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本所へのお出かけ その3

 ……ふぅ、疲れた……


 天神さまから香取神社は近所だったし、荷物は一つだけだったから行くのは大変じゃなかったけど、そこの神さまってば、結構お古い神さまでいらっしゃっるので、その御威光の圧は強いわ古いお言葉で話されるわで、お相手するのが色々と大変でした……


 そんな訳で、また一休み。

 先程の茶店で一服していると、お店のおばぁさんに「あれ嬢ちゃん、また来たね」って。ここはこんなに人が一杯来るのによく覚えてますねってお返事したら、「そりゃ、かわいいちっこい子が団子何皿も平らげりゃね」って笑われた。


 ……お恥ずかしい……


 でもまたお団子、頂きますね。




 お仕事も終わったことだし、せっかく来たのだからと天神さまの中を色々と散策することに。

 茶店のおばぁさんと仲良くなって色々とお話しを聞いたので、心字池や太鼓橋などといったお勧めを回ってみる。

 

 池の中に亀さんもいたりとか、楽しかったです!


 満足するまで遊んだので、あとは日が落ちる前に家へ帰るだけ。

 でも、どうやって帰ろう?


 もちろん帰りも舟なんて贅沢は出来ない。舟代はとても高いのだ。

 お団子代とかお土産に梅干し買ったりして散財しちゃったしね。

 それにしてもここって、名物に何か甘い物でもあれば良かったのだけど……


 ここから深川はそう遠くないので、歩いて帰ること自体は別に問題は無い。そう、問題になるのは「道」の方だ。


 おタエさんの書き付けを見ると、すぐそこの十間川に掛かる天神橋を渡って柳島町に入り、町中を進めば半刻位で着くそうだ。丁寧に道順も書いてくれているけど……方向音痴なわたしでは確実に迷うと思う。

 うん。それは絶対に間違い無い。

 姐さんはわたしの方向音痴っぷりをご存知だけど、おタエさんはご存知ないのよね……

 

 さっき香取神社行く時も、少し迷っちゃったし……


 ごみごみしている町中って苦手。

 わかりやすい道を行くならば十間川沿いに下って行って、海が見えてきたら右、西の方へ向かって進めばいいんだけど……さっき亀吉さんに、あの辺りは危ないから通っちゃダメって言われたのよね……


 さて、どうしましょ?


 その時ふと「川沿い」で、茶店のおばぁちゃんから聞いたお話しを思い出した。

 この辺りには天神さま以外にも、梅屋敷とか連理のクスノキ、妙見さまといった名所が色々あるらしく、いずれもそこに流れる十間川と交わる「北十間川」沿いにあるってことを。今日は時間が無いから行けないけど、今度来た時は行ってみたいな。


 北十間川なら知っている。たしか浅草辺りで大川に繋がったはず。そう、大川まで出てしまえば大丈夫だ。後は南へと海を目指せば深川だしね。

 多分、遠回りになっても一刻もかからずに着くかと思う。山育ちだから足には自信があるし、それに時間がかかっても迷うよりはそっちの方が断然いい。

 顔を上げてお日様を見てみればまだ陽も高い。日暮れまでには帰れるだろう。

 

 よし、その北十間川沿いのルートにしよう!

 帰り道を決めると、天神さまを出て北側向かって歩き始めた。



 

 天神さまの裏手に出ると、先程まであった賑やかな雑踏は鳴りを潜め、ひっそりとしている。

 目に入ってくるのは畑や木々ばかり。なんとなく生まれた村を彷彿とさせて懐かしい気持ちになる。

 人もほとんど見かけないし……いや一人、少し離れてわたしの後ろを歩いてる者がいた。

 

 人気の少ない無い所で人が居るのに気づくと、ちょっと怖く感じるのよね。特に知らない大人の男性だと尚更。

 のんびりとしていた歩みが、自然と早足になる。

 すると、後ろの人の足音もそれに合わせて早足になった。

 コレは……緊張が走った。

 自意識過剰かと思うけど、怖いのは怖いのだ。


 ……取り敢えずどこか、人のいる所に……


 不安になって辺りを見渡すと、あれは萩の花かな?少し行った先に寺社が見えてきた。

 あそこなら誰か人も居るだろう。そう考えて、少しホッとしたその瞬間、突然目の前に二人組のむさ苦しい男の人が現れた。

 

 驚いて声を上げそうになったけど、グッとがまんした。

 彼等は大小は下げてないからお侍さんでは無さそうだけど、町人にも見えない。

 二人とも笑顔だ。だけどそれは親しみがこもった笑い顔などではなく、薄気味悪くヘラヘラと笑っている。

 本能的にコレはまずい!と、すぐに逃げ出そうとしたのだけど、不意にガシッとわたしの両肩が掴まれ、身動きが取れなくなった。

 振り返らなくてもわかる。さっきまでわたしの後ろを歩いてた人だ!


 ───ぞくっと背筋が凍り、身体が強張った。

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