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異世界からの転生 その1

序章



 (……ン……)

 

 顔に光りがあたる感じがして、朝かぁ……って目が覚めた。

 

 ───いや、まって。あたしはさっき死んじゃったはずだ。

 ……なら、ここは死んだあとに来るというあの世なのだろうか?傍で人の話し語のようなものが聞こえているけど、聞いた事のない言葉に自然とそう思えた。

 

 (……ここ、お母さんがいる天国だったら、いいなぁ……)

 

 天国って、どんなとこなんだろう?素敵な所だったらいいなぁっと、ちょっとワクワクして周りの様子を見ようとしたけど……

 

 (……ん?)

 

 瞼が重い感じがして目が開かない。どうしたんだろう?と、目を触るべく手を顔までもっていって確認しようとしたが腕に上手く力が入らなかった。

 

 (……アレレ?)

 

 なんでだろう?取り合えず上手く動かない腕を何とかやっとの事動かして、顔まで手を持ってこれた。顔を触ってみて違和感を覚えた。何時ものガサガサした肌じゃない。ツルツルとしてる。水仕事であかぎれまみれの手のはず手もだ。それに何か全体的に小さいような……

 

 (……自分の体じゃないみたい……死んで、あの世に居るからなのかな……?)

 

 周りに人がいるようなので、声をかけてみようとするも、うーうー言うだけで言葉にならず上手くしゃべれない。取り合えずなんとか体が動かないものかともじもじしていると、突然体が浮き上がるような感覚に襲われた。

 

 (───え?なに!?……あっ……暖かい……)

 

 誰かに抱かれている様だった。何だか懐かしい、やさしい匂いに包まれた。

 なんだか安心するな……って思っていたら、柔らかくて暖かいものが顔にかぶさり、口先に何かが差し込まれて口の中に液体が入ってきた。

 

 え!?ナニ!?

 

 ビックして反射的にソレを吐き出そうになったけど、体はソレを求めていたかのように自分の意志とは関係なくゴクゴクと飲み始めた。

 

 ……温くって、ほのかに甘い……って、この味はもしかして……お乳?母乳?えっ!?なんで!?───なんで───!?

 

 突然の事にパニックになったけど、体は自分の意志とは関係なく夢中に母乳を飲み続ける。

 暫く夢中に飲み続け、ようやく体が満足したのか乳房から口を離すと、自分の意志とは関係なくゲップが出てきた。そうすると少し心も落ち着いてきたのか自然と眠くなってきた。

 

 (何が何だが……よくわからないけど……)

 

 眠気には逆らえず、目が覚めたのかと思ったら、またすぐ眠ってしまった。

 



 「……あなたはね『神に祝福された子』なんだから……きっと大丈夫よ……

 ……ちょっとそっそかしい所が心配だけど…………

 ……ゴメンね……元気でね……………」

 

 それがお母さんの最後の言葉だった。

 粗末なベットに横たわるお母さんは最後に残った力を振り絞ってそこまで言い終わると、ゆっくりと瞼を閉じ、その目は二度と開く事は無かった。

 握っていたその手が段々と冷たくなっていくのを今でもしっかり覚えている。

 

 「お母さん!!ダメッ!いっちゃダメッッ!」

 

 隙間風が入り込む暗く狭い部屋の中、その日一晩中、お母さんの名前を叫びながら枕元で泣き続けた。その日はあたしが10歳になってすぐの事だった……。




 

 「神様やね、神様の御使いである精霊様を見れたり、お話しが出来る人の事を『神に祝福された子』っていうのよ。精霊様は「魔法」を使えるようにお手伝いしてくれる大事な存在なの。それが見えたりお話しが出来るのってすごいのよ!良かったわね!」

 

 って、お母さんが教えてくれた。でもね、あたしには全然嬉しくなかったのよね……。

 

 その契約に必要な「魔力」ってのが、あたしには全然なかったの。

 それに契約って言っても、精霊さまがその人の持つ魔力にひかれて勝手に契約するから別に精霊さまの事が見えなくても、魔力持ちだったら何時の間にか契約してて、魔法が使えるようになるのが普通だった。

 友達がある日突然、魔法が使えるようになったのを見る度に(いいなぁ・・・・・・魔力があって……)って、とってもうらやましかった……。

 

 『神に祝福された子』って言っても、魔力の全く無いあたしが精霊さまに話しかけた所で、こっちに反応してくれる事はあまり無かったし、殆どが無視されてた。

 ただフラフラ飛んでるだけの精霊さまなんて、あたしにとってはその辺の虫と変わらなく思えた。むしろ向こうから勝手に悪戯してこない分、虫の方がまだマシだって思ってたくらいだった。

 お母さんが病気になって倒れた時も、あっちこっち探し回って精霊さまを見つけては一生懸命「どうかお母さんを治して下さい。お願いします!」って言っても……特に何にもしてくれなかったしね・・・・・・。

 精霊さまがみえるより、よっぽど魔力があった方がよかったのに……って、いっつも思ってた。




 お父さんはあたしが物心つく前に亡くなってたので、孤児になったあたしは神殿へと入る事になったの。

 別に信心深いわけでもなかったんだけど、魔力が無くっても精霊さまとお話しが出来る子は神殿では重宝されるって聞いたから。ただね……魔力が全然無いので、聖女さまになれる訳じゃないから下働きとしてだけど……。

 でもその時は「今は魔力無しでも、成長すれば魔力持ちになて、何時かは聖女さまになれるかも!」って思ってたのよ。あの白い清楚な聖女服にはちょっと憧れてたしね。

 

 ……まぁ、他に行く所もなかったしね……

 

 神殿でのお仕事はお掃除とか、神殿に集まってくる精霊さまのお世話とか……、ようは雑用とかだった。結構色々あって大変だったけど、小さい頃から家計を助ける為に近所で色んな仕事の手伝いをしてたから、慣れれば大丈夫!って思ってた。だけどね……食事だけはね……。

 

 昔は貧乏で全く何も食べられない日とかもあったので、1日2回、ちゃんと食事が出るのを聞いてとても有難く思ってたんだけど、初めて食堂で配膳された食事を見た時はとても驚いた。

 「えっ!?コレ残飯!?」って、思わず言いそうになった。それくらい酷かった。これって新入りに対してのイジメなの?って思った程だ。でも周りをよく見ると、下働きの人達ははみんな同じ食事で、後でコレが普通の食事だと知ってまた驚いたのよね……。

 

 そんな食事が毎日続くとウンザリした。それでも「何時かは魔力持ちになって、聖女さまになればきっと美味しい物が食べられるんだ!」って頑張っていたんだけど……

 ある時、下働きの先輩から「元々魔力持ちでないと、成長しても魔力持ちにはなれない」って言われて愕然とした。そんな!こんな生活がこのままずっと続くなんて、とても耐えられない!って、その日は一日中ずっと落ち込んでた。どうにかして魔力持ちになって聖女さまになれないかな?ってずっと考えてた。そうだ!精霊さまにはわからなくっても、神さまなら知ってるんじゃないかなって思ったの。直接聞いてみればいいんじゃない?って。

 

 神さまの居る場所は知ってたのよね。神殿に初めて来た時に案内してくれた助祭さまが

「この先にある本殿には神様がおはします場所になりますので、下働きのあなたは入ってはなりませんよ……」って言ったの。だからね、皆が寝静まった夜中にコッソリ本殿に入って神さまに聞きに行ったのよ。どうにかして聖女様になれないかって。だけどね……あの時助祭さまが「司祭様や聖女様以外はいってはダメですよ」って言ってたのを忘れてたのよね……。

 本殿に足を踏み入れてすぐだったわ。「……神さま、お願いがあります……」ってお祈りした瞬間、体の内側から体全体を覆うような光が出てきて、一瞬にして目の前が真っ白になって体がバラバラになる感じがしたの。そう。魔力が無いから、精霊さまと違って大きすぎる神さまの存在を受け入れる事が出来無かったの。「あ……しまった……」って思った時にはもう遅かったのよね。意識がどんどん薄れていって「これで死んじゃうんだ……」って思ったんだけど……

 

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