第43話 鼻くそをほじくるガンマンは名探偵!?
ブルーハワイのアジトに向かう途中のラッキーカラーノイローゼ。
京子はジョニーからの情報を得て、何やら作戦を練り直すようだった……
僕達3人は車を降りた。
道幅は広く、車を停めても問題なさそうな場所だったがどう見ても一本道だった。
道路の両サイドは大きな木々が生い茂っていて、周りには木以外のものはほとんど目に入らない。
道路の左側は少し山のような傾斜になっていて、雨が降ったらトトロでも出てきそうな雰囲気すらあった。
「集合!!」
京子先生の声に反応した弥生さん達は、僕達の後ろに停めていた車から一斉に降りてきた。そして京子先生の周りに集まって話を聞く準備をしている。
ブラック京子 (ブレイブハウンド)
ホワイト弥生 (テラフェズント)
イエロー薫 (イボルブモンキー)
ずんだ要 (テラフェズント)
モンチ尊 (イボルブモンキー)
そしてピンクの柳町(変態)……僕だ。
良く考えるとリーダー的なレッドがいない。
まぁ、色合いの事は良いとしても何の話だろう……?
「今、ちょっとした情報が入ったわ」
「さっきの電話ですか、京子先生?」
「ええ。ここの情報をくれた2こぶラクダの末裔みたいな奴からさっき連絡があったんだけど、どうやらブルーハワイの奴らは午後から何処かに向かうみたい」
「2こぶラクダの末裔~!? どこが!? 肩!?胸!? 背中!?」
「変な所に食い付かないでよハニーピンク」
「何かピンクのランク上がってますけど!! キューティーな匂いのするアレじゃないですよね!? 既に変身してるから大丈夫だと思いますけど、変身する時に全裸になるやつじゃないですよね!?」
「変身する時じゃなくて戦う時よ」
「もっとダメ!!」
「大丈夫よ。もの凄いスピードで動いていたら、相手に見えないから」
「それ出来るの京子先生だけですから!!」
「柳町君と柊さん……申し訳ないが話を先に進めたいんだが……」
真面目な鶴瀬さんは何とか話を戻そうとしていた。
時刻はもうすぐ10時半になる所だ。
「1時頃にはアジトから出るみたいだから、急ごうとは思うんだけど……」
京子先生は話の途中で急に腕を組みながら考え込んだ。
「……だけど、何ですか?」
「ちょっと私に考えがあるから、ここからは二手に別れて行動します」
不思議な空気の中、京子先生の指示で僕と朝比奈さんと京子先生は後ろの車で、弥生さんと鶴瀬さんと尊さんが前の車で行くという事になった。
本当に何か考えがあるのだろうか……
「弥生。あれ出してよ」
僕達が車に乗り込む前に京子先生が弥生さんに声を掛けた。
すると弥生さんはスケッチブックに何かを書き始め、書き上がって具現化した物を京子先生に手渡した。
「はい!」
「誰がアイスコーヒー出せって言ったのよ!!」
「コーラよ!」
「蓋の所がペコンってなってないから分からないじゃない!!」
「マックのやつね!! 蓋がペコンっていうのはマックのやつね!!」
僕は何のつっこみをさせられているのか分からなかったが、いつも通り必死だった。
「そうじゃなくて、耳に取り付けるだけの通信機よ。みんなが離れても連絡がとれるように人数分ちょうだい」
弥生さんは面倒くさそうに書き、僕達6人はもらった通信機を耳に取り付け、各々車に乗り込んだ。
どうやら京子先生は、弥生さん達を先に行かせて挟み撃ちしようとしているのだろうか。
京子先生は鶴瀬さんに目的地の指示をし、僕達の車は敢えてゆっくりと徐行しながら進んでいた。
運転している朝比奈さんは、ルームミラーで京子先生をチラチラ確認しながら進んでいる。
「薫ちゃん。あなたは彼氏いないの?」
「ちょっと京子先生! こんな時に何を聞いてるんですか!?」
「だって気になるじゃない」
朝比奈さんは少し嫌そうな顔をしながら黙っていた。
「薫ちゃんくらい美人だったら、恋人の1人や2人居るでしょ?」
「2人はまずいと思いますけど……。朝比奈さん、別に言わなくて良いですからね。言わなくて」
なんか言わなくて良いと言った僕の言葉が、逆に煽ってしまっているようになってしまった……
まぁ、本当の事言うと僕も知りたいですけど……
「彼氏はいません」
「あら、そうなの」
僕も意外だと思った。
気付くと弥生さん達の乗っていた前の車は見えなくなっていた。
「じゃ、妹さんは彼氏居るの? いや……お姉さんかしら?」
「どういう事かしら? 私は姉も妹も居ませんけど」
僕も朝比奈さんに姉妹がいるなんて話は聞いてないな……
「じゃ、どっちが本物なの?」
「柊さん。言っている事が良く分からないんですが……」
その瞬間、車内の空気がピリッとした。
後部座席で僕の膝枕に寛いでいる京子先生は僕の鼻に僕の指を突っ込み、ほじった鼻クソをそのまま僕の顔に擦り付けながら話を続ける。
「だって薫ちゃん。鳥谷紫園さんとかが居た一番最初の会合の時の人と違うわよね?」
「!?」
「もしかして双子なの?」
朝比奈さんはゆっくりと車を停めた。
当たり前のように話す京子先生の言葉を聞いて明らかに顔色が変わった朝比奈さんは、ルームミラー越しに僕達を睨み付けた。
「車を降りますか、柊さん?」
「その方が良いと思うわ」
状況が飲み込めなかった僕も一緒に車から降りて、京子先生と朝比奈さんは道路の真ん中で対峙していた。
枯れ葉が風で流されている。
緊迫した空気の中で向き合っている2人を見ると、西部劇で良く見る荒野で対峙しているガンマンのようにも見えた。
「き……京子先生、これは一体……」
「私が思うに、今ここに居る薫ちゃんは以前会った時の人と何かが違う気がするよのね」
「…………に……偽物って事ですか?」
「何か単純に偽物って感じでもないのよ」
「ど……どういう事ですか?」
「それを薫ちゃんから聞きたいんだけどね」
朝比奈さんは苦笑いをしながら、ため息混じりで話出した。
「恐れ入ったわ。まさかこんな早くにバレるなんて。いつから気付いてたの?」
京子先生は古畑任三郎ばりにウロウロしながら、おでこに手をあてて喋り出した。
「ん~……最初に違和感を感じたのは、チーム名を考える所です」
「そんな所で?」
朝比奈さんは少し驚いた表情をしていた。
話の内容より、このシリアスになりそうな場面でコミカルに答えた京子先生に驚いているようにも見えたが……
「弥生はともかくとして、私が考えたラッキーカラーノイローゼという名前をすんなり受け入れた事にまず違和感を感じました〜。そして〜コスチュームに関しても、あっさり受け入れ過ぎた」
「意味はともかくとして、名前は素直に良いと思ったわ。コスチュームにしても尊さんを含めたみんなが着ているのに、私だけ着ない訳にはいかないでしょ?」
確かに。
古畑任三郎のモノマネのクオリティーはともかくとして、以前の朝比奈さんを詳しく知らないから何とも言えないが、僕は別にそこまで朝比奈さんに違和感は感じなかったな……
側に居た尊さんですら何とも思っていなかったようだし……
「上手く説明出来ないけど何か変なのよ。ラモスの日本語みたいに、意味は伝わるんだけどネイティブじゃないようなあの感じに近いかしら」
本当に良く分からない……
カタコトだったらすぐ分かるけど、それに近い違和感って事か……?
何が違うんだろ……?
そして手応えがなかったにしても、モノマネ止めるの早すぎるだろ……
「ずっとおかしいと思っていたけど決定的だったのは、私達3人で車に乗ってからね」
「ど……どういう事ですか、京子先生!?」
車に乗ってからは、京子先生の方がずっとおかしいですけど!!
いや、乗る前からか!? 生まれた時からか!?
「柳町君は気付いてた? 私達、ずっと後をつけられているのよ」
「えっ!? つ……つけられてる!? ど……どこですか!?」
僕は後ろを振り返って道や周りの木々を探してみたが、何も見当たらなかった。
ただ朝比奈さんの表情だけは険しくなる一方だったが……
「凄いわね柊さん……。尾行もこんなにあっさりバレたのは初めてだわ。」
「普通の人は気付かないかも知れないけど、京子の目はごまかせないわよ。後ろに居る奴は2人。そしてその内の1人はあなたに似たオーラを感じるわ」
ど……どんな五感してるんだ……!?
感覚自体が生物の域を超えている気がする……
「柳町君。あなたのスマホを貸してちょうだい」
「は……はい……?」
何に使うんだろうと思いながらも、僕は京子先生にスマホを渡した。
その瞬間京子先生は、スマホをノーモーションで木々の中へ放り投げた!
尋常じゃないスピードで飛んでいった僕のスマホは、明らかに何かに直撃した音がした!
「ちょ……ちょっと!! 何してるんですか京子先生!! あれには大事なエロ動画がたくさん!! い……いや、大事なものがいろいろと入っていたのに!!」
「私の連絡先ならまた教えてあげるわよ」
「あ……ありがとうございます」
「高いけど」
やっぱり金か!!
最近少し大人しくなったと思っていたのに、まだ金を要求するか!!
「じゃ、スマホを回収に行きましょうか。もちろん薫ちゃんも一緒にね」
朝比奈さんの顔は少し青ざめているように見えた。
いろいろな事がバレてしまったのがあまりにも想定外だったようで、明らかに動揺を隠せずにいた。
足取りの重い朝比奈さんと一緒に僕達3人はスマホを投げた辺りに歩いて行くと、生い茂った木々の中に2人の人影が見えた。
さらに近いてみると、1人の男性の背中にもう1人の女性が身動きのとれないように縛り付けられていた。
二宮金次郎が薪を担いでいるような感じで背中合わせになっている。でもどちらかというと姥捨山に行くような感じの方が近いだろうか。
20代の男性は股間を押さえながら泡を吹いて気絶していて、縛られている女性の方は口も猿轡をされていて喋れないようだった。おそらく男性の方は京子先生の投げたスマホが股間に当たってしまったのだろう。
僕はとりあえず自分のスマホを探し出した。
壊れていないようだったのでまずは安心したが、朝比奈さんは葬式にでも来たような表情で一気に顔が曇っていた。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
あきらさんです!!
最近少し投稿が遅れ気味ですが、月に1~2本は書きたいと思っています。
年内に第一部の完結まで書きたいと思っていますので今後とも宜しくお願いします!!




