五の段 両陣、相まみえる(二)
酒呑 は~いみんな、愛し合ってる、か~い
玉藻 旦那様ぁ、さすがにそれは空気読めてないでありんすえ
酒呑 そっかー
頼義 酒呑童子・・・だと!?
金平 おいおい、大将御自らご登場かよ
酒呑 ごめんねえ、本当はもっとゆっくり来るつもりだったんだけど、女どもが思ったより早く進撃して言っちゃってさあ。すごいね、女のあの瞬発力って
頼義 あれは、貴様の魔術の成せる技か、酒呑童子
酒呑 みんな僕のために張り切っちゃてさあ、僕はホント幸せ者だなあ
頼義 女を盾に使うとは・・・この下郎、疾く地獄へ帰れ!
頼義、酒呑童子を睨みつける。酒呑、頼義の「瞳」に気づいて
酒呑 ん?んん?んんん~?玉藻~、驚いたなあ、この子僕と一緒だよ
玉藻 おやまあ、まっこと、同じ瞳を持つ御仁がいらしやるとはなあ
頼義 なんのことだ?
酒呑 知らないのかい?気づいていないのか、こりゃあ罪深いことだなあ
頼義 無礼な!私を馬鹿にするか!
頼義、激高して酒呑童子に斬りかかる、すんでのところで薔薇に止められる。
薔薇 酒呑童子様を傷つけるものは許さぬ、この薔薇の毒を浴びて死ね!
金平 あぶねえっ!
酒呑 あははは、気をつけたほうがいいよ~、この薔薇ちゃんはねえ、全身が毒で出来てるんだ。爪で一かすりでもされれば、あっという間に全身に毒が回ってのたうち回ることになるよ~
頼義 くっ・・・
酒呑 と、いうわけで、僕たちはこれから天皇絶対殺すマンになって内裏まで向かうんだけど、どうする?
金平 「どうする?」だあ?ぬかしてんじゃねえよ、てめえらを目の前にして黙ってそのまま通す坂田金平様だとでも思ってんのかよこのボケがあ!
金平、マサカリを振りかざして襲いかかるが酒呑童子躱す。童子の前に玉藻の前。
玉藻 ご挨拶が遅れて失礼しおす。白面童子・・・もっともこの名は好きではないおすえ、「玉藻の前」と呼んでおくれやす
金平 あ?上等だ、タマモだかマリモだか知んねえが女でも鬼が相手なら手加減しねえぞオラぁ!
玉藻 (呪符をかざして)動くな、坂田金平
金平 ぐっ!?(動けない)
玉藻 名前に「呪」をかけましたえ、動けましやせんよう
季春 な・・・!?道家仙道!
貞景 くそう!
貞景、竹綱、玉藻に打ち込みをかけるが、玉藻それをよけながら
玉藻 貪狼、巨門、禄存、文曲、廉貞、武曲、破軍、紫薇大帝来臨守護急々如律令!
貞景、竹綱、動けなくなる。
季春 「北斗踏み」・・・北斗七星をかたどることで紫微大帝、つまり北極星のごとく動かなくさせる仙道の秘術・・・か?
玉藻 ご解説感謝どすえ、これで残るは主さんたちだけだわえ
頼義 くっ・・・
茨木 ここはこの茨木にお任せを、渡辺綱の息子の生肝、さぞ精がつくであろうな
薔薇 いやわしがやる。一人一人できる限り長ぁく苦しみ続けるようにゆっくりと毒をそそいでいってやるわ
酒呑 まあまあ君たち、君たちはよく働いてくれているよ。そんなに気張ってたら疲れちゃうじゃないか、みんなが苦しい顔をしているのは僕はつらいなあ
三人 きゃ~☆童子様やっさし~い♡
酒呑 だからここは僕にお任せよう、な~に首をちょんちょんちょんっと切り落とすだけだもんね、非力な僕でも簡単さあ
金平達 ぐっ、うぬぬ・・・
酒呑 だから二人は生き残りを片付けといで。ああ、食べ過ぎないようにね
二人 は~い☆(去る)
頼義 ふ、ざけるなあっ!
頼義、再び酒呑童子に躍りかかる。
酒呑 おおっと、なかなかやるねえ、すごいすごい
頼義 おのれえっ!
酒呑 ストップ!
頼義、ピタリと止まる。
酒呑 女の子がそんなものを振り回しちゃあいけないなあ、僕悲しくなっちゃうよ。さあ、刀なんか捨てちゃってリラックスしなよ
頼義 ・・・はい、童子、さま・・・
金平達 !?
酒呑 そうそう、そんな怖い顔しないでさあ、もっと笑顔におなりよ、そんで僕らと一緒に楽しく生きようよ、人間どもを皆殺しにしてさあ
頼義 はい・・・♡はい、童子様、あなたのお望みのままに・・・
金平 な、何言ってやがんだコラ!てめえ、なにしやがった!?
酒呑 さあいい子だねえ、おいで
酒呑童子、手を差し伸べる。頼義、その手を受けようとした瞬間に季春が割って入り、スマホのフラッシュをたく。
酒呑 うわっ、まぶしっ!
頼義 (術が解ける)はっ!い、今のは・・・!?
季春 頼義どの、こやつの眼を見てはなりませんぞ、これなるは「魔魅の瞳」、見つめた相手を意のままに従わせ、人形のように操る邪眼でござる
頼義 邪眼!?
季春 令・百・由・旬・内・無・諸・衰・患!
全員の金縛りが溶ける。
金平 うわっ、ととと
玉藻 あらあら、妾の禁足の術を破るとは、とぼけたお顔をしてとんだ狸どすなあ
季春 驚いたのはこちらじゃわい、まさか「魔魅の瞳」を持つ者に二度も続けて出会うことになるとはのう
頼義 二人・・・?
酒呑 ほら、この子気づいてないんだよ、なんで教えてやらないんだよ意地が悪いなあ
頼義 なにを、さっきから何を言っているのだ貴様!?
酒呑 君さあ、昔から男の人に頼み事をして断られた事ってないでしょ?
頼義 な、なにを馬鹿な
酒呑 ないでしょ?
頼義 う・・・
酒呑 君のその瞳は、あらゆる男を従わせる悪魔の瞳、僕のはすべての女性を従わせる聖なる瞳、僕らは似た者同士だねうふふふ
頼義 ふ、ふざけるな!貴様と同じであるものか!
酒呑 同じだよう、人を操り、意のままに従わせるのは楽しいだろう
頼義 違う・・・違う!
酒呑 違わないねえ!君も、僕と同じ、鬼だ!
頼義 違う!違う違う違う!
頼義、むちゃくちゃに太刀を振り回す。酒呑童子なんなく頼義をねじ伏せる。
金平 ガキんちょ!
貞景 くっ、かくなっては作法も是非もなし、全員でかかるぞ!
子四天王、4人がかりで攻め立てるが、酒呑童子一人に全く歯が立たない。
竹綱 ぐはっ!
貞景 な、なんと、酒呑童子、これほどとは・・・!?
季春 どこが非力でござるか!肩書に偽りありですぞ、JAROに訴えるでござるよ〜!
酒呑 違うよう、僕が強いんじゃなくて、君たちが弱いんだよう
四人 ・・・!
酒呑 まあいいや、そろそろ殺そう、もう飽きた
頼義 く・・・
玉藻 旦那様ぁ、もうそんなのほっといて内裏に向かいましょう。宮中ではきっと妾達を歓迎してくれるためにごちそうをたーっぷり用意してくれてはりますえ。ふふふ、文字通りの「酒池肉林」どすなあ
酒呑 うん、そうだね、行こっか
酒呑童子と玉藻、キャッキャウフフとはしゃぎながら去る。残された五人、満身創痍。
金平 ・・・くっ、そおおおおおおおおおおおお!
暗転