修行開始
「起きたか·····」
「あぁ、まひか。あの後どうなった?」
「降伏した兵たちは地下牢にぶち込まれたよ。降伏しない兵も居たから小競り合いもちょっと起きたが、幸いにも犠牲者は出なかった」
「そうか······良かった」
「ふわぁ〜、ここは·······?あっ、何か話してましたか?」
白露が目を醒ました。外傷は無さそうだし、体力もいい感じに見える。
ちゃんと回復できたみたいで何よりだ。
「大した事じゃない。犠牲者ゼロで奪還出来たって」
「良かったですね。主様」
「そうだね······」
「もう少しで刺されるところだったんだ、ボク達に感謝してほしいね」
「「ありがとうございます。······ん?」」
「「「いつからそこに!?」」」
「ボクそんなにステルス性能高いの·····?」
高い、というか時々地面から生えてきただろってぐらい分からないだけでいつもは存在感抜群。
「主様、それはフォローになってないです」
「白露、止め刺してるよ」
「あ······」
トーラーが拗ねて体操座りをして、のの字を書いている。社畜だっけ?その人達くらい哀愁がただよってる。
「こほん、大丈夫ですか?」
「「「「あ、ハイ」」」」
「ありがとうございました。この主都を取り戻せたのはあなた方のおかげです。何とお礼を申し上げればいいか······。ささやかですが宴の用意もしてあります。ぜひくつろいでください」
「あなたに頼みがあります」
「なんでしょう?」
「勇者を倒す方法を、教えてください!!」
白露が、頭を下げた······!!白露がこんなことをするなんてこないだの負けと今日の負けがよっぽど悔しかったんだろう。
「俺からもお願いします!」
「ボク達からもお願いします!どうか教えてください!!」
「·······厳しい過程が待っていますが、大丈夫ですか?」
「「「「それで、あの勇者に吠え面をかかせられるのなら!」」」」
「そうですか······。とりあえず宴でくつろいでください。これが最後かもしれませんから·······」
不穏な事を言って陛下は部屋から出ていった。そんなに厳しい修行が待っているのか······。
しかし、そうまでしないと倒せない勇者とは一体·······?
「主様!どうしてあなたまでお願いしてるんですか!あなた達もおなじです!!苦労は私だけがすれば······」
「それじゃあ駄目なんだ。白露一人に任せたら一生負い目を感じる事になる。もしかしたらそれが原因で嫌いになってしまうかもしれない。だから、いつまでも白露の隣に居るためにお願いしたんだ」
「それなら、仕方ないですね///あなた達二人はやる必要なんてないじゃないですか!!私達に任せればいいでしょう!」
「勇者にやられて悔しいのは君達だけじゃない。それにボク達も今回の戦いで弱さを痛感した」
「そんな事言われたら何も言えません。好きにしてください」
白露はこんなこと言ってるけどニヤニヤしてる気がする。肩の震えとか声の感じでなんとなく分かる。
「さ、行きましょう。多分兵達が待ってますから」
「分かった」
部屋から出て白露に着いていった。ご丁寧に案内表示とか地図がちゃんと貼ってあった。さっきまで占領されてたし、多分人間のものだろう。
「ここですね」
「デカイ扉だな〜」
「もうそろそろ開くと思うよ」
巨大な扉がギギギギという音をたてながら開いていく。建て付け悪いのかな?後で言っとこう。
俺達が開いた扉から中に入ると破裂音と共に何かが顔に纏わり付いてきた。
そして、暗かった部屋に徐々に明かりが灯っていく。
「「「ウォォォォォォォォォォォ!!」」」」
「本日の主役の四人がやって来ました。皆さん、盛大な拍手を!!」
窓ガラスが割れたのかと錯覚する程のおびただしい拍手が俺達を包んだ。
やばい、泣きそう。こんなに感謝されたことないから涙腺が·····。
「それでは、一言いただきたいと思います」
「よく生き残った!歓喜に震えるがいい!!」
白露かっけぇ······。白露が代表に選ばれたところ、陛下と白露のパワーバランスが伺えるな〜。
そして、宴がはじまった。どこもかしこも騒ぎに騒ぎまくっている。
上品、とは口が裂けても言えないが、全員が超楽しんでいるのが伝わってきた。
「主様、コーヒーとかお酒とか飲まないんですか?」
「コーヒーは飲んだら寝れなくなりそうだし、アルコールは戦いが控えてるのに飲んで脳をいじめるのもなぁと思ってね······」
「主様は細かい事を気にしすぎですよ!!それにこの宴は夜が更けるまで続きますよ?コーヒー飲んでもバチはあたりませんって!!」
「酔ってる?」
「酔っ払ってなんてないですよ〜。嫌だなぁ〜」
そう言って背中をバシバシ叩いてきた。これを酔っ払いと言わずになんて言うんだよ。
まぁ、夜更けまで続くならコーヒー飲んどくか······。
「何これ不思議な味ッ!」
「なんでもここらでしか採れない豆らしいですよ」
「はぇ〜、そうなんだ」
宴もたわけになってきた。夜風が気持ちいい。この大陸月すら真っ赤だ。
地面も暗い紫色で最初は暗い印象を持っていた。でも、違った。
ここの人達は毎日を楽しそうに生きている。この宴がそうだ。多分、首都の住人全員が参加してる。
本当にバカ騒ぎしてるだけだ。でも、マナーごってごての現実世界側で見えなくなってた物がここにはある。
「主様、酔ってます?」
「そうかもね······。この景色、無くしたくない、そう思わない?」
「······そうですね」
「こんなところに居たのか······。主役が黄昏れたら寂しくて騒げないだろ?」
「の割には騒いでない?」
「まだ気付いてないからな」
俺達は宴の席に戻ってバカ騒ぎに混ざってきた。いつまでも続きそうだったが皆疲れて寝てしまっていた。それは陛下も二人も同じだった。
「主様······行きましょう?」
「分かった」
〜〜〜〜〜〜〜〜察して〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ふわぁ〜あ。なんで宴会場······」
「何言ってるんですか?ここで寝ましたよね?(こっそり移動しときました、私に合わせてください)」
「そうだったね」
「おはよう、君達よく寝れたかい?ボクは全く」
「こっちもだ······」
二人共酔いつぶれて寝てたからね······。バカ騒ぎの時普通に飲んでたし二日酔いってやつかな?
「心の·····準備は······できましたか?」
「で、出来てます」
「では、付いて来てください」
二日酔いでフラフラしてる陛下に着いていった。玉座の間で陛下は止まった。ここに勇者に勝つ鍵が······?
「どこに勇者に勝つ鍵が······」
「目の前にあるではありませんか」
「と、扉······?」
「そう、この扉は初代の魔法を応用して作った物です。中に入っている間は外での時間も経ちませんし年も取りません。あなた達にはこの中で私の課した課題をクリアしてもらいます」
あ〜、ガチ修行の奴だ。でもそこまでしないと勝てないよね。
剣姫すら絶対障壁貫いてくるんだから······。
「課題はあちらのモニターからお届けします」
「ここでなぜ渡され······」
白露ナイッスゥゥッゥゥゥ!!俺達全員が聞きたかった所を聞いてくれて本当に助かる。
「かっこいいからです」
「はい?」
「かっこいいからです」
「ア、ハイ」
この人、真面目そうに見えておちゃらけた性格だな?別にいいんだけどね?いいんだけどね。
なんかアレだな〜。考えても仕方無いので俺は考えるのをやめた。
「入ればいいんですか?」
「そうです」
俺達は無心で扉の中に入った。扉の中には白い空間が広がっていた。
そして中央にはには電子操作盤。なるほど、これを触ればいいわけか。
「さて、皆さんにはそれぞれ課題を出します。これをクリアした時、勇者なんて目でもない程強くなっているでしょう。ちなみに私は全てできます」
「早くしてくれませんか?」
白露が苛ついてる······。確かに自慢とか要らない情報だし絶妙にイラっとくるし仕方ないね。
「課題は既にあなた方のポケットに入っています」
い、いつの間に。でも冗談という可能性も·······無くなったわ。
その紙には白露の全速力の攻撃を8割避けるという文言が書かれていた。
コツとして空気の流れや魔力の位置を感じて軌道を予測すると書かれていた。これくらいしないと勝てないのか·····。
皆豆鉄砲を喰らった鳩みたいな顔してるからきっと大変な事が書かれてたんだろうな······。
「じゃあ、頑張ってください!ちなみに右に行くと部屋があるのでトーラーさん達はそちらへ」
「「あ、ハイ」」
さぁ、修行回です。皆さん、これから起こるであろう蹂躙劇を期待して待っててくださいね!