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第50話 聖夜、必殺技ボタン連打!!

 鶴瀬はあまり本気で戦った事がない。そもそも戦い自体を好む性格ではない事もあるが、能力の性質上リスクが高い技が多いからだ。

 弥生もそうだが、テラフェズントでは優れた体術を駆使して戦うスタイルの人間が多い。ボスだった鳥谷 紫園が体術を好む為に、知らない内に組織に根付いてしまったようだ。ここまでの戦い方を見ても鶴瀬も同じく体術には自信があるようで、特に蹴り技をメインに攻撃を仕掛ける事が多い。


 鶴瀬は胸の傷を押さえながらトレーニングルームの扉を開けた。

 聖夜の周りを旋回しながら、倒れているモブ青スーツ達を投げ捨てるように部屋の外に出していく。


「俺の技は、場合によっては広範囲に影響が出るからな。関係のない奴らはとりあえずこの部屋から排除させてもらうぞ」


 その言葉を聞いた聖夜は、何故か一緒に手伝った。根っからの悪人だったら、ここでモブ青スーツ達を殺すだろう。

 鶴瀬は「ただ馬鹿なだけで、殺すには惜しい相手だ」と心の中で呟く。


 部屋の中には鶴瀬と聖夜の二人だけとなった。

 鶴瀬は身構え、何度か大きな深呼吸をする。少しずつ呼吸を早めた息づかいが、バイクのエンジン音のように加速する。

 そして一気にマギアオーラを全開にした鶴瀬は、殺し屋のような眼光で聖夜に飛び掛かる!

 正面ではなく、聖夜の2m隣の何もない空間に向かってパンチを繰り出した鶴瀬は、聖夜とは逆方向に勢い良く息を吐き出すと瞬間移動したように距離を詰めて顔面に一撃を与えた。

 反撃した聖夜のパンチも余裕でかわし、また息を吐き出した後に強烈な踵落としをお見舞いする。

 ヒットアンドアウェイのように、聖夜には捕らえられないスピードで一撃を加えた後、聖夜が反撃した瞬間には既に鶴瀬の姿はないというモハメド・アリのような戦いぶりだった。

 防戦一方だった聖夜も本気になったのか、マギアオーラを開放したまま今度は腕だけでなく全身が猫……いや、虎のように変身した。

 本気を出した聖夜と鶴瀬は、防御を気にするよりもどちらかというとノーガードの打ち合いに近い肉弾戦となる。

 一撃入れられたら一撃を入れ返すといったほぼ互角の攻防を繰り返していたが、少しずつ聖夜の方が優位に立ってきた。


金剛雷牙(こんごうらいが)!」

「金剛雷牙!」

「金剛雷牙!」


 どう見ても猫パンチにしか見えないその攻撃は、傍から見るとただ「金剛雷牙!」と言いたいだけにしか見えなかった。

 聖夜自身は必殺技として使っているであろうと思われるが、10回中8回の攻撃が金剛雷牙だと必殺技としての効力は全く無く、鶴瀬も心の中では「どんだけ気に入ってんねん!」と思っていた。俗に言う、素人が格闘ゲームで必殺技のボタンを連打するあれだ。

 しかしそんな馬鹿みたいな攻撃でもその破壊力は半端ではない。

 ドミニクの麻痺毒が効いてきている事もあり、少しずつ動きが鈍くなってきた鶴瀬。そしてもう、()()()()()攻撃をしていない、ただただ金剛雷牙に取り憑かれている聖夜。

 トレーニングルームは、それはもうそこらじゅうが爪痕だらけだった。


 2人共息を切らしていたが、まずは鶴瀬が片膝をついた。それを見ていた聖夜は勝利を確信したようだったが、苦笑いしているその表情はどこか苦しそうにも見えた。むしろ心から笑みを浮かべているのは、片膝をついている鶴瀬の方だった。


「ハァ……ハァ……俺の金剛雷牙をここまで見切った奴は、お前で3人目だ。一応……ハァ……誉めてやる……ハァ」

「俺も最終奥義まで出す必要がなくなった事には感謝するよ」

「ハァ……ハァ……どういう事だ……?」


 聖夜はふらつき、床に手をついた。意識が朦朧(もうろう)としている様子に見える聖夜は、立ち上がろうとした瞬間仰向けに倒れる。


「な……なんだ……!?……く……るし……い……ハァハァ」


 鶴瀬は大の字で倒れている聖夜に近寄って行き、頭の所で見下ろすように立っていた。


「俺の能力は『圧倒的な溜息(ハイパーサイ)』。勢い良く息を吐き出すだけで、攻撃中も瞬間的に移動する事が出来たりする。とにかく俺は肺活量が尋常じゃないんだ」

「ハァ……肺活量が……ハァ……尋常じゃないだと……?」

「そうだ。密室にしていたこの部屋の酸素を、お前を攻撃しながらほとんど頂いた」

「へ……部屋中の酸素だと!?……ハァ……そ……それで……ハァ……こんなに苦しいのか……ハァ……」

「……ど……毒のせいで俺の意識もどこまで持つか分からないが、お前よりは長く持ちそうだ……」


 聖夜はそのまま白目を剥き、泡を吹いていた。鶴瀬は聖夜が気絶したのを確認すると、安心して自分も倒れ込んだ。しかしその表情は、弥生の元に行けないという悔しそうな表情にも見え、ダイイングメッセージで「無念」と書いている。



 ◇ ◇ ◇



「侵入者が居るようだな」


 最上階で監視モニターを眺めるせせらぎは、弥生と尊の姿を確認していた。

 見通しの良いフロアーは非常に広く、スタジアムにある大型のVIPルームのようになっている。見ようによっては巨大な宇宙戦艦のコントロールルームのようにも見えるだろうか。


「そのようですね。こちらにも厄介な小娘が入って来てますね」


 隣でMr.Gがモニターに映る京子を指差していた。監視カメラの方に近づいて来た京子は、カメラのレンズにマジックでヒゲを描き、そのヒゲに自分の顔を当てはめて遊んでいた。

 その様子を見ていたMr.Gは苦笑いをしていたが、気を許した一瞬の隙に京子はカメラの映像から消えていた。せせらぎとMr.Gは周辺のモニターを全て確認していたが、京子の姿はどこにも映っていなかった。

 殺気を感じたせせらぎが後ろを振り返ると、そこには丸尾 マサカズが立っていた。


「下の方が騒がしかったんで見て来たんですが、面白いものを見つけました」

「面白いものですか?」


 不思議そうな表情のMr.Gを目の前に、丸尾はポケットの中から小さくなった柳町と播磨を机の上に出した。播磨は机から飛び降りると、自分だけ普通サイズに戻り、柳町だけが取り残される。

 4人に囲まれた柳町は萎縮してどこかに隠れようとしていたが、机の上に隠れる所は無く、ただただ申し訳無さそうにしていた。


「確かにこれは面白いですね」


 Mr.Gはミニ柳町を掴み、不適な笑みを浮かべながらモニターに映る弥生達を見ていた。


「あいつらは俺が()ろう」


 一緒に弥生達を見ていたせせらぎは、自分が相手をすると言って颯爽(さっそう)と部屋から出て行った。


「私達はここで高みの見物でもしてましょうかね」


 Mr.Gはモニターの前に座り、弥生達の姿をズームアップしながらコーヒーを片手に(くつろ)いでいた。

 丸尾も後ろの方で腕を組み、一緒にモニターを眺めている。

 播磨はミニ柳町を監視するかのように、机の上でデコピンで弾き飛ばして遊んでいた。


「やめろ~!!」


 ヘリウムガスで喋っているようなミニ柳町の声だけが、虚しく部屋中に響き渡っていた……

最後まで読んでいただきありがとうございます!あきらさんです!

最低、月2話の投稿を目指していますが、気持ち的にはやっぱり3話くらいは投稿したいです。

最近は挿し絵なども描いているので、皆さんにイメージを伝えやすくなっていると思いますが、全体的にもっとクオリティーを上げられるように頑張ります!

今後とも宜しくお願いします!!

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