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昔の姐さん方

 わたしがそう宣言するとお仙さんは苦笑しながら、


「まぁ、好きにするがいいさね。どうせやるなと言ってもやるんだろ?まったく鶴吉の若い頃そっくりだね」


 って。


 鶴吉姐さんのお若い頃なんて想像出来ませんが、似てると言われると複雑な気分です。

 いずれはわたしもあんな美人になれるのかしら……怖くて怪しいのは勘弁だけどけどちょっと嬉しい。


「あの子は今のハル坊よりもっと年いってから自覚して定まったんだがね」


 ……自覚して定まる?……


「前にも言ったろ?以前に居た国々ではあたしらが色々な名前で呼ばれてたって事を。生まれついてのものもあるけども、ある時()()を自覚する事で()()となるのさ」


 そしてそれを自覚してそうなると、その時分の姿のまま、ずっと変わらなくなるんだそうだ……


 ───え?となるとわたし、今さっきソレを自覚したから、今のこのまま成長しなくなるの?背、伸びなくなっちゃうの⁉︎


 ハルは唖然とした表情で仙を見つめるが、仙は気にせずそのまま語りだした。


「鶴吉はまだ若いからねぇ……あの子がそうとなったのは二百年程前だったかねぇ……」


 鶴吉姐さんがそうなって暫くした頃、姐さん方がいた土地では姐さん方に対しての迫害が始まってしまったそうだ。

 不思議で怪しげな力を使う者は異端であると、宗教的な弾圧を受けて火炙りとかにされてしまったらしい。


「そんな時代だったからね。あたしらはその土地を捨てて新しい土地を探したんだよ」


 まだ若く血気盛んだった鶴吉姐さんがいの一番に動いたらしく、姐さんが大陸の果て、海の果てのこの国へと一番初めにやってきたんだって。


「確かあの子がこの国の土を踏んだ時は、この国もまだ戦が多くてゴタゴタしていたのだけどね。時の権力者である豊臣側に付いたらしくてね……」


 その方は姐さん方を迫害していた宗教がこの国へ入ってこようとするのを拒んでいたから手を組んだんだって。

 で、どうもその時に例の陰陽師、土御門さんと一悶着あったらしく……


「結果はたしか、謀反を起こしたそいつの息子と共に土御門達を尾張国へ追いやる事で決着がついたんだそうだよ。後からあたしがこの国へ来た時に、あの子が誇らしげにそう言ってたね」


 たいそう大暴れだったんですって。


 ……姐さん、結構武闘派でいらしたのですね……


 だけど一時の権力者だった豊臣も滅び、今や徳川の世に。


「まぁ色々あっだけど、どうやら徳川になってもあの宗教はここの国へはあまり入って来ない様だったからこの国に落ち着く事にしたんだよ。それであたしらはここより西の方の夜の街でひっそり暮らしてたんだけどね……」


 江戸が出来きて、あっちこっちから人が集まるようになれば当然遊女屋も沢山出来て、そしてそこには悪所が生まれてくる。

 その時、江戸の町中に散逸する遊女屋をまとめ上げたのが「おやぢ」という者らしく、


「そいつは元々乱破(らっぱ)崩れでね。そいつの頭とは付き合いがあったんだよ。あたしらが作る薬やら術なんかのいいお得意さまだったのさ」


 その方とはお仕事の関係でお付き合いがあったそうだ。


 それでそのおやぢが日本橋の外れの寂れた場所に政府公認の廓、今で言う元吉原を作るって話しになり、姐さん方も江戸へやってきてお手伝いしたんだって。

 

 そして元吉原の頃は姐さん方もちょいちょいお店の経営とか裏で手伝っていたのだけど、その内に吉原が金銭的にも力をつけていき、吉原の中の治安の悪さとかをお上に目をつけられてしまって、明暦の大火で吉原も燃えてしまったのを契機に今の新吉原へ移る時、当時の楼主とかの経営人をごそっりと入れ替えられてしまったのだと。


「その時、代わって入って来た者達が家康と縁のある尾張国の者達でね……」


 それもあって一時期姐さん方は他所に引っ込んでしまっていたのだけど、ここ深川が埋め立てられ整備されて賑やかになってきたからまた江戸に舞い戻って来たんだって。


「やっぱり賑やかな夜の街が恋しくってね……あいつの墓もそこの三好町にあるし……」


 そんな訳で吉原という場所は姐さん方にとって、特に鶴吉姐さんにはとても因縁のある場所らしい。

 

「まぁそんな訳さね……」


 お仙さんは遠い目をして何かを懐かしんでいる様に見えた。


 ……これは思ったより複雑な件だったんですね……

 わたし如きが首を突っ込んではいけないんじゃないかしら……


 ハルは仙の話しを聞き、先程までの勢いが薄れて大人しくなってしまった。


 すると……


「……だからね……やっぱり、やられっぱなしじゃつまらんよね」


 ?


「最近はあたしらも大人しくしてたけど、本来なら好き勝手やるのが性分さね」


 お仙さんの目が輝いていらっしゃる。


「ハル坊。あたしも手助けしてやるから好きにおやり!」


 思い掛けずお仙さんの後押しが入ることになった。


 ……お仙さんも見かけによらず交戦的でしたのね……




 やる気になってくれたお仙さんはとても頼もしくって有難いですけど、それよりも、このまま成長しなくなってしまうかもしれないってことの方がとても気がかりです!


 お願いだから嘘と言って下さい! 

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