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最後のデート

「そういう通達を出してくれ。ここには五千人の魔人や魔物が居る。五十人くらいなら何とかならないかい?」

「なると思います。急いで皆さんに通達します!」


 陛下がイソイソと自室に戻った。たぶん、儀式用とかそういう感じの衣装やら、募集要項をの原稿を作りに行ってるんだろう。

 ······原稿だけだよね?印刷とかしてないよね?


「印刷とかしてないよね?」

「······あぁ〜。してないと思いますよ?きっと、多分、おそらく」

「印刷は·······していないよ」

「ありがとう」


 陛下がイソイソと戻ってきた。手には募集の原稿らしき物を持っている。そして儀礼用の神聖さを感じさせる衣装を着ている。全く興味ないけど。


「はぁ······はぁ。用意できましたよ」

「じゃあ早速公表お願いします」


 白露が戻ってきた陛下を即回復させた。あぁ·····体力回復して早くやらせる訳か。鬼畜の所業。まぁ今は有事だしね仕方ないね。


「鬼畜の所業······」

「ふっふっふっ、トーラーさん今は有事です。大抵の事は許されるのですよ」

「······確かにそうだね」

「鋼のメンタル」

「なんですか、タナカさん?」

「なんでもないです」


 白露は別に微笑んでるだけなのに何があったのかな〜(棒)。まぁ本人が諦めるかみたいな顔してるし平気平気。


「皆さんにも立ち会って貰いますよ?」

「「「「ファ!?」」」」

「ここを落とした皆さんが居ないと······それに大々的に宣伝すれば各地に離散してた魔人や魔物娘が戻ってくるかもしれませんし」

「え、どうやってそんなの大陸中に広めるん?」


 まひが突っ込んだ。聞きたかった事を的確に突っ込んでくれて助かる。なんで白露がめちゃくちゃ悔しそうな顔してるの?

(私の役目が取られて悔しいのです)

 そういえば確かに白露とまひっていい感じのタイミングで質問してたな······。


「この子を使います」

「ただの虫にしかみえないんだが?」

「この子は私が創り出した人工虫です。ここからの指示をどこにいても受け取れるように受信用の虫が大陸中に居ます。ちなみに今ここにいるのは送信用の子です」

「なるほど······この虫を使って今から発表する内容をどうにか送信するわけだね?」

「正解です」


 そういえば陛下の父親は多様性の神だったっけ?その権能を使って新たな種を作った訳か·····。

 拡大し過ぎな気もするけどギリシャ神話の英雄もなんかそんなことしてたからセーフセーフ。


「さて、始めますよ」


 俺達はいつの間にかバルコニーに居た。下にはおびただしい数の魔人や魔物娘が居た。普通の人が見たらこれだけで気絶しそうな光景だ。


「我は明後日午前3時に北の軍港に彼等と共に強襲する!これまで皆には苦労を掛けてきた······。しかし!それも明後日までだ!!我々は明後日をもって平穏を取り戻すのだ!!あの地に住んでいた者も居るだろう。来たいという者は明後日、北門にくるがよい!我々と共に住処を取り戻そうではないか!!」

「「「「ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」」」」


 何という人気だ······。これまで苦楽を共にしてきたからこそできる事なんだろうなぁ。

 口調も変わってるし。多分こっちは営業用的なアレなんだろうね。


「以上だ!皆生活にもどってくれ!!」


 群衆が各々の生活に戻り始めた。オンオフはっきりしてんな······。果たして何人集まるか······。

 俺達はいつの間にかさっきの場所に戻っていた。よく見ると床に魔法陣が目立たないように書かれている。これを使って移動したのか······。


「主様、ちょっと耳を貸してください」

「借りパクしないでよ?」

「これはアレを普及させるチャンスでは?」

「なるほど······この大陸の統一と同時に普及させるのね」


 トーラーが物理と比喩両方の意味で首を突っ込んできた。能力のせいでヒソヒソ声が無意味になったか······。相談はしようと思ってたけどね?


「しかしそれでは技術の革新が見込めなくなるかもしれないね」

「国への貢献具合で住宅の権利とかそういう所で差別化を図ればいいんじゃないか?」

「「「それだ」」」

「何の話ですか?面白い虫でもいました?」

「なにそれ見たい。違う違う。実はカクカクシカジカ」

「なるほどそれは良いかもしれませんね。知識を探求してないと死ぬのとか居ますしね。あ、搾精しないと生きていけない人達はどうするんですか?」


 あ~、やっぱり居るのか。そういう人達。それはもう娼館作るくらいしか方法がないのでは······。

 いやでもそういう極力したくない人も居るか······。全員カバー出来るとも限らないし。


「各都市に娼館地区を作るのは確定ですが、そこに勤めたくない、もしくは勤められてもあまり指名されない場合に備えてそういう人達を救済するための法を作ればよいのでは?献血的な方法も並行して行うと良いのでは?」

「なるほど······。それで原案を作ってみましょう。あっ、皆さん観光は済みました?」

「やる暇無かった気がするのですが?」

「ですよね!という訳で観光をしては如何ですか?」

「そうさせて貰います」


 俺達は陛下を残して都市部に繰り出した。掘り出し物とかここならではの商品がありそうで楽しみ。


「ふむ、ここで別れて集合するとしようか」

「そうですね。3時間後くらいでいいですか?」

「妥当な時間だね」


 二人の間で別行動がトントン拍子に決まり俺達は別行動することになった。デートは二人でしたいもんね。しょうがないね。


「ところでどこに向かってるの?」

「秘密です。行ってからのお楽しみです」

「楽しみにしとくね」


 そのまま白露に付いていくと武器やら防具やら服やらを売ってる場所に付いた。デザインとかそういうのの参考に来たのかな?


「主様見てください!新素材の山ですよ!」

「そっちか〜」

「ふふふ、たまには私の糸以外のものも欲しくなるんですよ」

「そういうものなんだ」

「そういうものなのです」


 白露が色とりどりの鉱石や染料を見て、目を輝かせている。乙女の買い物には見えないけどそのギャップが凄くて尊死しそう。


「あ、主様!ここ知る人ぞ知るみたいな雰囲気を醸し出してますよ!」

「それ褒めてるの!?」

「褒めてるんですよ!そういう場所は名店が多いんです!!」

「へぇ〜、俺と合う前に誰かに教えてもらったの?」


 それだったらちょっと嫌だ。教えた人?蜘蛛?が妬ましい。白露がニヤニヤしてる。何がおかしいの?


「ふふっ、私が勝手に思ってるだけですよ。主様が想像してるような事はないから大丈夫ですよ」

「ッ!!は、はやく行こ」

「ふふっ、そうですね」


 俺達は目立たない雰囲気の店に入った。店内には黒と蒼の武器が大量に置いてあった。店主はエルフのお爺さん、だと!?


「久しぶりの客じゃな······。武器ならそこに置いてある。なんじゃ?エルフの武器屋がそんなに珍しいか·····」

「別に、そんな事は······」

「ふんっ、嘘じゃな。目が言っておるよ」


 店主はそう言って店の奥に引っ込んでしまった。気難しい······。気難しくなってしまったのかもしくは元々そうだったのかは分からないけど······。


「う〜ん、そろそろモーニングスターも寿命ですし、こんなところまで足を運んでみましたが素材が凄いだけで大したことありませんね〜」

「は、白露。ちょっと声を抑え」

「主様もそう思いますよね?だってこの剣とか私が織った方が切れ味鋭いですよ?」

「アレだよ。きっとあの人は売り込みに特化した人なんだよ」

「主様、フォローになってませんよ······」


 白露に呆れられた!?ショック······。でも白露の言うことは尤なんだよなぁ。作るのは専門外だけど武器はそれなりに見てきたつもりだ。

 そんな素人目に見てもこの武器達の出来は悪い。白露の剣の方が切れそう。


「たまにそういう事を言う輩はおるが、皆この試し切り用のダミーに傷すらつけられん。いわれのない苦情を言うだけなら帰っとくれ!」

「ふんっ!なんだ······私の手刀で余裕で切れる程度のダミーじゃないですか。こんなので威張ってる人の店に来て損しました。主様、帰りましょ」

「そうだね」

「待て待てまで待て待て!!」

「なんですか?忙しいんですけど······」


 ホントだよ。レベルの低い武器しか作れない気難しい人の店で誰が武器買うかよ。賑わってないのも閑古鳥が鳴いてるだけなのわかったし。早くデートの続きしたいのに······。


「行くのは、これを見てからにしろ」

「こっちだって暇じゃなっ!?」

「主様、どうしました?ただの古びた剣じゃないですか」

「その剣から凄まじい空間魔法のエネルギーを感じるんだ······」

「えっ!?なぜ最初からそれを置かないクソジジィ!!」


 白露が素の口調に戻った!?よっぽどの事だぞ!!素の口調もカッコよくて好き·······。


「これは······ワシの黒歴史みたいな物だ。製法が気に入らんからもう作っとらん。だが······こんなものでもワシの武器だ。せめて供養してやりたかった······。だからこれは納得できるやつにしか売らねぇ事にしてたんだ」

「なるほどね······」

「では、双剣、射程の長い鈍器、その剣、そして槍を貰おう」


 白露カッコいい······。抱いてほしい。違う、そうじゃなくて。結局全員分買っていくそういうところ凄い好き。


「分かった。説明書は着けておこう」


 俺達は武器を買って店から出た。全財産の8割くらいの値段だったのに「勝てば貨幣なんてただの玩具になりますから」ってポンって出しちゃったからね〜。

 白露カッコ良かったなぁ······。素敵!抱いて!って言葉が出かけたし。


「いや〜、いい買い物しましたね」

「そうだね。次どこ行こうか?」

「う〜ん、主様の服でも······と言いたいところですが派手すぎるんですよね〜。こんなの主様には似合いませんし」

「そっか······」


 派手なのは確かに似合わないか······。服屋も駄目となると買い食いくらいしか無いけど後で昼食べるしなぁ······。


「主様、見てください!!」

「なになに?」

「面白そうな歌劇やってますよ。一時間ぐらいですし、ちょうど良いと思います」

「行こっか」


 都合顔を良い歌劇だなぁ······でもいい感じの時間なら見るしかない。どうせ他にやることなんかないし。


「中々の舞台装置ですね······」

「オーケストラ部隊が前に居る······めちゃくちゃ豪華」

「そうですね〜。今回の内容は邪神と先王の戦いらしいですよ」

「なにそれ楽しみ」


 めちゃくちゃ楽しかった。一時間があっという間に終わってしまった。七面六臂の活躍だったのに最後天から堕ろされるのは悲しかったな······。


「中々壮大な劇でしたね!!」

「ね!あれと先祖が戦ったなんて信じられないよ!!」

「私達の活躍も後世で劇にされてたりするかもしれませんね」

「そうだね。そうなるように頑張らないとね」

「私が居れば大丈夫ですよ。糸の船に乗ったと思ってください」

「ふくっ、頼もしいね」


 俺達は待ち合わせの場所に戻った。二人はまだ来てなかった。まぁ、2分前くらいだしね。トーラーが居るから時間ピッタリに来そう。


「おや、随分と早いね」

「なんか荷物から圧を感じるんだが?」

「そ、その格好は一体」

「これ?お祭りやってたから買ってきた」


 日本風の祭りがなぜここで······。そしてお面のデザインが完全に魔除けなんだけど。日本のお祭り姿にそれだけがミスマッチ······。


「君達にお土産だ」

「りんご飴あざっす」

「美味しいですね」

「デビルアップルっていう魔物の死骸の上に生えるりんごだ。ここでしか採れないらしい」

「キワモノ······」


 でも美味しいんだよなぁ。もしかして悪魔的な美味しさだったからデビルアップルなのかな?


「あ、そうそう。私からもお土産があるんですよ」

「圧の正体はこれだったか······」

「また凄いのを買ってきたね······」


 白露がお土産を渡した。予想した通りの反応······。まひの額に汗が浮かんでる!?一体どんな製法なんだよ······。


「さて、戻ってお昼にしようか·····」

「そうっすね」


 俺達は城の中に戻って白露が作ってくれたお昼を食べた。ヤバい。これはヤバいぞ。めちゃくちゃお腹が痛い。

 白露が失敗した?そんな馬鹿な·······うぐおっ。なんで俺以外大丈夫なんだよ······。


「絶対おかしいでしょ·····うぐっ」


 結局白露以外全員トイレに3時間くらい籠もることになった。白露は少し顔色が悪くなっていたが大したことなさそうだった。

 回復力が凄いから俺達みたいな事にはならなかったんだろう。羨ましい。


「はぁ、ひどい目にあった」

「主様、それなんですが私の作ったお昼が冷蔵庫の中に残ってたんですよ」

「マジ!?」

「はぁ······はぁ······はぁ······。捕虜が一人居なくなっている。おそらくそいつが毒殺しようとしたんだ。長年の修行でボク達が毒物への耐性を手に入れていたのは誤算だっただろうけどね」

「そんなの······はぁ······初めて知った······ふぅ······んだが?」


 まひが帰ってきた。やっぱりトーラーと一緒でげっそりしてる。俺もげっそりしてるんだろうなぁ······。

 念の為に白露に回復魔法を掛けてもらった瞬間めちゃくちゃ体が楽になった。本当に毒物だったんだ······。


「捕虜が脱走したなら伝えた方が良くないか?」

「そうですね。軍港に作戦を伝えられたら困りますし······」


 俺達は陛下の執務室に押しかけた。衛兵とかも押しのけたから多少騒ぎになってるけど脱走の方が大事だ。


「な、ななな、何ですか!?」

「カクカクシカジカなんです!!」

「なるほど······分かりました」


 陛下が机の上のボタンを押した。ゆ、揺れ!?地震かな?この揺れだと津波g······城壁の出入り口が閉じられた······?

皆さんもうそろそろ蹂躪が始まるよ

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