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サバトの開催

 さすがに、やるよ言われても二つ返事で受け取れるわけもなく、「こんなたいそうな物頂けません!」「いや、アタシらではどうせ使わないモンだしね」等といったやり取りの後、結局辰之進さまは新しいお刀を入手出来てご満悦のようだ。


 ご機嫌が治った様で良かったです。


 でも後でボソッと鶴吉姐さんが、「刀の代金はおハルに付けとくから」って言ってたのが気になりますけども……


 お刀ってお幾らくらいするでしょう?同じ刃物の包丁のお値段ならおおよそ分かりますが、アレよりも随分と大きいですからそれなりにしそうですよね?

 でも、わたしを守って頂く為にダメにしたお刀の代わりですし、辰之進さまがお喜びになっていらっしゃるのでしたら、わたしも嬉しいので良しとしましょう!

 お刀を貰って喜ぶなんて辰之進さまらしいですよね。


 それに……


「コレさえ有れば、次こそは遅れを取らずおハルちゃんを守れるからね!」


 嬉しいお言葉も頂けたので満足です!




 鶴吉姐さんとおタエさんが辰之進さまを囲んで、「暫く使ってなかったから急いで研ぎに出すかねェ」とか、「拵えはどうする?このままで良いのかい?」って、三人仲良くお話しが弾んでますけど、お刀のことなんか全く分からないわたしは蚊帳の外だ。


 つまんないなって、同じ様に蚊帳の外だった堀さまを見たら、どうしたら良いのか分からないって複雑なお顔をされて辰之進さまを見ていらした。


 ……心中お察し致します……


 仲間外れはお仙さんも同じですよねって思ったのだけど……


「そう言えばお辰、お前さん本来使うのはそこらの道場剣術じゃないんだろ?」


 って、三人の輪に入って行った。


 どうもノアさんから、先達ての戦い振りを詳しくお聞きになっていたみたいで、


「ノアに聞いたがね、どうにもお上品な戦い方ではないらしいね」


 他にも色々とやってるんだろう?と楽しそうに話しに混ざってる。


 わたしはその場で見ていても良くわからなかったけど、見る人が見れば一目瞭然だったらしい。


「はい。実は祖父から他にも手解きを受けておりまして……」


 何処そこの流れを組むとか何やら難しいことをおっしゃっていてよく分かりませんでしたけど、わたしが以前道場で見た、凛々しく木剣を振るうお姿以外にも色々とあるらしい。


 辰之進さまってば凄いんですね!


「なら、他に色々と使えそうな物をアタシが用意してやるかね」


 それを聞いた辰之進さまは俄然やる気になり、

   

「是非とも宜しくお願い致します!」


 満面の笑みを浮かべていらした。


 みんなが楽しそうにしているので、新しいお刀、カッコよくていいなーわたしも何か新しい武器、欲しいなーっておねだりしたのだけど、


「お前にはおハナがいるだろ?」

「生兵法は怪我の元だよ」

「春蔵は何も出来ないだろ?」

「寝言は寝て言え!」


 って、みんなして却下されてしまった。


 仕方がないのですごすごと部屋の隅に行って、堀さまと居場所がない者同士、お菓子を齧りながらお茶を飲んでみんなのお話しが落ち着くのを大人しく待った。




 お茶もお茶菓子も無くなってしまった頃、どうやらやっとお話しもひと段落ついた様で、お仙さんが隅にいるわたし達に向かって、


「そんな訳で、明日中にはアタシらも準備を終えちまうんでね」


 明後日には浅雪姐さんの回収に迎えそうだから、明日には件のお医者さまを捕らえてしまって良いよっておっしゃった。


 それを聞いた堀さまは深いため息を吐きつつ、


「……では明朝朝早くから動くので、某はこれにて……」  


 疲れきったお顔で一人帰って行った。


 さて、わたしも今日は色々と疲れたから朝早く湯屋に行くとして、さっさと寝てしまおうとしたのだけども、


「あら、そう言えば辰之進さまはどちらでお休みになられますか?」 


 茶の間でしたら床を用意しなければいけませんね。

 それとも、狭いですけれどもわたしの部屋でご一緒します?……きゃー!って喜んでいたのだけど……


「あぁ、まだお辰とはこれからの件を話しとくことがあるからね……」


 まだまだ掛かるから、追加のお酒の支度をしたらわたしは先に寝てしまえ、ですって。


「え⁉︎わたしだけ除け者ですか?」


 そんなのズルいです!


 わたしも一緒にお話しします!って、言われた通りお酒と肴の用意をすると姐さん方達の輪に混ざった。

 

 お話し合いは初めの内は今日の向こうの出方を参考にしてどう対処するかとか、人手は?他にも協力を仰ぐか?持って行く得物は?等と言ったお話しだったのですけれど、お話しが進むにつれお酒も進み、段々と宴会の様相を呈していく。

 気が付けばわたしはその場で寝てしまっていた。




 目が覚めたのは二階にある自室だった。

 どなたが運んでくれた様です。


 お台所からご飯の炊けた匂いやお汁の匂いが上がってきて、「朝ごはんだ!」って目が覚めた。


 急いで着替えて下に降りるとお文さんがいらしていて、辰之進さまと姐さんがお食事中でした。


「やっと目ぇ覚めたのかい。ほら、飯食う前に先に湯屋へ行っといで」


 二人は既に湯上がりだったらしい。


 なにそれ!ズルい!わたしも一緒したかったです!


「……一応は起こそうとしたのですけどね……」


 全く目を覚さなかったらしい。


 ……そうでしたか……それにしても……


「今、お外に出ても大丈夫なのですか?」


 下手に外へ出て陰陽師に見つかるとまずいんじゃ……って思ったのだけど、


「ここら一体なら大丈夫さ」


 姐さん方の結界もあるし、「ほら」っと指差す先を見れば、縁側の先のうちの小さな庭で、少し大き目な黒いカラスさんが餌を啄んでいた。


「あれはおタエの使い魔さ」


 あのカラスさん達がここらを見廻っていてくれているらしく、わたし達の護衛も兼ねているらしい。


「外へ出る時は、アイツらが側に居るのを確認してから出るようにしな」


 式神の白い鳥さんくらいなら追い払ってくれるって。


 彼等は賢いのですね。宜しくお願いしますねってご挨拶したら、「クゥぁポポッ……」とお返事してくれた。

 これで護りは完璧ですね!って思ったのですけど……


「カラスさんは鳥さんですから夜はお休みですよね?なら今晩はどうするんですか?」


 お外に出ては行けないのは分かりますけど、誰か寝ないで番をするのかなって思ったら……


「夜は代わりに蝙蝠が飛ぶよ」


 昨晩も飛んでんですって。

 おタエさんの使い魔には小さな動物が沢山いるらしい。

 小さくて可愛らしいのがお好きなんですね。

 そう言えばお仙さんには猫さんのノアさんがいますけど、鶴吉姐さんは使い魔さんはいないのですか?って聞いたら、


「アタシの使い魔はここだと目立つからねぇ……」


 ニヤリとしながら、「明日は見せられるかもしれないよ」ですって。


 てっきり姐さんには使い魔さんがいらっしゃらないかと思ってましたので、不謹慎だけどちょっと楽しみです!




 湯屋から戻るとお二人の姿は既に無く、姐さんは自室に篭り、辰之進さまは研ぎ屋さんの所へ行ってしまった後だった。

 一人寂しくご飯を頂いているとお仙さんが大荷物を持ってやってきて、


「コレ、お辰に渡しといてね〜」


 挨拶もそこそこに荷物を置くと、忙しいそうに直ぐに帰ってしまった。


 みんな明日に向けて忙しそうだ。

 でも、わたしは特にこれといって準備する必要がないのよね……


 ハルは袂から三味線バチを取り出すと、付喪神のハナと遊び始めた。

 暫くハナと遊んだ後……


 ───あっ!準備する物が有りました!


 慌てて自室に駆け上がり、箪笥から紙入れを取り出すと中のお金を確認した。


 ヒーフーミー……これくらいあれば大丈夫かしら?


 そのお金を掴むと帯の巾着にしまい、


「お文さん!わたしもちょっと出掛けて来ます!」


 おタエの使い魔であるカラスが近くにいるのを確認し、買い物に出掛けた。

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