第47話 どっちにしろムスカ
ブルーハワイのアジトに侵入したラッキーカラーノイローゼの弥生と鶴瀬と尊は、その中心部に徐々に近づいていた。
そしてアジトにある反対側の入口からは、京子と柳町が中心部の方に向かっていた……
◇ ◇ ◇
「ランララ、ランララ、ランランラン♪ ランララ、ランララ、ランランラン~♪」
京子先生は鼻歌を歌いながら、踊るようにモブ青スーツ達を倒していた。もう、ふざけた強さの京子先生にはモブ程度では話にならない。
薄暗い洞窟のようなこのアジトに入ってから100mくらいは進んだと思うが、正直いつMr.G達に出会うか分からずドキドキしているのは僕だけのようだった。
「柳町ハニーピンク! ちゃんとやってんの!?」
「は……はい! やってます!!」
僕は京子先生の命令で、倒したモブ青スーツ達の鼻の下の溝にマジックで縦線を書くように言われていた。もう歯向かって来ないようにする為らしいが、この落書きは本当に意味があるんだろうか……
一応小声で「京子先生の命令でやっている」という事だけ、耳元で囁くようにはしているが……
「柳町君、見て! 宝箱よ!!」
「宝箱ですか!? 何でこんな所に!?」
ドラクエか!!と、つっこみたくなるほど立派な宝箱がそこにはあった。微妙にカタカタ動いているその宝箱は、人が1人入れそうなサイズでもある。宝箱の後ろからは導線みたいな物も出ているし、怪しい事この上ない……
「ちょっと面白そうだから開けてみてよ!」
「いや、面白そうとかじゃなくて、これ絶対罠でしょ!! 誰か入ってますよ!! こんな所に宝箱置く意味ないもん!! 線出てるし!! 宝箱から線出てるし!! 僕、開けるの嫌です!! 絶対嫌ですからね!!」
「開けたら、おっぱい触らせてあげる」
「京子先生!! 開けますから下がっていてください!!」
僕はすぐに魂を売った。
京子先生のおっぱい以上に大事な物が、果たしてこの世にいくつあるだろうか。
僕は自分の命を天秤にかけるまでもなく、迷わず宝箱を開けようとした。……が、気になる導線の先に目線を流したらスイッチを押す準備をしている奴が居た。
「な……何か居ます!! 京子先生!!」
僕が指を指したそいつに向かって、もの凄い所から京子先生が飛び膝蹴りで飛んで来た!!
そいつの顔面は膝がめり込んだまま陥没し、壁に頭を打ち付けていた。勿論、既に意識はない。
そしてニヤけた表情の京子先生は、そいつの手元からスイッチを取って迷わず押した。
カチッ!
その瞬間、ピッカーーーーッ!!!
「ギャァーーー!!!」
突然開いた宝箱から、もの凄い閃光が放たれた!!
「目がーーー!! 目がーーー!!」
ムスカばりに目をやられた僕は周りが何も見えず、転げながら苦しみもがいた。背中の方で笑い転げている京子先生の気配を感じていたが、そんな事を気にしている余裕はなかった。彼女は本当に迷いが無さ過ぎる……
そんなこんなをしている内に、徐々に視覚が戻ってきた。ぼんやりと周りが見え始めたと思ったら、目の前には宝箱の中に立っている男がいた。
『目をやられて苦しんでいる男の挿し絵』
「お前もかい!! お前達が仕掛けたんじゃないんかい!!」
反射的につっこんでしまったが、この状況が良く飲み込めなかった。
「あら、そこに勇者の剣があるじゃない」
「下ネタですか!? 今、そう言うのいらないですから!! それよりおっぱい……」
その瞬間、僕とその男は京子先生に頭を掴まれてゴッチンコされた。2人で踞りながら苦しんでいると、京子先生はそのまま宝箱の蓋を閉めて鍵をかけた。
「多分この男は、宝箱の中の光がもの凄かったから、外に出た瞬間に暗闇で目をやられたんじゃないかしら」
解説する所が違うとつっこみたかったが、僕はどっちにしろムスカだと思っていた。
おでこの痛みが引いてきてようやく普通に戻ったと思ったら、京子先生はもう一度宝箱を開け、その男の鼻の下にマジックで線を書いた後また鍵を閉めた。
「今のいります!? どうせだったらこの男に、この先を案内させたりした方が良いと思うんですけど!?」
「良いのよぶらり旅なんだから」
「どこがぶらり旅なんですか!! そんな状況じゃないでしょ!!」
僕の強めのつっこみに少しショボンとして反省した様子の京子先生は、スイッチを押そうとしていたもう1人の男の鼻の下にも線を書き、同じ宝箱に無理矢理そいつを入れて、宝箱を逆さまにしてから先を急いだ。
僕も京子先生が見えなくなる前に後をつけて行こうとしたが、その瞬間僕は突然後ろから誰かに口を塞がれてしまった!
こ……声が出せない!!
身動きも出来ないでいる僕の首には刃物が突き付けられていた!
背筋が氷つき、気絶しそうなほどの恐怖に助けを呼ぶ事も出来なかった。
額から滴る汗の中、血の気が引いていくのが分かり、自分でも顔が真っ青になっているのが自覚出来るほどだった。遠目でギリギリ見えていた京子先生の姿も見えなくなり、僕は完全に孤立してしまった……
「どこかで見た顔だと思ったら、あの時の会合に居た奴か? こんな所まで何しに来やがった? 見張りの奴らはどうしたんだ?」
その男は犬飼さん(牛尾さん)と戦っていたドス使いの男だった。確か青の四獣と名乗っていた奴らの1人で、犬飼さんを瀕死に追い込んだ奴だ。
名前は丸尾 マサカズって言ってたような……
「これから口を塞いでいる手を外すが、大声を出したら殺す」
僕は黙って頷いた。
やっと喋れる状態にはなったが、恐怖感で腰が抜けそうになった。壁を背にしてヘタり込んでしまった僕の顔の前に、その男はドスを突き付けながら質問をしてきた。
「この辺りに居た見張りの奴らはどうしたんだ?」
「全て倒しました」
「お前がか?」
「いえ。きょ……京子先生が……」
「京子先生? 何者だそいつは?」
「浪花のブラックダイヤモンドです」
「何言ってんだてめぇ。ふざけてんのか!?」
「ふざけてません! 馬鹿なだけです!」
「…………」
そいつは、堂々とした僕の発言に少し戸惑っていた。
「わ……分かった。嘘じゃなさそうだな……。まぁ良い。お前は面白そうだから、とりあえず俺が持って帰るか。人質としては価値がありそうだしな」
「み……土産物にしては重いと思いますよ……」
「関係ない。おい! 居るんだろ播磨?」
その男は誰も居ない空間に向かって呼び掛けていた。
「人使いが荒いですな~ダンナ」
足下の方から小さな声が聞こえた。良く見るとそこに居たのはネズミサイズくらいの小さな小人だった!
僕達の目の前に現れたそいつは突然大きくなり、みるみる内に通常の人間サイズになった!
「こいつ、殺んないんですかい?」
「Gさんへの手土産だ。まだ他にも居るらしいから、ちょっとした遊びには丁度良いから持って帰る事にする」
「分かりやした」
播磨と呼ばれたその男はどう見ても子分肌で、丸尾の付き人のようにも見えた。播磨は右手で僕に触れると手にオーラを凝縮させた。その瞬間、スーパーマリオのごとく僕の体が急に小さくなってしまった!
「な、な、何だこれは!?」
周りの物が全て大きく見える!
瞬く間に僕の身長が10㎝くらいになってしまった!
播磨と呼ばれた男も一緒に小さくなり、僕達2人は丸尾のポケットの中に入れられてしまった。
「とりあえず本部に帰るか」
丸尾がそう言った瞬間、僕の体はテレポートしたような感覚に陥っていた。
ポケットの中はさすがに真っ暗で何も見えなかったが、さっき居た場所とは明らかに違う場所に居る事だけはすぐに分かった。
勿論、嫌な予感と共に……
最後まで読んでいただきありがとうございます!あきらさんです!!
皆さんが楽しんで読んでいる姿を想像しながら、自分も楽しんで書いてます!!
出来るだけ間を空けずに投稿していきたいと思っていますので、これからも宜しくお願いします!!




