第55話 ナースはどこに消えた!?
最初に動いたのはマーネルさんだった。
せせらぎの異能力である『最高キネシス』を発動させて、京子先生を攻撃しようとした。
しかし、手をかざそうとした時には既に京子先生の姿はなかった。
「ど……どこに消えた?」
ターゲットを見失った事で戸惑うマーネルさんだったが、Mr.Gだけが落ち着いていた。
「消えた訳じゃありません。あそこに居ます」
Mr.Gが指を指した方向を見たが、一瞬だけ残像を残してまた消えてしまった。
「あの女は、目で追えないほどのスピードで動いているだけです。さっきのマモル君のように消えた訳じゃない」
確かに京子先生はスピードだけは尋常じゃない。消えたように見えるのも無理ないだろう。
京子先生を警戒した3人は背中合わせで構えた。
「マーネルさん。丸尾さん。あの女の動きを追えますか?」
「……ノー」
「……いや」
マーネルさんと丸尾は首を横に降った。
「しょうがありませんね。いきなり私の出番ですか」
ヤバい! いきなりMr.Gが動き出すなんて!!
コイツだけは何かがヤバ過ぎる……
本能的に次元の違う怖さを持っているのが分かる!
「『イタイ芸人大集合』!!」
Mr.Gが異能力を発動した瞬間、京子先生の姿が現れた。高速移動をしながら消えたように見せていた京子先生だったが、突然動きが止まってしまった。
「な……何なの……これは?」
「どうかしましたかな、お嬢さん?」
ニヤついたMr.Gは、人を馬鹿にするように問いかけた。
「急に体に激痛が……」
激痛!?
京子先生は何もされていないのに、何で激痛が!?
そういえば以前に、猿正寺さんがMr.Gの異能力について語っていたような……
ーー「おい! そこの小僧!! ナースを呼べ、ナースを!!」
「またですか!?」
「さっきからナースコールしてるんだが、全然来てくれねーんだよ!」
「そりゃあんだけセクハラしてたら誰も来なくなりますよ!」
「ちょっとケツ触っただけじゃねーか」
「お尻を触るのに、ちょっともクソもありません!! それにそんだけ元気だったらナースさん必要ないでしょ!!」
ブルーハワイとの戦いで昨日まで瀕死に近い状態だったのに、何で猿正寺さんはこんなに元気なんだ……!?
どういう体の構造をしてるんだか……
「俺が元気なのは下半身だけなんだよ」
「そういうのいらないです」
僕と一緒か……と思いながらも病院のベッドに寝ている猿正寺さんは、本当に元気なんだか元気じゃないんだか良く分からない……
ブルーハワイとの戦いで緊迫した状況になっているのに、本当に勝手だなぁ……
「小僧! お前の名前何だ?」
「柳町です。柳町 新右衛門です」
「フルネームは聞いてねぇよ」
良いじゃん別にフルネーム言ったって……
あの黒い姉ちゃんは一緒じゃないんか?」
「フィレオフィッシュ牛尾さんと一緒に、隣の病室に居ますよ」
「何だよ。あいつの女なんか?」
「まぁ、ある意味そうですね」
猿正寺さんは何故か残念そうだった。
「それにしても弥生ちゃんは可愛いかったなぁ」
手当たり次第か、この人は!!
そりゃメチャクチャ可愛いかったですけど、彼女は今そんな状態じゃないでしょ!!
鳥谷 紫園さんが亡くなったばかりなんですよ!!
「柳町は黒いのと白いの、どっちが好みだ?」
「ぼ……僕は黒い方です」
「なるほどな。俺は断然、弥生ちゃんだけどな」
「聞いてないです」
「…………そういや柳町。お前はあの戦いの時、何してたんだ?」
「え~……僕は弱いので、あまり戦いには参加せず、浪花さんの介護をしてました」
「介護?」
「あのタイミングでお月様が来ちゃいまして(女の子の日)、全然動けなくなった浪花さんを守ってました」
「そうか。柳町にとっちゃあの女はボスだもんな。守らん訳にはいかねぇよな」
「そ……そうですね。僕にとっても大事な人ですから」
「そういうのいらねぇから」
やり返されてしまった……
一言余計だったか……
「それにしても、俺があそこまでやられたのは、犬ジジイ意外じゃ始めてかも知れねぇな」
「Mr.Gと戦ったんですよね?」
「あぁ。尊も一緒に居たんだが、2人共やられちまった。どういう発動条件か分からんが、手を触れずに直接痛点だけを攻撃してきやがった」
「痛点だけを!?」
「あぁ。人間が痛いと感じる感覚だけをコントロールされているような、変な感じだった」
「どういう事ですか?」
「おそらくだが、脳の一部に直接何かをしてるんじゃねーかと思ってるんだが……」
「脳をコントロールするって事ですか!?」
「完全にコントロールする訳じゃねぇと思うが、せせらぎ 面太郎の事を考えるとそういう事も出来る奴なのかも知れん」
確かに。
話に聞いていたせせらぎさんとはかなりイメージが違う所を見ると、洗脳されていると確信しても良いかも知れない。
それにしても痛点だけを攻撃するって、一体どうやって対処したらいいんだか……
「あのジジイの攻撃は厄介だな。流石の俺も為す術がなかった。腹が立つが、あれを発動されたら普通の奴じゃ対応出来んぞ」
「そうですよね」
「あの技を使われる前に殺るのがベストだろう」
普通に考えてもその手しかないのか……
ーーヤバい……既に発動されてしまった……
それもよりによって京子先生相手に……
「な……何もしていないのに、体中が痛いわ!?」
「きょ……京子先生!!」
Mr.Gの『イタイ芸人大集合』は、僕達には影響がなかった。
僕とマモル君の位置が特定されていないせいかも知れない。それに僕が発した声も、京子先生以外には聞こえていないようだった。
どちらにせよ、京子先生がピンチな事には変わりないが。
「動けなくなったお前など恐るるに足りん」
丸尾が京子先生に歩み寄ろうとした瞬間、何処からともなく聞き慣れた声が聞こえてきた。
「『一昨年の干支は?』!!」
その声を聞いた瞬間マーネルさんと丸尾の動きが止まり、その隙に一気に2人をブッ飛ばした!
そして一緒に現れたもう一人の男も、そのままMr.Gを殴り飛ばした!!
「猿正寺さん!! フィレオフィッシュ牛尾さん!!」
ヒーローの如く絶妙なタイミングで現れた2人は、動けない京子先生を庇うように間に立った。
「まだ生きていたんですか、あなた達」
「俺は往生際が悪い事で有名なんだ。尊をいたぶってくれた借りは返させてもらうぞ!」
「ワシ……いや、俺もブレイブハウンドの代表として面子を潰されたままじゃいられない。前回の借りはここで返させてもらう!」
Mr.Gは若干苛立ちの表情を見せていた。
「返り討ちにしてあげましょう」
猿正寺さんはマーネルさんに飛びかかり、牛尾さんはMr.Gに向かって行った!
「『イタイ芸人大集合』!!」
Mr.Gは猿正寺さんと牛尾さんに対してイタイ芸人大集合を発動させた。
痛点を攻撃される事で京子先生と同じ状態になると思っていたが、2人はそのまま攻撃を続けていた。
猿正寺さんはマーネルさんの攻撃を掻い潜り、打撃で圧倒している。それは『最高キネシス』を使う暇を与えないほど、素早い攻撃だった。
牛尾さんはMr.Gと互角の肉弾戦を繰り広げていた。Mr.Gの体捌きも凄いものがあったが、腕力で勝っている分と『イタイ芸人大集合』が効いていない動揺で、牛尾さんの方が少しだけ押しているようにも見えた。
「お前達! 調子に載るのもそこまでだ!!」
そう叫んだ丸尾は異能力で瞬間移動し、京子先生の後ろに周り込んだ!
そして頭上に構えたドスを京子先生の首筋に振り下ろす!!
「しまった!!」
動けない京子先生の足下には、目を覆いたくなるような真っ赤な鮮血が飛び散った……
いつも読んでいただきありがとうございます! あきらさんです!
物語が進むと話を展開させる為にギャグが少なめになってしまいますが、これはもう宿命みたいなもので避けては通れないんですよね……(T^T)
出来るだけギャグ多めで頑張りたいと思ってますので、今後とも宜しくお願いします!!




