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二の段 すゞ子、鬼退治に立つ

明転すると、正座しうやうやしく頭を下げる男装の少女が一人。あどけなさの中にも一本筋の通った、意志の強い光を持つ彼女の名は、鎮守府将軍源頼信公の娘すゞ子である。彼女の前に黒子が登場。



黒子  従一位、左大臣、藤原道長さま、おな~り~い



  黒子、一度引っ込むとすぐに杓を持って登場。この黒子は太政大臣藤原道長卿である。



黒子  苦しゅうない、面を上げよ


頼義  はっ、道長様におかれましては摂政ご就任の儀、まことに祝着至極にござりまする


黒子  世辞はよい、して、なんのようじゃ?


頼義  はっ、今日お伺いいたしましたのは、大事なお願いがあっての事でございます


黒子  うむ、申すがよい


頼義  はっ、私、今日より名を源頼義と改め、男子として帝にお仕えいたしとうございます


黒子  な、なんですと~!?


頼義  はい、この身は男として剣となり槍となって、この都の平安のためにつくしとうございます


黒子  ちょちょちょ、ちょっとまって!そんな事急に言われても・・・あれは、お父上の頼信どのはなんと言ってるの?


頼義  言ったとたんに寝込んでしまいました


黒子  ですよね~


頼義  左大臣殿、どうかこのすゞ子、いえ頼義の願い、お聞き届けくださいませ


黒子  いやいやいや、そうは言われても・・・そもそもなんでまた急にそのような突拍子もない事を思いついたのじゃ?


頼義  道長様、道長様におかれましては、当然、かの「酒呑童子」の噂はお聞き及びでございましょう


黒子  うん?あーあれなあ、うむ、まあ、のう


頼義  なぜに!なぜに道長様はじめ都のお偉方はあれほどの大事件を放置しておられるのですか!聞くところによれは奴等はすでに丹波の国を落とし、畏れ多くも住吉大社を焼き払って、今もなお都に向けて兵を進めているというではありませんか!このような明らかな反逆者、道長様おん自らの手で誅戮いたさずば、帝の御名に傷がつくばかりにござります


黒子  いや、そうはいっても、ほら、所詮田舎ものがちょっとハメ外してはしゃいでるようなもんだしねえ


頼義  いいえ、このような時にこそ摂政、太政大臣である道長様自ら軍を率いてその武威を示す時でございましょう!


黒子  いやそんな事言ったって、おじさん「光源氏」のモデルって言われてるような人物なのよ?武勇なんてかけらもないよ?ラブ&ピースが信条なのよ?それになんだかんだいったって今までだって何とか平和に過ごせてきてたんだし、今回だって、まあ、なんとかなるんじゃあないの?


頼義  甘い!甘すぎです左大臣殿!パンケーキに角砂糖乗っけてハチミツたらしたくらいトゥー・スウィートです!


黒子  すごい例えするなあ


頼義  そのように長年にわたる平穏に胡坐をかいて、日々の鍛錬を怠っていたからこそ、今日のこのような事態に陥ったのではありませんか!酒呑童子が都に攻め上ってくるという噂が近づいてくるたびに、私は待ち望んでおりました、「我こそ酒呑童子を討ちはたさん」と名乗り出る剛の者が現れるのを。しかし、都の男共は武士も貴族も毎日毎日、やれ「今日のラッキーアイテムは水玉模様のスカーフよ〜」とか「ラブライブこそ志向、アイマス信者はカス」とか、軟弱な話題にばかりうつつを抜かす始末。このような有様では、本当に都が攻め滅ぼされてしまいます!


黒子  はわ、はわわ


頼義  ですから、私は決心したのです、もはや何者も頼りにはならず、かくなっては私自らが刀を取っていざ悪鬼を討ちはたさん!と


黒子  ちょっとまってー!なんでそんな結論にたどりついた~!?


頼義  というわけでお願いです道長様、私に酒呑童子討伐のご命令をお下しくださいませ、あと兵隊も貸してください五千人ほど


黒子  無茶言うなー!


頼義  お願いします!


黒子  だ・めー!


頼義  お願いします!



  頼義、力強く道長を見つめる。なぜか好感度の上がったようなBGM



黒子  くは!その瞳、昔からその瞳に弱いんだよなあおじさん!もうベンツでもマンションでもなんでも買ってあげちゃう!


頼義  では・・・!


黒子  あいわかった!そなたの勤皇愛国の精神、この道長しかと心得た!さしあたってそなたを正四位下、左衛門少尉に任ずる。そのくらいの官位があれば一軍を率いるのにふさわしかろう


頼義  あ、ありがたき幸せに存じまする!


黒子  それと、中務(なかつかさ)省にある陰陽寮を訪ねるがよい


頼義  陰陽寮、ですか?


黒子  さよう、そこに監禁、もとい居ついておる「子四天王」をそなたの副官としてさずけよう


頼義  子四天王・・・どのようなお方たちなのですか


黒子  そなたも会えばわかる。いずれも劣らぬ武勇を誇る豪傑たちじゃ。・・・ある意味


頼義  そのようなお心遣いまで、頼義、心より感謝申し上げます!


黒子  うむ、うまく手なづけられるといいのう


頼義  は?


黒子  いやこっちの話。ささ、善は急げじゃ、さっそく行ってみるがよい、陰陽寮へはワシが使いを出しておこう


頼義  道長様、このご恩、頼義決して忘れませぬ、必ずや酒呑童子の首級をあげて戻ってまいります!では!(颯爽と去る)


黒子  ・・・つい勢いに任せて許可出しちゃったりしちゃったけど大丈夫かなあ。ま、いいか、失敗しても別にワシの責任じゃないもんね。おっといけない、もうこんな時間じゃないか。デートの時間に遅れちゃう。待っててね~紫式部ちゅわぁ~ん

 

                                   

暗転


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