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辰之進さまとお買い物とお食事

 えっ!見えてらっしゃるんですか⁉︎


 驚いて飛び上がると、辰之進さまと手が離れてしまい、


「……あっ、消えた……」


 見えなくなってしまったみたい。


 どうやらわたしが見えている時に手を繋ぐとその人も見えるようになるらしい。

 その場で何度か手を繋いだり離したりして確かめてみた。

 その様子をお店の奥さまが微笑ましい目で見ていらっしゃるのでちょっと気恥ずかしかったけど、辰之進さまは一人「……これがおハルちゃんに見ているものですか……」と暫く感心しきりで何やら考え込んでいた。

 その間、わたしはとても幸せでした……




 結局その煙草入れを買う事に。

 お会計を済まし外へ出ようとしたら、


「おハルちゃん。これ、遅れ馳せながらお祝いに……」


 本当なら櫛や簪の方が良いのかも知れないけど不調法な者で……と少し恥ずかしそうに、流石に筥迫は手が出ないから代わりにこれをって、煙草入れと同じような色と柄の巾着袋を見繕ってプレゼントしてくれたの!

 普段から持ち歩いているなら、そのお師匠様のバチ用にでも使って下さい。ですって!


 安物で申し訳ないっておっしゃいますけどそんなことありません!

 わたしに取ってはどんな高価なものより素晴らしいものです!

 大事に使わせて頂きます!


 お礼を言い、その袋を愛おしく胸に抱いた。

 

 天にも昇るような心地になり、あまりの浮かれっぷりにお店を出る時に買ったばかりの煙草入れを置き忘れてしまいそうになった程だった。




 この後はお食事に。


 欲しい物は買えたしそれ以上の物も頂けたからニコニコ顔で、足取りも軽くそのまま両国広小路へと向かった。

 露天の小屋を冷やかしつつ歩いていると、


「……そう言えばお店は決まっていると伺いましたが……」


 何処まで行くのですか?と辰之進さまが少し不安そうに尋ねてくる。


「はい。両国にあるお店に行こうと思いまして……」


 お仕事でお座敷にはよく上がっているけど、別にお店に詳しい訳ではないので、おタエさんなら詳しいと思い今日のことを伝えてお店を紹介してもらった。

 おタエさんは、「日本橋へ行くなら芳町の陰間茶屋にでも行けばいいんじゃないかい?」って冷やかしてきたけどキッパリ断って、「お料理の美味しいところをお願い致します!」と頼んでおいた。

 それじゃぁって、両国にある料理茶屋を紹介してもらったのだ。

 あまり近場だと知り合いに会って変に茶化されてしまいそうですしね。


「お料理もそうですけど、雰囲気も良いらしいですよ」


 お店の前に着くとその立派な店構えを見て、辰之進さまが入るのにちょっと躊躇されていた。

 確かにこれはお高そうなお店ですよね……

 わたしもお仕事でもなければ絶対来ないと思う。

 でも大丈夫。


「おタエさんのお知り合いのお店を紹介して頂きましたので」


 以前助けて頂いたお礼もまだでしたし、それに今日は「お祝いだよ」っておタエさん持ちだ。

 だから大丈夫ですよ。ニコリと笑いかけて中に入り、お店の女中さんに名前を伝えると、「伺ってますよ」と中へ案内された。


 二階のお座敷に上がると、部屋からは丁寧に整えられているステキなお庭が見えた。

 池もあり、小さな滝も見える。


 涼しげな清々しい優雅な雰囲気に喜んで、席に着こうとしたら辰之進さまはその場で立ち止まる。

 どうされましたか?とお顔を覗き込むと、


「……いや、おハルちゃんはこういったお店に慣れているかもしれないけど……」


 わたしは初めてなものでして……と緊張していらっしゃる様子だ。


 まぁ!可愛らしい!


 緊張して強張っているお顔を見て思わず胸がキュンとした。


「わたしも慣れているとはいえ、お客でくるのは初めてですよ」


 そう言って辰之進さまの手を取り、お席まで案内した。





 お料理は美味しくお酒も進み、始めは緊張して硬くなっていらっしゃった辰之進さまも、帰る頃にはほど良い感じにほぐれて楽しんでいらっしゃいました。

 わたしも念願だった辰之進さまへのお酌も出来て満足です!


「今日はお祝いのつもりでしたけど……」

「いえ、此方こそ。楽しんで頂けたのでしたら幸いです……」


 そのまま両国橋の袂で分かれて帰途についた。


 おタエさん、ご馳走さまでした。美味しかったです。でも、チラッと見ましたけど奥に床が用意されていたのはやり過ぎですよ。





 買ってきた煙草入れを姐さんに見せたら、「また珍妙なモンを」って笑われたけど、お文さんには「おハルちゃんにとても似合ってるわね」って好評でした。

 そうそう、と試しにお文さんにも辰之進さまにやったみたくおハナ師匠を見せてあげたら、「あらあら可愛らしい象さんね」って喜んでくれて、「そんな大事な物なら無くさないようにしないとね」と、辰之進さまから頂いた巾着袋と煙草入れを紐で繋ぎ合わせてもらって、袂落としにしてもらった。

 首から紐をかけて左右の袂から袋を出して帯に挟んで、ついでに象の根付も巾着袋につけて帯から出す。 

 よし、これで完璧!

 これでいつでも辰之進さまと一緒!あ、もちろんおハナ師匠もよ。ごめんなさい!鼻で叩かないで!


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