逃げてきた先、修羅場
「こ、これは······!!」
丘の下には石造りの砦とそれを取り囲む大量の人?いや、違う!魔人だ。魔人がいる!!
魔人、本来進化出来ない筈の魔物が強くなりすぎた結果、人型と知性を手に入れた姿だ。人型はオフの姿で本気になると魔物の姿に戻るらしい。
ただ、魔物の姿に戻ると元の姿より大型になっていたりするらしく、エネルギーの消費が激しいらしい。
「取り囲んでいるということは拠点があるという事だ。物資を支援する代わりに泊めてもらおう」
幸いにもトーラーの量産くれたアレがある。補給部隊としては一級品の筈。まぁ、俺は人間だから追い返される可能性はかなりあるけど······。
「主様、ここは私に妙案があります」
「任せる」
白露が用意する物があるとそこら辺の森に入ってから数分が経った。遅いな······。そんなに手の込んだ計画なのかな?
「で、白露これはどういうこと?」
「見ての通り行商人のコs·····変装です」
コスプレって言いかけたぞ!!まぁ、これを行商人っていうのには無理があるって。え?どんな格好をしてるのかって?白露は裕福そうな格好で俺に首輪を着けている。
行商人っていうか奴隷商人だよね?後の二人は角とか着けてるだけなのに······。絶対首輪付けたいだけでしょ。
そもそも俺別に頑張ればドラゴン的な腕に出来るんですけど?
「さて、今夜の宿を確保しに行きましょう」
「「「おー!」」」
拠点の位置は多分森の中にあると思っていたが、白露が昨日準備していた時に痕跡を見つけたらしく、白露に案内してもらってる。
「おや、こんな森の中に何か御用ですか?」
「恥ずかしながら道に迷ってしまいまして······。今日の宿を、と思いまして······」
「それは大変ですね!こんな何も無いところでよかったらどうぞ泊まっていってください!」
「そ、そんな、いいんですか?」
「泊めてほしいんですよね?」
「それはそうですけど······。何も対価を求めないなんて、逆に怪しいです」
白露が辿り着いた先に居たのは飛蝗の魔人だった。かなり立派な飛蝗の足を持っているからすぐ分かった。白い蛾、蚕か?のモンスター娘なんていないからね······。
その蚕の魔人は白露の発言にも気を悪くすることはなく、むしろ生暖かい笑顔になっている。どうして·····。
「ふふふ、好意的すぎますからね。その姿勢は好感を持てますよ。大丈夫です。私達は戦う力はおろか、普通の生活すらままなりませんから······」
「あぁ、蚕だからだね?」
「鋭いですね。羽が重くて動きが緩慢になりがちなんです。ところでそちらの男の方は」
触れるのおっそ!まぁ、白露との会話に忙しかったんだろう。そう信じたい。白露、ちゃんといい感じの設定考えてくれ──
「おt······愛玩奴隷です」
「そうですか······。まぁ趣味は人、魔物それぞれですね。あんまりハッスルしないでくださいね」
「は、ハイ」
白露が押されている!?この人もとい魔人、出来る!!もしかして迫力だけで魔人にまで至っの!?この人、やばい!
「そういえばそこで戦禍が広がっていましたが、何かあったのかい?」
「あなた方はここら辺は初めてでしたね。最近北から連合軍が攻めて来ているんです」
「なるほど、そうなのか······」
攻めて来た!?ここへの進出かなりデリケートだったはず······。一体どこが北の諸国を纏め·····まさか神聖王国!!
あそこには教皇がいると聞く、教皇の一声があれば信徒が多い北大陸が纏まるのは十分有り得そうな話だ。やり方が狡い······。
「ここは私のような非力な魔人が避難している場所のうちの一つです」
「なら、護衛を兼ねて泊まらせていただきます」
「そ、そうですか?そこまで言うなら」
まひが敬語で喋った!?これは激レアシーン!!最近良く話すようになったけど敬語は今くらいなんじゃない!?
その後は蚕の魔人さんの厚意に甘えて、寝かせて貰った。白露達は肌触りが良さそうなシルク製の布団だったが、俺は固い地面の上だった。羨ましい。
「ゴホッゴホッ!」
何だ、急に肺に嫌な感じの感覚が······。これは、煙か!しかしなぜこんな急に煙──夜襲か!!俺は急いで白露を起こした。
「白露!」
「なんですか〜?」
「煙!」
「なっ!早くトーラーさん達を!」
「起きているよ。煙を察知してね」
「良かった」
危なかった·······。このままにしてたら手遅れになるところだっ──
「「あ······」」
蚕の人に見つかった。これは不味い。奴隷の俺がこんな気安く主人に話してるこんなところを見られたら嘘がばれる。
もしかしたらこの夜襲も俺達のせいにされるかもしれない。仕方ない。俺は自分の首に付けられていた首輪を破壊した。
お久しぶりです!週一投稿になりましたがお元気でしたか?次も土曜日に投稿しますよ!