三の段 頼義、子四天王と遭遇す(二)
季春、スマホを片手に頼義ににじり寄る。頼義動かず。季春、頼義と並んでチェキ。
季春 ちゃり~ん(写メる)
頼義 きゃっ!な、なんなのですか!?
季春 ウホッ、これはいい写メが撮れたでござる、さっそくツイッターにあげるでござる
頼義 ついったー?
季春 拙者のツイッターはフェイスブックにも連動しているのであっという間に世界中に拡散されるでござるよ
頼義 なんだかよくわかりませんがやめてください~
季春 「近所のJKとランチなう。これからフタカラ予定なり」
金平 ウソ書くんじゃねえよ
頼義 や・め・て・ください~!いったい、さっきから季春どのがいじっているものはなんですか?
季春 これはですな、わが卜部氏に代々伝わる秘宝、その名も「水鏡」でござる
頼義 水鏡?
季春 拙者は「スマホ」と呼んでいるでござる
頼義 すまほ???
季春 さよう、ほら(自撮りモードにして見せる)
頼義 あ、ホントだ、鏡だ
季春 この鏡には太古の秘術によって、遠くの者と連絡をとったり、一瞬で風景を写し取ったり、あらゆる情報を取得することができたりと、様々な奇跡をおこすことができるのです
頼義 なんと、季春どのは神仙の術をお使いになられるのですか
季春 自慢ではござらんが拙者武術はからっきしでござる、ですが卜部家に伝わる仙術とこの「水鏡」を使って情報収集や後方攪乱などはお手の物ですぞ
頼義 すごい、まったく子四天王の皆様は実に多種多彩な才能をお持ちなのですね!季晴殿、ぜひそのお力をこの頼義にお貸しくだされ!
季春 よろこんでお力になりましょうぞ、拙者、泣く子とJKにはめっぽうよわいでござるよデュムフフフフフフフ
頼義 あ、ありがとうございます
金平 何言ってんだよてめえ!正気かお前ら!
季春 ふむ、伝説の「魔魅の瞳」でござるか、まさか本当に存在するとはのう
金平 なにブツブツ言ってやがんだよ!お前ら頭にウジでもわいたのか!?なにコロッと態度変えてやがんだよ!
渡辺 だってなー
季春 かわいいJKに頼まれたら断れないでござるよ
貞景 わんわん
金平 ふざけんな!俺は行かねえからな!道長の命令がなんだ!酒呑童子だあ!?そんな奴とゴロまくなんざ、俺は真っ平御免だね!
頼義 金平殿、お願いです、どうかその剛力無双のお力、この頼義にお預け下され
金平 い・や・だ!
頼義 お願いします!
頼義、金平と目が合う。例の好感度が上がるBGM。金平逃げる。
頼義 お願いします!
またまた好感度が上がるBGM。金平逃げる。以下二度三度。
金平 だあああああ!まとわりつくんじゃねえ!わかった、じゃあこうしよう
頼義 では・・・
金平 勘違いすんじゃねえ、そんなに俺を手下にしたけりゃなあ、俺と勝負しろ
頼義 勝負、ですか?
金平 そうよ、まがりなりにもあの酒呑童子を倒しに行くってほざくぐらいだからなあ、そりゃあ武芸の一つや二つ心得ているだろう
頼義 もちろんです、武芸百般、馬術に操船術に四書五経、源氏の子としてあらゆる習い事は受けております
金平 そうかい、そりゃ頼もしいねえ
頼義 ちなみに二級船舶免許も持ってます
竹綱 え!?
貞景 負けてんじゃねえか
金平 よーし上等だ、ならガキんちょ、この俺と一本勝負しな、これでな(四股を踏む)
頼義 相撲、ですか
金平 おうよ、昔っから白黒つけるにゃあコイツが一番だ、さあかかってきな
頼義 わかりました、ではこの左衛門頼義、全力で行かせてもらいます!
金平 よしこいや!はっけよい・・・のこった!
頼義、果敢にいどむが瞬殺。
金平 へ・・・?もしかしてお前、弱い?
竹綱 弱いもなにも女の子じゃないか
季春 大人げないでござるなあ
金平 う、うるせいっ!こいつがなんかイヤに威勢のいいこと言いやがるからてっきり・・・
頼義 まだまだ!
ふたたび立ち上がってなおも挑む頼義、やはり軽くいなされる。
頼義 まだ、まだまだ
何度も挑むがその度に押し返される。ついには頭を押さえられてじたばた
金平 もう諦めな、そんなへっぴり腰じゃあいつまでたっても勝てやしねえよ、そんなザマで酒呑童子と戦ったって、速攻で首落とされるのがオチだろうが。女は女らしく、おウチでかるた遊びでもしてな
頼義 まだまだ!まだ・・・
金平 いいかげんにしろ、つきあってらんねえよ(投げる)
頼義、きつく投げ飛ばされて一瞬動けなくなるが、それでも必死に立ち上がろうとして
頼義 まだ・・・ま・・・(気絶)
金平 ・・・・・・
季春 あ~あ、ガラにもなく本気出しちゃって
金平 ほ、本気になんかなってねえよ!
貞景 いや、小さい体でなかなか、根性のある・・・これはどうしてたいしたものではないか
竹綱 どうやら、ただの軽い思いつきで言い始めたわけでもなさそうだね、鬼退治のこと・・・
季春 で、どうするでござるか、金平氏?
金平 な、なんだよ
三人、金平をじーっと見る。
金平 し、知らねえよ、行きたきゃお前らで勝手にいけばいいだろうが!俺は坂田金平、誰の下にもつかねえ、俺は自由だ!
金平、そう言い捨てて去る。三人、ため息をついて頼義を介抱する。
暗転