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引き出し
先生はいつもいらないことを母に言う。
母はいつもいらないことを先生に言う。
そういうのが三者面談だ。
少なくとも僕の場合は。
三者面談の後は、必ずと言っていいほど母と気まずくなる。
だから嫌だった。
「勉強しなきゃ…」
ベッドに潜ったせいで寝そうになっていたが、まだやることは残っていることを思い出し、勉強机へと移動した。
ふと、ペン立てに立てられたカッターが目に入る。
そして、自分の手首と交互に見ようとしてしまう。
「ダメ、ダメ」
ハッとした僕は、カッターを取り、引き出しの中へとしまった。
(さっきの僕はおかしかったんだ。そんなのだめだよ絶対。)
(早く勉強しなよ)
自分に言い聞かせて、僕はノートを開いた。
でもやっぱりまだ、引き出しをあけてしまいたい僕もいた。