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浅雪姐さんの救出 その1

「その浅雪って子を無事に助け出したいのなら、キチンと順序立てて事を進めなきゃならないから気をつけるようにね」 


 じゃあお行き、と今作ったばかりの薬瓶を渡されたのだけど、ハルはその瓶を見つめると考え込んでしまった。


 ……コレを飲ませばいいのはわかるんですけど……


「……あのぉ……どうやってわたしが、番所に行って浅雪姐さんに飲ませれば良いんでしょう?」


 ノコノコ番所に行って、お役人達がいる前で飲ませるのがダメだってこと位はわかる。


 仙は呆れた顔で、


「あたしはこれから新しい下手人を作る用意もしなきゃいけないんで忙しいんだよ。それくらいは自分で考えな」


 そう言って、今度は薬を調合するために薬研を引っ張り出し、棚を色々と漁ると作業を始めた。


 お忙しそうですね……お仙さんの助言がないのは不安だけど仕方がない。戻って辰之進さまと相談しましょう。

 

 そう考えながら部屋を出ようとしたら、


「あぁ一応ね……」


 お目付役にノアさんを付けて下さるとのことで、


「帰る時一緒に連れてきな」


 と言われた。


「ありがとう存じます!」


 早速探しに行き、不貞腐れるノアさんを捕まえて一緒に連れ帰った。




 家に戻ると辰之進さまと堀さまもまだいらっしゃっていてくれた。


「だだ今帰りました」


 と、茶の間にいる姐さん達にご挨拶したら、


「お前、ノアを連れてきたのかい!」


 わたしが抱えるノアさんを見て驚いていらっしゃる。どうも姐さんは猫さんが苦手らしい。


 だからウチには猫さんがいないのですね……おタエさんのとこにもいらっしゃるみたいですのに……残念……


 そうそう……と驚いている姐さんに構わず、


「姐さん!お仙さんに許可を貰いましたので!」


 ズイっと、お仙さんから待たされたお手紙を渡した。


「お仙さんからです。姐さんに渡すように言われました」


 姐さんは受け取った手紙を読むと苦笑いしたり困惑していたり、面白いお顔になっている。


 読み終わるのにはまだ時間が掛かりそうでしたので、その間に辰之進さまと堀さまに向かうと、


「辰之進さま。これから浅雪姐さんの救出に向かいますのでご一緒して下さい!宜しくお願い致します!堀さま。浅雪姐さんは返して頂きますので、代わりの下手人を用意致します。ご安心を!」


 ニッコリ笑ってそう伝えた。

 辰之進さまは苦笑いなさり、堀さまは目を見開いて驚いていらっしゃる。


 さて……次にしなければならないのは……と考えていると、


「春蔵殿!それではさっぱりわからぬ!何故そうなった!」

「ハル坊!それじゃ説明が足りないよ!」


 堀さまの嘆きとノアさんの叱咤は同時だった。


 ……あら?言葉足らずでしたか?失礼致しました……


「なら……」


 ノアさんのご紹介とコレからやることの説明も兼ねて、


「辰之進さま、堀さま、ちょっとお手を拝借致しますね」


 ヒョイっと自分の頭の上にノアさんを乗っけると二人の手の甲にわたしの手を添えて、


「この猫さん、ノアさんって言いますの。コレでノアさんのお声が聞こえますよね?詳しくはこのノアさんがご説明致しますので……」

「全くこの子は横着しおって!」


 面倒なのでノアさんに丸投げする。


 怒りながらもノアさんは自己紹介と、コレからやることをかいつまんで説明してくれた。


 その間、辰之進さまは何もかも諦めた目をなさって黙って聞き入り、堀さまは始めはとても驚き、お話しが進むにつれ顔色がどんどん悪くなり、ついには胃の辺りを押さえ出してしまった。


 ……ご愁傷様です……


「そんな訳でして堀さま。コレはわたしの我儘から始まりましたけど、浅雪姐さんをこのままにしておく訳にはいきません。番所から出させて頂きます。それで、ただ返して貰うのも悪いですから、代わりの下手人はお仙さんがご用意致しますので堀さまの良い様になさって下さいませ」


 ニコリと笑いかける。


「……いや……その様な事を言われても、全くもって何が何やら……」

  

 今にも泣き出しそうなお顔で困惑しながら、


「そもそも、まずそのお仙殿とは何者であるか?」


 その喋る猫の飼い主である様だが……と。

 頭の上に座るノアさんは、「失礼な!愛玩じゃ無いよ!アタシは相棒だよ!」って怒っていらっしゃいますが、今は手を離しているから堀さまには聞こえてませんよ。わたしの頭を叩かないで下さい!


「兄上、お仙殿というのは、鶴吉殿やおタエ殿の頭目の様な存在であると以前お会いした時に聞き申した」


 ですから諦めなされ。と慰めている。


 二人して深いため息を吐くと堀さまから、「どの様にして某に下手人を渡してくれるのだ?」と問われたのだけど、そう言えばどうやって新しい下手人を渡すのかはわたしも詳しくは聞いていなかった。


「詳しくはわたしも聞いていません。ただ、もしかしたらその方はお偉いさんか、もしくはその関係者であると伺いましたので、そのお心算でいて下さいね」


 そして早ければ今晩、遅くとも明日には下手人が用意されているはずだ。


 それを聞くと堀さまは青い顔をなさって家を飛び出していった。




 堀さまを見送った後、辰之進さまにくるっと向いて、


「さっ!では、浅雪姐さんをお助けするために、まずは吉原の方へ向かいましょう!」


 憮然としたお顔の姐さんを残し、辰之進さまとノアさんとで出掛けた。


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