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第48話 『はじめの一歩』40巻!?

  ◇ ◇ ◇


 弥生達3人は尊を先頭に中心部まで進んで来た。中心部には広い空間があり、大きな建物が(そび)え立っている。素人目に見てもここがアジトの本部だという事は容易に想像出来た。建物の前に座って漫画を読んでいた見張り役は尊が1人で一蹴し、3人は中に入ろうと様子を伺う。


「ここからが本番だ。悔しいが俺達は1度やられているからな。相手を格上だと思って最初から全力で行くくらいの気持ちで行こう。向こうも自分達がピンチになったらどんな手を使ってくるか分からないから、絶対に油断するんじゃないぞ」


 (たける)の言葉に(うなず)いた2人は、より一層警戒心を強めた。目に付いた監視カメラを先に壊し、音を立てないように中に侵入する。アジトの中は会社のオフィスのようになっていて、通路と複数の部屋が複雑に入り組んでいる。侵入者を想定して作ってあるせいか、天守閣に辿り着くのは簡単では無さそうだった。

 曲がり角や部屋の前を慎重に進んで行きながら、モブ青スーツが居れば3人で協力して瞬殺する。極力大事(おおごと)にならないようにして、1人1人確実にブルーハワイの戦力を削っていった。

 ここに来て3人のコンビネーションも冴え渡る。尊はその嗅覚を使って部屋の中に居る人数を把握すると、ジェスチャーで2人に伝えてそのまま先制攻撃で突っ込む。尊に気付いて襲いかかる相手を弥生が()なし、仲間に連絡しようとしている奴は鶴瀬がトドメを刺す。相談して役割を決めた訳ではないが、戦闘経験の多さからいつの間にか阿吽(あうん)の呼吸が出来ている。同じテラフェズントの弥生と鶴瀬は良いとしても、イボルブモンキーの尊とも上手く連携が取れている事には3人も少し驚いていた。

 アジトの入口に居た見張りも含めると、ここまで100人くらいは相手にしただろうか。弱いとは言え、人数の多さから少しずつ体力を奪われている事は確実だった。しかし1人に負担がかからないように意識しながら戦っている分、皆の疲労度はほぼ同じのようだ。


 3人が大方の敵を倒した後そのまま奥の方まで歩いて行くと、突然階段が見えてきた。そこには2階に上がれる階段と地下への階段がある。


「どうする天影?」

「一度ナニナニ達に連絡しましょう。お互いに別々の方に進んだ方が効率が良いですから」

「そうですね。僕もその方が良いと思います」


 弥生は通信機で京子に連絡をした。


「ナニナニ、そっちの状況はどう?」

「あぁ弥生? 私は今『はじめの一歩』を40巻まで読んだ所よ。まだまだ先は長いわね」

「そんな事は聞いてないわ。もうアジトの中に入って来ているんでしょう? 今どの辺りなの?」

「中には進んで来たんだけど、途中で柳町君がはぐれちゃってお互いに徘徊中よ」

「徘徊中!? それはまずくないですか!?」


 皆の表情はかなり驚いていた。それも京子の心臓に対してだ。


「ナニナニ、朝比奈さんは?」

「女よ」

「このタイミングで性別なんて聞いてないわ!」

「薫ちゃんはいろいろあって、アジトに入る前に野暮用(やぼよう)で帰らせたの」

「か……帰らせた……!?」


 尊も京子の返しに驚いていた。


「性欲盛んな女の子にもいろいろと事情があるのよ。ねぇ弥生」

「その言葉には賛同できないわ。じゃあナニナニは今1人って事?」

「まぁそうね。高速で動けば何人にも見えなくはないけど、今は1人ね」

「ナニナニ、もう少し真面目にやってもらえませんか?」

「そうだ。もう少しで奴らと対峙してもおかしくない状況なんだ。あまり馬鹿な事はやってられないぞ」

「モンチッチの格好で良く言うわね。でもこう見えて私も結構必死なのよ」

「そうは思えないが……」

「うるさいわね細目! (まぶた)に落書きするわよ!」

「ぐっ……」

「まぁこれだけ探して居ないって事は、柳町君……いや、柳町ハニーピンクは奴らに捕まったって考えた方が自然かも知れないわ」


 3人は京子の言葉に固唾(かたず)を呑みこんだ。せっかく奇襲をかけてバレないように乗り込み、徐々に戦力を削ってこっちが優勢に事を進めていたのに一気に状況が悪化してしまったからだ。


「それよりあんた達の方はどうなのよ!」

「こっちは中心部近くまで来てるわ。今、目の前に階段があるんだけど、上に行こうか下に行こうか迷ってるの。相談しようと思ってナニナニに連絡したのよ」

「そんなの上に決まってるでしょ。馬鹿は高い所が好きなんだから、あんた達も上に行きなさい」

「……わかったわ。何か気に入らないけど私達は上に行くわ。一応マーキングしておくから、ナニナニもこの辺りまで来たら連絡頂戴」

「OK! お勤めご苦労!」


 3人は何か納得がいかないモヤモヤした気持ちのまま通信を切った。

 弥生の描いたマーキングの絵が何だか分からずに首を(かし)げる2人だったが、弥生は構わず上への階段を登って行った。


 3人が足取りを重くしながら上への階段を上がって行くと、5階くらいまで登って来た所でまた1階と同じようなフロアーに出た。ここが2階というにはあまりにも長い階段だったが、階段はまだ上まで続いている。3人は階段の影に隠れて、このフロアーを探すか上に上がるか相談をし始めた。


「俺の予想だとMr.G達は最上階に居るじゃないかと思うんだが」

「私もそう思います。要さんは?」

「僕も同意見ですね。エレベーターも無い所を見ると、奴らだけは何らかの方法で上と下を行き来しているんだと思います。さっきの話だと柳町君も捕らえられている可能性はかなり高いと思いますね。上には行きたいですがこのフロアーを素通りする訳にもいかないので、誰か1人がこのフロアーを探索して残りの2人は上へ向かうのがベストかと思いますが」


 弥生と尊も鶴瀬の意見に賛成だった。


「戦力的には、恐らくこの中で一番強いのが天影だろう。そして俺は1度奴らと戦っている。鶴瀬君は天影の側に居たいだろうが、ここは俺と天影が上に向かい、鶴瀬君がこのフロアーを探索する方が良いと思うんだが」

「そうですね。何かあれば通信機がありますし、ピンチになればすぐに応援に駆けつけます。このフロアーに柳町さんが居ないと分かれば、すぐに上がってもらっても構いませんし、要さんにはこのフロアーをお願いしたいです」

「……わかりました。弥生さんも無茶だけはしないようにお願いします」

「わかりました」

「尊さんも弥生さんを頼みましたよ」

「了解。奴らの好き勝手にはさせないよ。正直、奴らのアジトがここまで大きくて戦力が分散されるとは思わなかったけどな」


 尊は苦笑いをしながら弥生と一緒に上へ向かった。


 鶴瀬は2人を見送ると、1つ1つの部屋を慎重に詮索し始めた。慎重と言えどもその動きは手慣れた空き巣のように素早い。中の人数を確認して1人だったら秒殺。複数だったら一度部屋を離れるか、1人になるのを待ってから倒していく。倒したモブ青スーツ達は倉庫のような場所に1箇所にまとめ、仲間達に見つからないようにする事も忘れていない。

 そして鶴瀬がある別室を訪れるとそこには、一際オーラの強い奴が居た。そこはトレーニングルームのような場所で、大きさ的にはダンススタジオくらいある。その男はかなりの筋肉質で、正統派な格闘家というイメージだろうか。見た目だけで明らかに肉弾戦を得意としている事が分かるほど。そして床には既に数人のモブ青スーツ達が倒れていた。

 そいつは額に軽く汗をかき、裸の上半身からは湯気が出ている。空手の型のように構えたそいつは、3人のモブ青スーツ相手に組み手のトレーニングをしているようだった。

 鶴瀬はその様子をバレないように覗き見て、そいつの動きを観察していた。

 どうやらそいつはハンデを付けているのか、足には見るからに重そうな鉄のブーツを履いていた。


「お前達にはこの程度のハンデじゃ足りないか? 俺はもうここから動かないし、これからは右腕しか使わん。そこの壁に掛かっている武器も自由に使って良いぞ。さぁ! 俺に1撃でも入れられた奴には、死ぬほど良い女を紹介してやる!」


 その言葉を聞いたモブ達3人は迷わず武器を手に取った。1人は金棒、1人は鎖鎌(くさりがま)、1番モテなさそうな最後の1人は真剣を手に取り上着を脱いだ。


「ほぅ……良い武器を選んだじゃねぇか。手加減をする必要は無いから俺を殺す気で来い!!」


 モブ達3人は顔を見合わせて(うなず)いた。トライアングルのようにゆっくりとそいつを囲み、各々は武器を身構える。


聖夜(せいや)様、約束は必ず守ってもらいますからね!!」


 その声と共に、モブ達は3人は同時に飛び掛かった!!

最後まで読んでいただきありがとうございます!あきらさんです!!

皆さん、楽しんでいただけているでしょうか!

どれだけの読者さんが次話の投稿を待っているのか分かりませんが、出来る限り早めに投稿していきたいと思っていますので、今後とも宜しくお願い致します!!

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