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異世界からの転生 その2

 

 ───で……あれ?あたし、あの時に死んだんじゃなかったのかな……?

 

 最初は目が見えなくって周りが見えなかったし、周りから聞こえる言葉も知らない言葉ばかりでとても不安だったけど、あたしを大事そうに抱いてくれる暖かな感触はとても心地よくって気持ちが良かった。落ち着いて考えてみれば、もしかしたらそうなのかな?って思ってたけど……何日か経つと薄っすらとだけど目も見えてきて、小さくなった自分の手足を見て確信した。

 

 そうか……あたしは生まれ変わって赤ちゃんになっちゃったんだ……。

 

 前に近所の食堂で料理の下拵えの手伝いをしていた時に、食堂のおばちゃんが話してくれた事を思い出した。その時はただ聞き流してたけど、今では実感して納得できた。

 

 「人や動物や命があるものはね。生き変わり、死に変わりするんだよ。そこいらへんを歩いてる野良犬や飛んでる鳥も、昔は人間だったかもしれないねぇ。だから、生き物は大切にしないといけないよ」

 

 って、笑いながら言ってたけど、なにもあたしが鶏を絞めている最中にそんな事言わなくても……。お腹を空かしてお母さんの帰りを待ってる時に、たまにご飯を食べさせてくれたりとかやさしいおばちゃんだったけど、ちょっとイジワルなとこもあったなぁ……。

 

 どうせなら、お母さんの居る天国に行くのでも良かったんだけど……せっかく生まれ変わったんだったら、今度はお姫さまやお貴族さまに……とは言わないけど、お金持ちの家に生まれてるといいなぁ……。もう貧乏な生活はイヤだなぁ……。

 



 ……それにしても……ここはどこなんだろう……?

 

 ここは前に住んでいた家や神殿で見慣れた石造りではなく、木で出来ている家の様だ。床も家具も木で出来ているみたいだ。それにあたしが前に住んでいた家よりも随分と広い。

 見慣れない木で出来た家の光景に「これはもしかして、お話に聞いた森の奥に住むというエルフの家?なら、あたしもエルフになったの!?」ってちょっと期待したんだけど、多分、あたしの家族なんだろう人達を見てすぐにそれは違うって事はわかった。

 

 耳は短いし、肌の色は真っ白じゃないし……。エルフなら、もっとスラっとしてて、きっと美人だよね。ちょっと残念……。

 

 どちらかと言うと彼等は小柄で、スラっとしている体型とは言い難く、顔つきも、むしろ前に住んでた街の外れにあった鍛冶屋のドワーフのおじさんに似ているかなって思った。

 それと服装も見た事が無い。どうやら1枚の大きな布に袖があって、そこに腕を通して腰に紐を巻いて着ているだけの簡単な服だ。

 

 ……ちょっとボロよね……。

 

 よく見ると彼らの服は継ぎ接ぎの跡が見えたり、着古して色あせている。あたしの今巻かれている布も奇麗に洗ってはあるけど随分と使い古されている感じだ。肌触りもざらざらしている。良く言えば大事に使っているんだろうけど。

 お下がりのお古ばかっかり着ていたあたしが言うのもなんだけど……あまり裕福そうではないみたい……でも、寒い時期でもないのに部屋の真ん中で毎日ずっと火を焚いてるわよね。あたしの家なんて、雪が降る日でも、マキ代が無くって暖炉に火がつけられない日が多かったのに……もしかして裕福な家……?でも、そう言えば暖炉やテーブル・イス、ベットも見当たらないし……。

 未だ寝返りすらも満足に出来ない状況なので、誰かに抱かれるか、負ぶわれてでしか移動できないから目につく物しかわからないが、彼等の生活振りは実に不思議だった。

 テーブルやイスは使わず、木の床の上に座ったり、寝転んだりして生活している。それも靴も履かずに裸足でだ。

 あたしの家だって、貰い物のボロだけど、テーブルやイスくらい会ったのに……ベットはお母さんと一緒に使ってたから一つだけったけど……

 やっぱり貧乏な家に生まれてきてしまったのか……と残念に思っていたが、その火の回りを囲んで座り、楽しそうに食事をして笑いあってる彼等の姿を見ていると、ホッコリしてきた。

 お母さんはとてもやさしくって、何時もあたしの事を大事にしてくれてた。それでも2人っきりの生活はやっぱり寂しかった。兄弟が沢山居るお友達が羨ましかった。

 未だここはどこの国なのか、何の種族の子供として生まれたのかさっぱりわからない状況に、好奇心よりも不安の方が大きかったけど、彼等の仲睦まじい様子をみて気分が和らいでいった。

 

 ……家族が沢山だ……みんな仲が良さそう……

 

 また貧乏な生活なのかもしれなけども、家族が沢山居るみたいだ。それだけでもちょっと嬉しかった。

 あの小さいのがあたしのお兄ちゃん?大きいのがお父さんなのかな?と、火の回りに座って食事をしている彼等を見ていたら、どこからかともなく甘酸っぱい香りが漂ってきた。

 

 ……ん?これはプラムの香り?

 

 香りの元を探して見ると、彼等が何やら赤い果物を美味しそうに食べていた。

 

 いいなぁ~美味しそう……

 

 その様子を見ていたら、裏に住んでた元冒険者のおじいさんの事を思い出し、懐かしくなってきた。

 おじいさんはたまに近所の子供たちを集めて、森で採った果物を御馳走してくれた。でも、その時きまって、自分の冒険譚を長々と話すのが玉に瑕だったのよね……。

 甘い物と言ったら、そのおじさんがくれる果物くらいしか食べられなかったから、あたしは何時も喜んで黙ってその自慢話を聞いてた。

 おじいさんの話は貰った果物に夢中でほとんど聞き流してたけど、何時も同じ話しばかりだったのでイヤでも覚えてる。何時も決まって若い頃の魔物退治の話だ。本人曰く、街を救った英雄だったそうだ。なつかしさと共にその話を思い出し、同時に彼等を見ていて、ちょっと嫌な予感がしてきた……。


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