが早いか、女は自分の鎧の留め具を外し、いきなり下半身を露出させた。
(…‼︎この女、痴女か⁉︎いかれてやがる。)
咄嗟に目をそらそうとしたが、俺の目の端は、女のそれを捉えてしまった。
「…………………?俺と、同じ…?」
「女」と思っていた───目の前にそびえ立っている(ついでに何故かアソコも屹立している)そいつは───俺の上に、徐に跨ってきた。
それにしても、《ふたなり》とは?俺が今まで生きてきた《セカイ》では、聞いたことがない。こんな状況も、経験したことがない───
「もしや、初陣か?」
「初陣も何も、ふたなりってなんだよ!ここは何処なんだよ!」
「なんだ、迷い子か。教えてやろう、ここは《haitin》。女と双成りが住む国だ。ここでは《tin》が大きく、形など見目が素晴らしいモノが勝利し相手を自由にする事ができる。」
なるほど確かに自然界では、ある種の生物は、角の大きさや体格差、身体の色の鮮やかさ等、その見た目で戦わずして勝敗を決するという。互いに傷つけ合う事なく勝者と敗者を決めるその方法はとても効率的な自然の生んだ知恵なのであろう。だが、それは《その生物達全体がそういう性質を持っていること》を前提とするのであって、《絶対的少数派のみが有する身体的特徴》はそのルールには該当しないはずである。つまり、俺のいた《セカイ》で、俺は異端だったのである。
話は遡るが、俺は孤児院育ちで、幼い頃から独りだった。迷惑をかけぬよう、目立たず、波風をたてないように。そうして地味に生きていたら、友人すらも出来ずじまいで、気が付いた時には───...誰も、居なかった。例えば、一緒に風呂で背中を流し合えるような────、そんな、裸の付き合いが出来る奴なんか、ただの1人も居なかった。
そして、敢えて言わなくても分かると思うが、俺は───────………童貞だった。
だから俺は、俺が異端であることに、全く気が付かなかったのだ。
「この世界こそ、俺がいるべき世界…」
「戦う気が無いと言うのは分かった。剣を向けて悪かったな」
そう言うと女、いや双成りは剣を鞘に収めこちらに背を向けて歩き出した。
「待ってくれ!俺も連れてってくれ!」
考えるよりも言葉が先に出た。
「私についてくると言うのは、戦士になるという事だがいいのか」
「構わない、ここが俺の世界なんだ!」
その日から、血の滲むような《tin》トレーニングが始まった。
✳︎
「こ、この滝に入れるのですか!?」
「滝ごときで《tin》が萎えるようならもう終いだ、帰れ」
「待ってください!や、ヤってみせます!」
「ウワアアアアッ!!!」
「熊相手にどうすれば!?」
「お前の《tin》は人間にしか通用しないのか?」
「全ての理に通じてこそ真の強さと言える」
「その程度か?」
「ヤってみせます!シャアアア!」
「岩…ですか…?」
「何をすべきか、お前は既にわかっているのだろう…?」
✳︎
──5年後。
「強くなったな。成男。もうお前に教えることはない。」
そういうと女──、いや師匠は懐から一通の封筒を取り出した。
「師匠?これは…………?」
妙に華やかな封筒である。きめ細やかな薄い雁皮紙の下から、凛と咲いた菊の花がふんわりと透けて見えている。
「お前宛に、城からの招待状だ」
「俺に……城から…………?一体何の……………」
「いいから開けてみろ」
恐る恐る封筒を開けていく。そこに書かれていたのは──────
「師匠…………っこれは………………っ」
「お前にも、ついに〈その時〉がきたようだな。─────《tin》武闘会の始まりだ。」
《tin》武闘会とは、4年に1度行われる唯一の公式戦である。優勝すると地位や報酬は勿論、その国を代表する戦士として認められる事となる。
「俺が…ついに…」
「私が教えたんだ、自信を持て」
「は、はい!師匠……っ、今まで、ありがとうございましたっ!」
「師匠の名に恥じぬ成果を出してきます!」
成男はそう叫ぶや否や部屋を飛び出した。
しばらくして、先ほどの騒がしさは嘘のように───静かになった部屋を、懐かしむような声で────双成り、真の名を〈里津〉という───は、誰も聞きとれないほど、優しく穏やかな声で呟いた。
「ふ、今回の武闘会は久しぶりに楽しいものとなりそうだ。」
里津の顔とtinは自然と綻んでいた。
tin戦士の朝は早い──
成男はいつものように朝日が昇る前に、簡単なストレッチから筋肉トレーニングを始めた。師匠は時に信じられないほど過酷な修行を成男に課したが、それと同じくらい日々のトレーニングの大切さを説いた。
大切なのは反復することである。肉体作りとレベルに応じた修行、その両方のバランスこそ、強くなるために必要な工程なのだ。
しかし、日々のトレーニングを軽んじ疎かにする戦士のなんと多いことか。土台の出来ていない身体から放たれる技では、そこいらのチンピラは倒せても、到底武闘会に出場するような猛者は倒せない。…そういったことを繰り返し成男に言って聞かせた。
《haitin》の雄大な自然を利用した修行は辛く、時に命の危険を感じ、成男はその度嘔吐、号泣、失神を繰り返した。しかし一方でこの日々のトレーニングは得意であった。伊達にストレスにまみれた社会でサラリーマンをやってはいない。あの判で押したような毎日は、もはやこのtinトレーニングのためにあったのではないか。ルーティンを苦にしない成男の性質は、もはやある種の才能であった。
〈成男〉とは、俺の新しい名前だ。この〈セカイ〉で、師匠に名付けてもらった。〝真のtinをもつ〈男〉──、双成りに〈成〉るために〟と、師匠がそう言って与えてくれた。
この名に恥じない、tin戦士になりたい。───いや、俺は成る。必ず、《真の双成り》となり───どんな困難をも、何者をも貫ぬき通す《tin》を───手に入れる。
✳︎
透き通るように青く、雲1つ無い快晴。時折吹く風も心地よいものである。これ程まで恵まれた日というのも珍しい。闘技場の裏には国の象徴であるsolemn-tin城がそびえ立っている。しばらく眺めていたかったが、白い城壁が眩しく早々に諦めた。────成男は既にこれからの闘いに胸を馳せていたのだ。
「よしっ」
ヤれる事はヤった。受付開始と共に成男は入場した。札が配られる。番号では無く、白い花が描かれている。
「これはユリ、か?」
良く似ているが、少し違う形の様だ。何だか自分の知っている花より美しい気がする。まあ違いと言っても些細な物だ、ユリという事にしておこう。そんな事より対戦相手は誰なのだろう。
「それはカサブランカだよ」
「カサブランカ…?」
どこかで聞いたことのある花の名だな。などと思いながら声のする方へ振り向くと、そこには15〜6才ほどの中性的な少女が立っていた。ヨーロッパ風の服装が主流のこの国には珍しい、たっぷりと布を使ったエキゾチックな服はどこか旅芸人のようだ。服が厚いので詳しく分からないが身体つきは随分と華奢に見える。武闘会の参加者ではないだろうな、参加者の家族か何かかな?ここは参加者以外立ち入り禁止だけど、迷い込んでしまったのかな…。
などと思っていると、少女は近づいてきた。
近くでみると、随分美しい少女だ。肩より少し上で切り揃えられた黒髪は陽の光に艶やかに光り、瞳も黒曜石のようだ。その瞳が、三日月のようにスッと細くなる。微笑みながら少女は口を開いた。
「ボク、お兄さんのこと知ってるよ。」
その微笑みがあまりにも妖艶で、一瞬目眩を覚えた。そして次の瞬間、少女は耳を疑うような台詞を吐いた。
「──────ボクも、あちらの《セカイ》から来たんだ。」
鼓膜が蕩けそうなほど甘く、息がかかるほどの距離で──そう、囁かれた。
「──────えっ…?」
「ボクの方が先に目が覚めたから……。お兄さんは、ボクのことを知らなくたって当たり前だよ」
少女は続けた。
「突然、見知らぬ異国で目が覚めたボクは、隣でヨレヨレのスーツを着て倒れているお兄さんを見て───ボクと同じ状況にあると──そう、認識した。あちらの《セカイ》でのボクのパパも……サラリーマンだったからね。────とにかく、ここがいったい何処であるのかを確認するため、一刻も早く人を探さなくてはと思ったんだ。申し訳ないけれど、お兄さんの傍を離れ、森を彷徨い歩いたよ───。そして、この国《haitin》の王……今のボクの“パパ”に───見初められたんだ」
「あちらの、《セカイ》…………王…………“パパ”…?」
ダメだ。頭が追いつかない。
「お兄さん、混乱しているでしょう………?分かった。」
そう言うと、目の前の少女は、徐に、自らがまとっている衣服を次々と脱いでいった。
俺は精一杯止めにかかった。が、あっという間に、む、胸が露わに………やけに、小ぶりな胸だ───そして、ついには、最後の一枚に────
「うわっちょ…………ッ!ソコは……ッダメだ、お、落ち着いて!!やめろやめろやめろおおおおおおおおおっ!…………………………………………………………………………………………え?」
目の前に立っている美しい少女、のはず、の、大事な…部分には──────
「──────これで、分かった?ボクも、お兄さんと同じ──双成り、なんだ」
「え?ふ、ふたな………ふたっ?」
「あちらの《セカイ》では、ボクはいつもこの身体のことで虐げられて──散々だった。とても退屈な毎日だった──。ところがこの国─《hatin》ではどうだ?マガイモノとして扱われていたこのボクが!!双成りとして──、認められ、堂々と胸を張って、生きることが出来るんだ!!!──ボクは、王族の代表として……身分を隠し、今回、この《tin》武闘会に出場する。それこそ、毎日毎日、血の滲む様な努力をしてきた──………。キミのことは、風の噂で聞いていたよ。どうやら、〈もう1人の異世界人〉も、立派な双成りをもつ者であると───そして、里津騎士の目にとまり、妙々たるtin戦士になりつつある、と────。」
さらに距離を詰められ、黒く美しい瞳の中に揺れ動く自分と、目が合った。
「ねえ。カサブランカの花言葉、知ってる?………カサブランカの花言葉は──〈純潔〉。
《tin》武闘会で───ボクが、お兄さんの純潔を────奪ってあげるよ」
「じゃあね。決勝で待ってるよ」
「んなっ…!」
そう言葉を残して少女、いや双成りは去っていった。去り際さえ美しく、混乱した頭では言葉をかけることは出来なかった。一瞬だけあの子の札が見えた、いや正しくは見せたのだろう。あの花は赤い牡丹、か?情報が多すぎる…。
「クソッ…」
頭の中がグチャグチャだ。脱ぎ捨てられた服の中心で俺は立ち尽くすしか無かった。
✳︎
「第一試合、成男VS白虎。両者前へ!」
結局あの後も混乱は収まらなかった。しかし試合ではそんな事を考えている場合では無い。今考えるべきは相手の事のみ。
「両者構え…」
対戦相手はスラリとした長身で肌は透き通るように白い。目は深い黄色で、黒く長い髪を1つに結わいてある。一見すると儚げだが、その纏う空気は確実に強者であることを示していた。
「始め!」
お互い素早くtinを露にする。相手は外見にあわず太く、長いtinだ。反り具合も素晴らしい。見た目なら相手の方が上手、か。俺は相手の突きをかわしつつ、tinを振るった。横へ、下へ、上へ、戯れに正面へ───。徐々に相手の顔が歪んでいく。激しい攻防の末、ついに相手が膝をついた。
「私の敗けだ、好きにしろ!」
苦悶の表情でそう言い放つと同時に試合終了の声がする。
「勝者、成男!」
「ではこれより自由時間とする!」
実際の戦場で相手に勝利した際に行われている事を武闘会では「自由時間」と呼んでいる。
成男は相手に触れること無く、退場口へと向かっていった。
「…憐れみをかけるつもりか!」
「それともお前にとって私は、抱く価値が無いというのか!」
「そうじゃない」
「なら…何だというのだ!」
「本来、この行為は愛し合う者同士が行うものだ。まして戦場でも無いこの場で、無理強いをする事は俺の騎士道に反する」
「誤解を与えてしまってすまない」
そう言い残し成男は退場した。
第一試合は危なげなく勝ち進んだものの、成男は武闘会参加者のあまりのレベルの高さに焦りを感じていた。
(いきなり強者に当たったのか………それとも………。)
修行で戦った熊や鹿とは全く違う。隙を見出すのが難しく、一振り一振りに渾身の力と集中を込めなければ、相手に届くことすらない。
(───これがあと3試合……。)
自然と決勝までの試合数を計算していた自分の傲慢さに、成男は思わず苦笑した。
次で負けるかもしれないのだ。目の前の試合に集中しなければ。
(………それと、試合後のことだな。)
何気なく放った言葉が、相手の自尊心をあんなにも傷つけるとは思わなかった。次戦で勝ち進むことができても、「自由時間」に勤しもうとは露ほども思わないが、対応の仕方が悩みどころだ。
そしてまた、第一試合の出来事は今まで武闘会に参加できることに浮かれていた成男の頭に冷や水を浴びせたのだった。
(──────もし、負けてしまったら。)
いや、気持ちを律するんだ。成男。心から強くあらねば、真の《tin》戦士にはなれない。
負けたときのことなど、考えるな。
師匠との修行の日々で学んだことを思い返す。
肉体そのものを強くすることだけでなく、師匠は……里津師匠は───、戦い抜く上での精神論、成男が以前の《セカイ》では知りえなかった───『愛』についても、何度も何度も、繰り返し、説いてくれた。
「いいか。成男。─────愛こそが、tinを最も強く、逞しく──美しいものとするのだ。」
「根底に愛がなければ、相手を慈しむ心がなければ、tinはそれ以上育たない」
「強いことは勿論重要だ。だがな、成男。ただ強いだけのtinは何も生まないんだ。愛を重んじるんだ。それでこそお前は、最強の───《tin》戦士となれるんだ」
「武闘会で、真の双成り────……双成りであることを誇れる《男》に《成》れ。成男、おまえになら出来る──────」
師匠は、身体こそ強く美しい双成りであるが、心は────女性であった。
長い修行の中で、tinだけでなく心まで逞しく、真っ直ぐで清らかな里津に、成男はいつしか、激しく心惹かれていた。
(────里津師匠。貴女の訓えを全うし、必ずや勝利を手に入れます)
そして、第2回戦の鐘が──────鳴り響いた。
✳︎✳︎
第一試合同様、tinを出す。今度の相手は見目は五分五分といったところか。成男は素早く相手の死角に潜り込み、裏側からtinを振るう。確実に入った筈であった、が大きく空振りしてしまった。
「何!?」
そこを狙っていたのだろう、相手のtinの猛攻がきた。慌てて体制を立て直し、距離をとる。避けきれず何発か受けてしまった。息を整えつつ、相手のtinを見ると信じがたい光景が広がっていた。
「tinが5本…だと!?」
そう、通常1本しか生えないソコから5本伸びていたのだ。いや、待て。本当に5本生えているなら、先ほどの攻撃もその内の1本に入ったはずだ。そもそも試合開始時は自分と同じであった。明らかな空振り、急な増加から考えられるのは────。
「その内4本は、幻術か」
「さすが、里津騎士に育てられただけありますね」
「しかしおしい」
「コレは幻術等という紛い物ではありません」
「tinを高速移動させる事で分身している様に見せているのです、よっ!」
そう言い終わると同時に相手が攻撃を仕掛けてくる。分身なのか、本物なのか分からず避けきれない。
「クソッ」
成男のtinが輝きを失い始めた。もう限界が近い。
「はっはっは!早く降参した方がいいんじゃないですか?」
「無様なtinをさらす前にね!」
「いや、まだだ!」
「…ならコレでお仕舞いにしてやるよ!」
相手のtinが5本同時に大きくなる。本当に最後の攻撃を仕掛けてくるつもりなのだろう。────俺はここで終わるのか。その時師匠からの言葉が頭に甦る。
『愛を重んじるんだ』
2人のtinが交差する。
倒れたのは───────相手であった。
「何故…わかったんだ?」
「…本物は愛に飢えていた。」
「もっとtinを愛していたら、俺は負けていた。」
「これからは大事にしてやれ」
審判が試合終了の声をあげようとしたその瞬間、倒れ伏していた相手が鋭く声を上げた。
「…………黙れ!お前に何がわかると言うのだ!愛だと…くだらない、私は、私はこんなところで負けるわけにはいかないんだあああ!!! 」
そこからは全てがスローモーションに見えた。
先程までの涼しげな表情から一転、相手は歯を剥き出し、酷く歪んだ、獣のような顔でこちらに体当たりを仕掛けてくる。
目の端で捉えたその手には、短刀が握られている。どこにそんな力が残っていたというのか、凄まじい速さで刃を繰り出してくる。
意識ではそれを捉えているのに、
(──────避けられな )
「成男!!!しっかりしろ!!!!!!!!」
確かに聞こえた、その声。
柵のこちら側にころげ落ちんばかりに身を乗り出し───師匠が、見守ってくれていた。
「成男──────ッ!!!」
(────ッ、師匠! !)
身体の底から、いや、中心から────…凄まじい力が、湧き上がってくるのを感じた。
「絶対に、絶対に……っ負けられないのだ……!そのtin、斬り刻んでくれるわああああああっ!!!」
「負けられないのは、俺の方だ──────────────《愛》のために!!」
その瞬間、成男のtinは虹色に光り輝き───驚くべきことに、短刀は一瞬にして粉々に砕け散り、まるで成男を祝福するかの如く、破片がきらきらと舞い落ちた。
「なぜ………なぜなんだ………っ!?この短刀は、我が一族で代々受け継がれてきた伝説の刀なのだ………っこ、こんなこと、有り得る筈が……っ」
「Love is best───愛は、最上なり」
第2回戦は、こうして幕を閉じた────────────。
✳︎
休憩室に戻った成男はお茶を一気に飲みほし、椅子に倒れる様に座りこんだ。間一髪だった。師匠の声援がなければ、俺は──────。
「師匠…………ありがとうございます」
あの時の師匠は、とても心配そうな……………初めて見る、顔をしていた。
「もう2度と、あんな顔はさせたくない…」
ふと、思い出す。先ほど起こったtinの変化は一体何だったのか。輝きはすぐに治まり、もういつも通りのtinだ。先ほどの師匠を思い出したり、………そっと、tinに話しかけてみたりするものの──変化は見られなかった。自在に操ることが出来れば、今後の試合に生かせると思ったのだが───。
「結局謎のままか…」
発動条件が不明なのは残念だが、元々の実力に支障をきたすモノでは無い。それに雑念に捕らわれ、試合に支障を来すようでは本末転倒だ。次はいよいよ───
準決勝である。
✳︎✳︎✳︎
「両者構え─────始め!」
「行くぞ!」
掛け声と共に成男のtinが飛び出す。tinが煌めいて、見た目では僅かに勝っている様だ。相手の死角を攻めようと立ち回るが、全く隙が無い。
────ならば正面から立ち向かうのみ。
右、左、上、正面と思わせて下───。成男の攻撃に合わせるように相手もtinをしならせる。弾ける様にしなやかで無駄の無い攻撃───気を抜けば、ヤられる。一進一退の戦いが続き、徐々に息も切れてきた。このままでは───。攻め倦ねていると、急に相手が後ろに下がり距離をとった。
「んふぅっ」
「君の雄々しくも華麗なtinの動きが楽しくて、つい遊んじゃったぁ♡」
「でもぉ、───もぉ、いいかなぁ」
「どういう、意味だ」
相手も汗が滴り落ち、息も切れ始め、tinも試合開始時より輝きが鈍っている。余裕がある様には到底見え無い。
「さあ、はぁんっ…………出ておいでぇ…♡」
チャックを再度下げ始めた───既にtinは出ているが、何をしようと言うのか。 ぬるりと姿を現したソレは、俺も良く見知った姿をしていた。
─────この世界では───初めてだ。
「んふふっ、見るのは初めてぇ?」
「まあ仕方ないよね〜ん♡100万人に1人しか、付いて無いらしいしぃ」
「これが─────────はぁんっ…………golden-ballだよぉ」
「golden…しかし、その姿は…」
相手のgolden-ballには、幾重にも────ナニかが巻かれている。見ているだけで…………窮屈そうだ。
「それはね───これから分かるよぉ♡」
そう言い終わると共に、golden-ballの戒めに亀裂が入り─────弾ける様に飛び出して来た。太陽の光を浴びて艶々と輝き、まるで新鮮な果実を連想させる。
「ぃやん……っそんなに見つめててぇ………良いのかなぁっ♡!?!?」
何時の間に、こんな近くへ───何とか相手の攻撃を受け流すが、先程と比べ、スピードが段違いだ。
数分前まで、相手は確かに強敵ではあった。
───しかし、負けるつもりはなかった。
ヤるかヤラれるかの攻防が続くが、実力は互角、持久戦に持ち込み、なんとか一瞬の隙を見つけることができれば、成男は相手に勝利することができると、心のどこかでは、無意識下に相手を甘くみていた。
しかし、今はその浅はかな考えを呪った。
(───っ次元が違う…! )
今は首の皮一枚でつながっているが、これも、いつまで持つか…。
相手の攻撃は一撃ごとに鋭さと重さを増し、その威圧感に、気を抜くとtinが萎えてしまいそうになる。
(…これが、golden-ballの力…!)
今までの、直感的な攻撃ではダメだ。