七の段 酒呑童子、進撃
明転すると酒呑童子一行が立っている。
茨木 童子様、女どもが追いてきませぬ
酒呑 ん?どうしたんだろ
茨木 どうやら道中の橋を先回りして破壊されているようです。うまく分断された形になりましたな
酒呑 なんだ、まだ抵抗してる奴らがいるのかあ。偉いね人間って。
薔薇 いかがいたしますか?
酒呑 いいよほっといて。どうせ内裏まではあとわずかだ、さしたる抵抗もないだろうし。抵抗してるのはあの子かなあ、あの子だといいなあ、追いついてきてくれないかなあ
玉藻 ずいぶんとお気に召したようおすなぁ、あの可愛らしい大将はんのこと
酒呑 そりゃあねえ、長いこと生きてきたけど、僕と同じ「瞳」を持つ者なんて出会ったことがなかったからねえ。だって考えてごらんよ、あの子が世界中の男どもをその「瞳」で支配する、そして僕があの子を支配する。こんな痛快なことってあるかい?
玉藻 ふふふ、それはまた粋なこと
酒呑 楽しみだなあ、来たらきっと楽しいだろうなあ。ふふふ、いっぱいいっぱい可愛がってあげるのになあ
玉藻 あんまり乱暴に扱ってはだめどすえ、旦那様ぁはオモチャ与えてもすぐに壊してしまいますよってに
茨木 ほ、話をすれば、その連中がやってきますな。童子様、あいつらの処理は我らにお任せを。今度こそ、あのあの忌々しい「鬼切丸」も叩き折ってくれる。先程は喰らい損ねたが、あの渡辺綱の息子も、肝と言わずその身残らず喰らい尽くしてやるわい。
薔薇 ではわしはあの薙刀の男をもらおう。さぞかし武芸に身を尽くしているようだが、そういった努力を毒の一息で一切無駄にしてしまう事の気持ち良さと言ったら、ふふふ・・・
酒呑 うふふ、パーティーもいよいよ佳境だねえ、ではラストステージに向けて、もうひと踊りしようかあ
雷鳴とともに暗転。