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第44話 君の名は転校生!?

 腕を組んだまま渋い表情の朝比奈さんは、目の前にいる身動きのとれない男女を見つめている。

 京子先生の発言といい朝比奈さんの態度といい、正直僕には何が起こっているのか分からなかった。

 朝比奈さんを見る限りこの時点で自分の敗北を認めた感はあるが一体どういう事なのだろう……


「一応念の為に、弥生達への通信は切ってあるわ。薫ちゃん。この状況を説明してもらえるかしら?」


 僕と朝比奈さんも一度通信を切った。そして京子先生は、少しでも変な動きをしたら殺すというオーラを出しながら朝比奈さんに問い掛けた。

 色違いのスピードスケーターみたいな格好をしている僕達が、股間を抑えながら気絶している男とその背中に縛り付けられている女を目の前に話をしている。この状況って、(はた)から見たら一体どう思うんだろう……


「私達の存在はバレた時点で負けね。この状況じゃ勝てる気しないから、悔しいけど白状するわ」


 朝比奈さんは俯きながら白旗を上げた。


「私の名前はブルーハワイの綾辻(あやつじ) 蓮花(れんげ)。異能力は『階段から落ちるやつ(君の名は転校生)』。ある条件をクリアすると、他人の精神と体が入れ替わる事が出来る能力よ。私達を潰そうとしている奴らの中で、一番入れ替わりやすそうな彼女の精神と入れ替えさせてもらったわ」

「精神を入れ替える!?」


 漫画なんかで良く見る、中身だけ入れ替わるやつ!? 能力名もどうかと思うけど!!


「そう。だから本当の朝比奈の精神は、この縛られている私の中にいるわ」


 京子先生は縛られている女性の猿轡(さるぐつわ)を外した。


「はじめまちて! 私が本当の薫ちゃんでち!」


 あ……朝比奈さんってこんなキャラだったんだ……入れ替わっているとはいえ、どことなくロリキャラだけど…………っていうか、ここまで違ったら尊さんも気付くでしょ!!


「早く元に戻しなさいよ」

「すみません。戻したいのは山々なんですが……」

「何よ。何か問題でもあるの?」

「そ……それが……」


 綾辻さんは渋い表情をしていた。


「実は入れ替わる時も元に戻る時も、この能力を発動する時にはある事をしないといけないのよ」

「ある事って?」

「……本当はあまり言いたくないんだけど……。実はこの能力は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のよ」

「それって……」

「別にいやらしい事はしないわ。とにかくこの能力を解くには、もう一晩一緒に寝るしかないの」


 朝比奈さんもどういう流れで綾辻さんと一緒に寝る事になったんだろう……

 不思議すぎるが、何かつっこんじゃいけない感じがしたので僕はつっこむのを()めた。


「何で薫ちゃんは綾ちゃんと一緒に寝たの?」

「聞く~!? 京子先生、それ聞いちゃいます~!? 僕は敢えて聞くのを止めたんですけど!?」

「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥って言葉を知らないの?」

「その言葉使うの今じゃないと思います!!」

「お察しの通り、私は女の子しか愛せないんです。……でち」

「普通に喋れんじゃん!! っていうか言うのね!! 普通にカミングアウトすんのね!! 気を使って損したわ!!」

「柳町君と一緒ね」

「そうですね! 僕は男ですから女の子が好きですよ!」

「そういう意味じゃなくて、柳町君といると損をするって事よ」

「そこ~!? あんまり否定できないけど、そこですか!?」

「っていうか、柳町君の話なんてどうでも良いのよ!」


 あんたが話振ったんや!と言いたかったが、僕が痛い目を見そうだったので黙って口をつぐんだ。


「じゃあ興奮した時の柳町君の下半身みたいに、すぐには元に戻らないのね」

「その例えいる~!? 僕の下半身を例えに出す必要ないと思うんですけど!!」

「興奮しっぱなしって所は否定しないのね」

「………………」


 コメントしづらい返しをされてフリーズしてしまった僕は、何事もなかったかのように本物の朝比奈さんを縛っていた縄をほどき、その縄で気絶している男を縛り上げた。

 京子先生は「そういう趣味あるんだ……」という目つきで僕を見ていたが、ここはとりあえず無視した。

 どうやら朝比奈さんの話によると、女性同士の合コンに行った時に、その場で睡眠薬を飲まされたらしくその後に入れ替わってしまったらしい。

 イボルブモンキーの幹部がそんな合コンに行くのもどうかと思うが、そういう所に理解があるのが性欲盛んなイボルブモンキーならではなのかも知れない……

 綾辻さんの話だとこの能力には射程距離があるらしく、本体である体は入れ替わった体と一定の距離を保たなくてはいけないらしい。気絶していた男は本物の綾辻さんの体を射程圏内にキープする為に追いかけていたようだ。


「……って事は、能力を解除するには射程圏外に離れれば良いんじゃないの?」

「確かに京子先生の言う通りですね」

「………………ですね」


 綾辻さん……絶対自分の能力の使い方、把握してない……

 何かもっと効率の良いやり方あると思うんだけど、多分…………バカなのかも…………


「それより綾ちゃん!あんた、あのジジイ達の仲間なんでしょ!? 痛い事はしないからアジトまで案内しなさいよ!」

「それが……実は私達……ブルーハワイの中でもバカで有名で……」


 やっぱり!!


「つい先日ブルーハワイを追放されたばかりなんです」

「そうなの!?」

「だから少しでも組織の情報を持って帰って、せせらぎさんやGさんに認めてもらおうと思ってたんです。だから私達は組織とは関係なく単独で動いていたんで、今のアジトまでは知らないんですよ」

「そうなのね…………。じゃあ、綾ちゃん達頑張ったじゃない」

「えっ?」


 突然京子先生に優しい言葉をかけられた綾辻さんは、少し涙ぐんでいた。


「今だったら薫ちゃんと綾ちゃんが全然違うの分かるけど、最初は正直分からなかったわ。バレないように睡眠薬盛るのだって、薫ちゃん相手じゃそう簡単な事じゃないでしょ」


 確かに。

 言われて見れば見えない努力がうかがえる!

 さすが京子先生! 見ている所が違う! バカでもバカなりに頑張っている所をちゃんと分かっている!


「でも綾ちゃん。あなた達はついて行く人間を間違っているわ」

「そうですよ! あんなろくでもないやつらの元にいちゃ駄目ですよ!」

「ブルーハワイに借りがある訳じゃないけど……でも……私達には他に行く所なんて何処にも無いんです!」


涙ながらの訴えに腕組みをしながら考えた京子先生は明るく答えた。


「分かったわ。じゃあ、あなた達は私達の所で面倒をみる!」

「きょ……京子先生!?」

「私、頭の悪いブルーハワイのジジイみたいなのは嫌いだけど、素直なバカは嫌いじゃないのよ。こういう子達は不器用なだけ。ただ生き方が分からないだけなの」


 そういえば昔、京子先生に何でB級能力者相談所(サテライトキングダム)を始めたのか聞いた時、同じような事を言っていた気がする。

 あまりにも人と違う個性を持ってしまったが故に、生き方に苦労している人達を助けたいって。

 ……で、金儲けをしたいって。


「ブレイブハウンド内に衣食住が揃っているトレーニング施設があるから、当分はそこで生活をしなさい」


 びっくりした~……てっきりB級能力者相談所(サテライトキングダム)で面倒をみるのかと思った~……

 あわよくば、僕に全部押し付けてきそうな感じすらしたし……


「話は私がつけておくわ」


 京子先生はそう言うと、一ノ条さんに連絡して事情を説明していた。

 どうやら朝比奈さんには、綾辻さんと気絶男の面倒を見てもらう為に今回の戦いからはここで離脱してもらうようだ。

 そして京子先生は車のトランクからキックボードを出し、気絶男を縛っていた縄をほどいて自分の腰とキックボードを縄で結びつけた。

 僕達が乗って来た車は朝比奈さん達に渡し、僕達はこのままアジトに向かうらしい。


「私、走るから。薫ちゃん達は車で帰って良いわよ」

「ぼ……僕はもしかして……」

「私が走って引っ張るから、そのキックボードにしっかり掴まって乗ってなさい!」

「は、はい!」


 朝比奈さん達の車を見送った後、僕達は2人でアジトに向かった。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

あきらさんです!

月2回の隔週投稿を目指して頑張りますので、今後とも宜しくお願いします!!

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