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お社さま その1

 お社さまはホントいろんな事を知っていて、色々と教えてくれる。さすが年の功!って言うと怒られるから言わないけど……


 わたしが前世の記憶を持っていて、神さまにお逢いしたのが原因で亡くなってしまった事を話した時も「そりゃぁ無茶したもんじゃ」って言われた。

 お社さまが言うには、神さまって人々の信仰によって御力がつくみたい。

 前の世界いたは「神さま」は一柱(神さまって、一人二人じゃなくって、|一柱《ひとはしら二柱って言うのよね。これもお社さまから教えてもらった)しかいらっしゃらなかったから、全世界の人々の信仰を一手に受け取る存在はとてつもなく大きく、とんでもない強大な力を持った存在だったんだろうって。

 そんな存在に、力が無いわたしが干渉しようとしたら「……そりゃ、おっ死んじまうわな」って。

 やっぱり神さまって怖い存在なのねって、ぶるぶる怖がってたら「……いやいや……わしなんぞ神でも端くれだもんで、今やだいぶ神としての力が無いしな……ここに居るのもやっとなんじゃぞ……」って落ち込み出すもんだから、あの時は宥めるのに苦労したっけ。

 

 そもそもこの世界にはあっちこっちに沢山の神さまがいらっしゃるから、信仰してお祈りする力も分散するし、それぞれ役割分担もあるから、神さまって言っても御力も色々と違うみたい。その辺りの事、お社さまってば語り出すと長いのよね「~そもそもじゃな、この国においては高天原系の~また他の国々における~」とかなんとか……

 そんな難しい事言われても、わたしにはよく分かんない。何時も聞き流しちゃうのよね。ごめんなさい。


 ともかく沢山の神さまがいらっしゃるって事はわかった。で、神さまは沢山いても、見えたり、お話できたりする人はこの世界にはそんなには居ないって事も。だから、


「折角、我々に干渉できる力を持って折るんじゃから、その力を使わんのは勿体無い。神下ろしが出来るのは特別なことなんじゃぞ?神職に携われば……別に寺社に所属せんでも、歩き巫女でもすれば今より裕福な暮らしが出来るじゃろうに……」


 って何時も言うんだけど……だけどね、やっぱりね、神さまに関わるのは怖いのよね。あ、お社さまは別よ。やさしいし、かわいらしいしね。

 そんな事を言われても、やっぱり恐い思いをするのはイヤだって、今も困った顔をしてると、お社さまは立ち上がって村の方を見下ろして、

 

「今日も下の道を避けとったな」


 よく見ていらっしゃる。さすが村の神さまだ。

 

「やはりあの、下の道の地蔵菩薩のが恐いのか?まぁ、あっちのは閻魔みが強いから仕方がないが……」

 

 おはるは怖がりじゃのぅって笑った。

 閻魔?地獄の閻魔大王さまの事?お社さまが言うには閻魔さまは地蔵菩薩さまの化身なんだって。

 下の道の地蔵菩薩さまは、きっと閻魔さま寄りなのね。だからあんなに怖いお顔をしていらっしゃるのね。で、閻魔さまはコンニャクがお好きとの事。わかりました。今度お供え致します。少しはやさしいお顔になってくれるかしら……

 

 それにね、わたしは今の生活がとても気に入ってるの。

 決して裕福とは言えないけど、自分達の食べる物を田んぼや畑で作ったり、山に入れば四季に応じて色んな恵みが受けられる。なによりも……


「ここにはわたしの大事な家族がいるし、それにお社さまとも会えなくなっちゃうのはいやなの」


 お社さまに向かい合い、ニッコリと微笑む。


「それに、何時かはここを建て直して、昔のように村の人たちも来てくれるようにしたいの。それがわたしの夢なの」


 そのままお社さまの後ろに視線を移すと小さな社が目に入る。

 

 ……やっぱり、いくら掃除しても古くてボロボロなのよね。いつかちゃんとしたいわ。あの社、立て直すのってどの位大変なのかしら?などと考え込んでいると、

 

「わしを盛り立ててくれようとは……お主はホンに可愛い子じゃな」


 満面の笑みを浮かべながら、わたしの頭をかいぐりかいぐりしてくる。

 

「それにあれじゃろ?他にもここに居たい理由があるじゃろ?」


 ん?

 

 「ほれ、例の『笛の君』の事じゃよ」

 

 下卑た顔をして悪戯っぽく言う。

 わたしは耳の先まで真っ赤になった。

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