四の段 酒呑童子、出陣
再びやかましい音楽とともに酒呑童子と三人娘登場。踊るのか歌うのかひとしきり暴れた後、四人落ち着く。
玉藻 旦那様ぁ、これどうしはります?丹波の国主のク・ビ
首の入った袋を投げつける。
酒呑 いらないよ、そんなお歯黒くさいオッサンの首なんて。そこらへんに捨てときなよ
玉藻 は~い(袋を蹴飛ばす)
茨木 丹波国はすでに我らが勢力下に。摂津は全滅とまではいきませんでしたが、当初の目的である住吉大社は首尾よく焼き払うことができたので、あとは放っておいても問題ないでしょう
酒呑 うむ
薔薇 二十年前、憎き源頼光に加勢し、童子様を弱らせる毒酒を飲ませた住吉、熊野、岩清水の三神社、此度は加担させぬ、瓦一つ残さず灰にしてやります
酒呑 んーいいねえ、首尾は上々だねえ、みんな、こんなに僕のために頑張ってくれるなんて、僕は幸せだなあ~
三人 はい、童子様☆
酒呑 これからも僕のためにい~っぱい殺して殺して殺しまくってね~
三人 はい、童子様♪
酒呑 う~ん楽しいねえ、楽しいねえ
玉藻 さしあたって旦那様ぁ
酒呑 ん?
玉藻 丹波の国軍の残党が押し寄せてまいりんす。いかがいたしやんすかえ?
酒呑 あれま、司令官がいなくなったっていうのに律儀なもんだねえ感心感心
茨木 童子様、ご指示を
酒呑 殺せ
茨木 は?
酒呑 聞くまでもない、逆らう奴は殺す、逆らわない奴も殺す。それが僕らのモットーだろう?ならする事は決まってるじゃないか
茨木 は、では(愉悦の表情)
薔薇 ならば、わしは茨木が暴力という災厄を撒き散らしたそのあとに、毒と疫病という災厄を振りまいてやりましょうぞ。ふふ、我らが通り過ぎたあとには柱の一本も残らず、草木の一本も生えぬわ。ふふふふ
二人去る。酒呑童子と玉藻二人っきり。
玉藻 あれまあ、気ぜわしい方々じゃのう。ですが、いかにあの二人が一騎当千の強者とは申せ、さすがに少し兵力をすりつぶしすぎはりましたなあ
酒呑 だねえ~、まあ大江山で兵を挙げてからこっち、三日三晩飲まず食わず、眠りもせずに戦を続けてたんだからねえ
玉藻 では、ここらぁでしはりますか?
酒呑 そうだね♪ちゃちゃっとやっちゃおうか。とりあえず生き残った女どもを集めておくれ
玉藻 もう揃えてありますえぇ
酒呑 う~ん、さすがマイハニー、行き届いてるねえ。では早速やろうか
玉藻 あい
明かりが変わり、酒呑童子のみが舞台に立つ。
酒呑 ん~、テステス、みんな聞こえてる~?やだなみんな表情が固いなあ、ほらスマイルスマイル。しょうがないなあ。みんな~、愛し合ってるか~い?ん?まだ固いなあ、愛し合ってるかあああ~い?ああもうそんなに泣き叫ぶことないじゃな~い♡わかったわかった、じゃあこうしよう、みんな、し~っかり僕の瞳を見てごらん、はい、さん、にー、いちっ
禍々しいBGMとともに暗転していく。