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決戦開始!

 堤の上では辰之進さまが吉原がある方向の西側を向き、その後ろに姐さん方三人が並んで控え、更にその後ろ、大川がある東側にわたしとその肩に乗るノアさんが控えている。


 わたしの後ろには川があるし、さっきいた式神の鳥さんは西側から飛んで来たから、敵さんがやって来るなら西側からだろうと考えて今の布陣になっているのだけど……


 シンと静まり返る中、突如首筋にヒヤッとしたものを感じ、むず痒くなる。

 肩に乗るノアさんの毛が一瞬逆立った様に見えた。


 ……コレってもしや……


 そう思った瞬間、前にいた鶴吉姐さんがいきなりこっちを向くと、


「おハル!しゃがみな!」


 大きな鎌を振りかざし、ものすごいスピードで向かって来た。


 ヒィッ!


 慌てて転ばんばかりに地面に伏せると、姐さんはわたしの上を駆け抜け、ブン!と大きな音をさせながら大鎌を振るった。


「アイツら、はなっからおハル狙いだね」


 もう立ち上がっていいよと言われ、恐る恐る頭を上げると、四枚の切れて破れた紙がわたしの周りにヒラヒラと落ちてきた。


 わたしは気付かなかったけど、例の烏帽子男が四体ほど堤の脇からスッと現れて、わたしのことを切ろうとしていたらしい。

 

 ……間一髪でしたね……


 わたしが伏せている間に、辰之進さまの所にも烏帽子男が二体程現れていたらしく、気がついたら既に斬り伏せていらっしゃった後でした。


 どこから現れるか分からないけども、取り敢えずわたしが目標にされてるっぽいので、


「アタシらがおハルを囲む様にしてるんでね……」


 辰之進さまは一人遊撃隊になる様です。


 姐さん方に囲まれて、辰之進さまにまでお守り下さるなんて……コレはもう無敵ですね!って思ったのですけど……


「そう言えば今更ですけど、コレって勝利条件と言いますか、どうすればこちらの勝ちになるんでしょう?」


 ずっとこのまま戦ってる訳にもいきませんよね?


 ここに来たのは浅雪姐さんの回収が目的ですけど、この場所は相手の結界内、敵のテリトリー内だ。

 ここにいて、ただひたすら送られて来る式神を相手にしていてはキリがないし大変だ。

 まさか鶴吉姐さんと辰之進さまの憂さ晴らしの為だけにここにいる訳ではないですよね?

 わたしの横にいるお仙さんにそう尋ねると、


「ここでやり合ってる目的はアタシらの今後の為だよ。アタシらがのんびり暮らせる様に、キチッと彼奴らに分からせてやらなきゃいけないからね」


 ……姐さん方の憂さ晴らしの件については否定しないのですね……

 

「アタシらに手ぇ出したらどんだけ酷い目に遭うか、彼奴らにしっかり見せてやらなきゃいけないからね。二度と楯突こうなんて思わせない程にね」


 とても良い笑顔でおっしゃっる。


 なら、ある程度力を見せつけたら適当な所で撤退するのかな?って思ったのですけど……


「デカイのを寄越させてソレを返したいんで、それまではあの二人の好きにさせるさ……」


 ですって。


 高笑いと共そうおっしゃっていた言葉の意味はよくわかりませんでしたけど、詳しく聞くと怖そうなのでそれ以上聞くのはやめときました。




 その後も烏帽子男は何体も現れた。


 彼等が厄介なのはその戦闘能力よりも、いきなり現れる所だ。

 だけど現れてもすぐに鶴吉姐さんが駆けつけて、大鎌で一刀の元に切り捨ててしまう。

 辰之進さまの近くに現れた時は辰之進さまがお相手していらっしゃいましたけど、何度か刃を交えれば、難なく倒していらした。


 ……こうやって見ると鶴吉姐さんってば、かなりお強いのですね……


 その腕前もさる事ながら、辰之進さまも感心していらっしゃったのは、


「鶴吉殿は如何様にして彼奴が出て来る場所がわかるのですか?」

 

 事前に知っているかの様に、先回りしたり、わたしに場所を移動する様に指示を出したりしていた。


「それはアレだよ。アイツ等が出て来る所には空間に歪みが出来てね……」


 丁寧に説明して頂きましたけれけど、わたしも辰之進さまもサッパリでした。便利な目をお持ちなんですね。さすが年の功。


「しっかし、女相手だって舐めてんのかねぇ。歯応えがないよ」


 こんなんじゃ腕が鈍っちまうよって。


 これには辰之進さまが苦笑い。結構大変そうでしたものね……


 そのお声が相手に届いたのか、烏帽子男のネタが無くなったのか、次に出てきたのは前回と同じ様に鬼が出ました。しかも今回は六体もいっぺんに。


 堤の上に、わたし達を前後に挟む形で三体づつ現れたのだけど、気が付いた時には辰之進さまが待ってましたと言わんばかりに目の前にいる鬼達に向かって突っ込んでいっていた。


「やれやれしょうがないねぇ」


 って、鶴吉姐さんもそれに続く。


 え⁉︎後ろの鬼は放置なの?って思ったらノアさんに、


「ほら!おハナを大きくしてあの鬼共を潰しな!」


 そうですか。こちらはわたしが担当なのですね。

 前回よりも多少弱く力を込めて、おハナ師匠を大きくし、一生懸命踏んでもらった。


 あんまり大きくし過ぎるとおハナ師匠が堤から落ちちゃうのよね……


 さすがに前回と違って簡単には踏み潰せなくって、今回は三体全て踏み終わるまでにちょっと時間が掛かっちゃいました。

 おハナ師匠もわたしもヘトヘトです。


 ふぅ……


 一仕事終えて汗を拭い、さてあっちの方はどうでしょう?と様子を見たら、既に姐さんは二体の鬼を退治した後らしく、大鎌を抱えたまま辰之進さまと鬼との一騎討ちの様子を近くで見ていらっしゃいました。


 新しいお刀はちゃんと使えているようで、襲いくる鬼の手を打ち払いながら促し、多少苦戦はしていたものの最後には見事打ち倒しました!


 やりましたね!


 辰之進さまも嬉しそうです!





 どうやら陰陽師さんは本気でお怒りの様子で、その後も次から次へと色んな式神が送られて来た。


 鬼はその六体で終了だったらしく、今度は物量だと言わんばかりに沢山の犬がやってきた。


 西側、辰之進さまがいらっしゃる方から駆けて来るではなく、ジリジリと数を増やしながら近づいて来る。

 一頭二頭だと可愛らしいのですだけど、群れで現れると恐怖でしかないですね。

 怖くなって後退りしながら、やっぱりあれも式神なのかしら?ってノアさんに聞いたら、


「アレは犬と言うより狼、犬神だよ!」


 あら、余計に厄介そうですね。


 あんな数どう対処するんだろうって思ってたら、おタエさんが、


「お辰、ちょっとの間時間を稼いでな!」


 そう言われるや、辰之進さまは「ハイ!」と返事をすると犬神達に駆け寄り、懐から今度は何やら丸い球みたいな物を取り出してその群れに向かって何個か放り投げた。

 途端に、群れの中心が爆発して大きな光と音が響く。


 ギャッ!


 思わず飛び跳ねてしまった。


 大きな音とかがするなら先に教えといて下さいよ!


 どうやらお仙さん特製の焙烙玉らしく、式神にも効くようだ。

 群れの中では紙が舞っている。


 さすがに全ての犬神はやっつけられなかったようで、まだ沢山残っている。

 しかし今の攻撃で辰之進さまを警戒している様で、犬神たちの動きが一旦止まった。

 すると今度は堤の左右に回り込み、下から駆け上がるようにして辰之進さまを挟み込む形で襲い掛かかってきた。

 

 しかし辰之進さまは左右から襲い掛かる犬神達を相手に、式神の鳥さんを仕留めたのと同じ手裏剣を投げながら、危なげなく一頭一頭斬り伏せている。


 さすがですね!かっこいいいです!


 そのまま辰之進さまの勇姿をもう少し見ていたかったのですけど、おタエさんが、


「待たせたね!」


 何やら聞き慣れない言葉を大きな声で唱えると、さっき地面に置いていた紙が光りだし、そこからズワッと、沢山の黒い鳥さん達が飛び出してきた。


 カラスや鷲や鷹や……大きいのもいれば小さいのもいる。

 色んな種類の黒い鳥さん達が無数に羽ばたいているので、音も凄いし辺り周辺が暗くなった。


「そら!アイツ等を捕まえな!」


 おタエさんの号令の元、鳥さん達は犬神達に襲い掛かる。

 鷲さんとか大きい鳥さんは一羽で、小さい鳥さんは数羽で全ての犬神を掴むと、そのまま空に飛んで行き、姿が見えなくなってしまった。

 

 呆気に取られてそれを見ていたのだけど……


「あのぉ……おタエさん。鳥さん達はどこまで飛んでいったのですか?」


 そのまま結界の外まで飛んで海に行って、犬神達を捨ててしまうのだそうだ。


 海に落として暫くすれば紙に戻って溶けちゃうんですって。ちょっと可愛そうですね。




 その後にも、白い大きな虎みたいなモノや派手な大きな鳥さんみたいなモノが現れたけど、何れも鶴吉姐さんと辰之進さまの敵ではなく、あっさりと倒してしまった。


「流石にそろそろ奴さんも品切れかね」


 戦闘開始以来、何もしていなかったお仙さんがそうおっしゃった時、突如神々しい光と共に、眩い羽を生やした人型のモノが空から降りてきた。


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